Top page of the Project MEIS at TUFS
 
中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
  1. ホーム
  2. 海外研究拠点
  3. 中東研究日本センター(JaCMES)
  4. 研究活動
  5. Middle Eastern and Islamic Studies in Japan: The State of the Art−報告
  6. "The Current Situation and Problems on the Advancement of Middle East-Based Islamic Financial Institutions into Malaysia"

"The Current Situation and Problems on the Advancement of Middle East-Based Islamic Financial Institutions into Malaysia"

Yasuhiro Fukushima
(Research Fellow, Institute for International Studies, J. F. Oberlin University)
福島 康博(桜美林大学国際学研究所非常勤研究員)

報告内容

 本報告の目的は、中東産油国資本によるイスラム金融機関のマレーシアへの進出状況とマレーシア国内でのその位置づけ、とりわけマレーシア政府が行っている実体経済に対する諸政策への関与の形態を明らかにすることにあった。

 マレーシア政府と中央銀行であるバンク・ヌガラ・マレーシア(Bank Negara Malaysia)は、2000年の『金融部門マスタープラン』(Financial Sector Masterplan)の策定とそれに伴う2005年のイスラム銀行業法(Islamic Banking Act)の改正以来、積極的にイスラム銀行業の資格を与えるようになっている。こうした新たな資格発給の目的は、イスラム金融産業・市場を拡大し活性化するところにある。これに応じて、ここ数年来のオイル・ブームによる潤沢な資金と、東南アジアへの投資と結びつきを求めて、3つの中東資本のイスラム金融機関がマレーシアに進出している。

 本報告の結論として私が指摘したのは、中東資本のイスラム金融機関は、イスカンダル・マレーシア(Iskandar Malaysia)、北部回廊経済地域(North Corridor Economic Region)、東部海岸経済地域(Eastern Coast Economic Region)といった地域経済振興政策や、長期滞在ビザ発給制度であるマレーシア・マイ・セカンド・ホーム・プログラム(Malaysia My Second Home Program)に基づいて中東から進出してきている企業や個人の資金経路としての役割を担おうとしている、という点である。しかしながらこうした現状に対し、外国企業への優遇策に対する国内企業からの不満や、国際政治との関連、あるいはシャリーア・コンプライアンス(Shari’ah Compliance)の解釈の相違を原因として、これらイスラム金融機関のマレーシアでの浸透が阻害される可能性がある、という点も同時に指摘した。

ディスカッションの概要

 私の結論に対し、コメンテーターであるAmerican University of Beirut, MBAプログラムのSalim Chahine准教授より多くの質問・コメントを頂戴したが、それらはいずれも本報告で扱った事例がマレーシアのイスラム金融市場全体に比して数・規模ともに小さく、また扱った各銀行の業務期間が短いため、上記のように結論付けることが妥当であるか、という点に集中していた。しかしながら同時に、少ない事例ながらもイスラム金融からみたマレーシアと中東との関係をこのような形でまとめたことに対して、肯定的な評価をして頂いた。他方、Imam Ouzai College of Islamic StudiesのToufic Houri理事長からは、私が報告中で使用した”Middle East”や”Shari’ah Compliance”の概念について、明確な定義づけを行うようにとのアドバイスを頂いた。さらに同理事長より、翌日同カレッジを表敬訪問した際にイスラム金融に関する資料を頂戴した。

会議参加の感想

 マレーシアのイスラム金融という、中東研究者やレバノン在住研究者にとってはなじみの薄い分野についての私の報告に対しても、関心を持っていただき大変感謝している。レバノンにおいてもイスラム金融が実践されており、その意味では身近な問題の一つとして認識いただけたかと思う。また、会議参加者の皆さんとの会話を通じて、「中東(研究者)が、東南アジアのOIC加盟国、マレーシアをどのように見ているのか」の一端を知ることができ、今後のマレーシア研究・イスラム金融研究で新たな視点を持つことができるようになったことは、私にとって大きな収穫であった。

back_to_Toppage
Copyright (C) 2005-2009 Tokyo University of Foreign Studies. All Rights Reserved.