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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"Parliamentary Opposition and Diplomacy on the Eve of Republic of Turkey: The Second Group's Attitude to the Lausanne Treaty (1923)"

Yoko Uno(Research Associate, Tsudajuku University)
宇野陽子(津田塾大学)

報告内容とコメントの概要

 報告会では、トルコ共和国建国前のアンカラ議会におけるローザンヌ講和条約(1923年)をめぐる論争について、解放戦争下の議会における民主主義の可能性という問題意識に基づいて報告を行った。

  とりわけ、1922年に成立した少数派の会派である「第二グループ」が、ローザンヌ講和会議の進展や連合国の講和案に対して展開した反対論の内容に注目した。「第二グループ」のローザンヌ講和条約に対する反対論は非常に強硬なため、最終的には講和条約の批准を危ぶんだムスタファ・ケマルらによって選挙を通じて議会から排除されるに至るが、「第二グループ」の態度が硬化する背景として「第二グループ」がケマルらの政治に抱いていた独裁化への危惧があることを指摘した。

  報告後のコメントでは、まず「第二グループ」は保守派の集団ではないか、との指摘をいただいた。これについては、「第二グループ」は従来、宗教的保守派の集団としてもっぱら言及されてきたが、本報告ではむしろ「第二グループ」が多様な議員を包含していた会派と考え、集団としてのイデオロギーよりも、議員一人ひとりの議会での発言から彼らの主張を探ることを重視した旨回答した。

  また、講和条約をめぐる議論でモースルの領有が重大な論争を招いた原因について、報告ではモースルが産油地であることを指摘した。これについては、採掘権はイギリスのみならず数カ国の共同権益となっており、イギリスの取り分はそれほど多くないため、モースルの領有権をめぐる争いにおいて石油の重要性は低いのでは、とのご教示をいただいた。このご指摘は、今後行う予定のイギリス公文書の調査を通じて検討していきたい。

会議参加の感想

 何よりもまず、会議を主催してくださった黒木先生に深く御礼申し上げます。情勢不穏の中、開催のご決断をなさるまでにはかなりのご苦労がおありだったのではとお察しします。また、コメンテーターの先生方、事務の大屋さん、その他会議開催に関わった全ての皆様に心から感謝いたします。

  参加にあたって、開催直前の情勢と、自分の準備や能力の不足からくる不安に襲われながらの出発だったことは否めません。しかし、参加者の皆様と励ましあい、刺激を受ける中で、徐々に得体の知れない不安からは解放されてきたように思います。本当にありがとうございました。とはいえ、不安からは解放されても、実力不足からは解放されていませんので、こちらは自分の努力でどうにかするほかありません。そのことを骨身にしみて思い知った旅でもありました。

  印象に残っているのは、報告会の前日に日本語による第4回JaCMES研究会で報告してくださった、レバノンで調査中の池田昭光氏(東京都立大学大学院)のご報告の際、地道な調査を研究のグランド・デザインにいかにひきつけて説明するかという問題(と、私は解釈しました)について議論が沸騰し、実に率直でユニークな意見が続出したことです。陳腐な言い方ですが、多様な研究分野間の風通しのよい交流の必要性を改めて感じた出来事でした。

  この件のみならず、同様の目から鱗が落ちるような出来事は1週間の中で数多く経験しました。このような機会を与えていただいたことに感謝しつつ、この経験を今後の研究活動に生かしていきたいと願っています。

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