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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"Palestinians from the ‘Seven Villages’:
Their Legal Status and Social Condition"

Aiko Nishikida
(Research Fellow. ILCAA. Tokyo University of Foreign Studies)
錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

報告内容の概要

 本報告は、レバノン南部の国境地帯に位置する「七つの村」について、その領有をめぐる歴史的変遷や、出身者が抱く帰属意識のあり方などを明らかにするものである。「七つの村」はオスマン帝国崩壊後、イギリスとフランスの間で委任統治の領域分割が問題になった場所に位置する。この地域は、フランスによって一度は「大レバノン」の一部に組み込まれたものの、1924年にはイギリス委任統治領パレスチナへ帰属変更された。住民たちはレバノン国籍を失い、新たにパレスチナで帰属を得ることとなった。しかし1948年にかけてイスラエル建国をめぐり戦闘が始まると、彼らの多くはレバノンへ逃れた。開戦時の常居地がパレスチナだったことから、彼らは「パレスチナ難民」とみなされ、レバノン国籍を認められなかった。その立場に変化が生じるのは、約50年後のことである。1994年にハリーリー政権下で、布告第5247号が出されると、彼ら「七つの村」出身者は特例措置としてレバノン国籍を付与されることになった。

 こうして再三にわたり法的地位が変動した人々について、発表者は2007年8月以降、数度にわたりレバノンで調査を行った。その内容は、「七つの村」および周辺地域の歴史に関する資料収集や、法令文書の確認、レバノン南部のスール市内や首都ベイルートでの聞き取り調査などである。これらを通して、レバノン在住の「パレスチナ人」の中でもとりわけ複雑な背景をもつ彼らが、レバノンとパレスチナの双方に対していかなる帰属意識を抱くのか、明らかにしていくことが、調査の目的である。本報告は、これまでの調査結果に基づく暫定的な成果発表と位置づけられる。発表者にとって本研究は、まだ新しい設定テーマであるため、研究の方向性や、調査結果の解釈を、調査対象地の研究者の先生方に確認いただくことを発表の狙いとした。

ディスカッションの概要

 コメンテーターをお願いしたジャーベル・スレイマーン氏には、事実関係の確認から問題の背景説明に至るまで、詳細かつ丁寧なご指摘と助言を頂いた。中でも「七つの村」に含まれる範囲が、実際にはシーア派を中心とする7村に限られず、周辺の多くの村を含むことなど、発表者が不安に感じていた調査結果に確認を頂けたことは励みとなった。またアッ=ラシード氏からは、変動する個人の帰属意識についての比較研究として、本研究の意義をご指摘いただき、また今後の調査の方向性についても貴重なご提案を頂いた。

会議参加の感想

 報告内容が、発表場所であるレバノンに関する問題であったせいか、コメンテーターの先生方には高い関心をもち、直接的な情報提供をして頂けたように思う。テーマ設定がマイナーなものであるだけに、こうした反応は日本国内では得難いものであり、海外で研究発表を行う意義を強く感じた。また国際会議での口頭発表も、回数をこなしてきたせいか、昨年よりは緊張せずに行うことができた。

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