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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"Ahmad Kuftaru, A Great 'Ulama' in Modern Syria: About Its Construction of Intellectual Authority"

Kenichiro Takao(Ph.D. Candidate, Doshisha University)
高尾賢一郎(同志社大学大学院神学研究科)

 発表は、現代シリアを代表するイスラーム学者であるアフマド・クフターロー(2004年没)が、生涯の活動を通してどのようにその知的権威を今日のシリアにおいて構築したのかを明らかにするものであった。クフターローはシリア・アラブ共和国の前グランド・ムフティーを務め、また特に国外の異教徒との宗教間対話に尽力した人物として知られている。しかしそれらの逸話は彼のダマスカスにおけるローカルな権威を構築する直接的な要素ではないように思われる。アフマド・クフターローはシャーフィイー法学者の祖父と、ナクシュバンディー・スーフィー教団のシャイフであった父を持ち、その父を継いでナクシュバンディー教団のシャイフとなったが、彼自身は包括的なイスラーム諸学の教育活動に従事した。その後ムフティー職就任や他宗教との対話活動により、彼の活動は徐々に公的なものへ、また国境を越えたものとなった。シリアの政治舞台と海外における彼の栄誉と名声がこれらの転換と拡張によって飾られたことは疑いがないが、そのローカルな権威は彼がホーム・グラウンドとするダマスカスにおけるアブー・ヌール・イスラーム学院、及びシャイフ・アフマド・クフターロー財団の設立によるところが大きいと思われる。「アブー・ヌール」は教育機関と財団、モスクを擁する複合機関となり、彼の宗教、政治、社会活動によって得られた教育援助、財政援助といった全ての還元の場として、そのローカル・レベルでの権威を堅固にするものとした。この点からは「アブー・ヌール」が彼の聖俗併せ持った側面を保障する役割を果たすものであったということも言えよう。今日の「アブー・ヌール」は宗教、教育、社会活動を包括的に行なうことのできる組織として存在し、偉大な教育者、活動家としてのアフマド・クフターローの権威は多極的に保証、維持されている。しかし没後三年、彼ほどのオール・ラウンダーはその後の「アブー・ヌール」には誕生しておらず、発表者はその点にも着目しながら引き続き調査を行なう。

 報告に対して参加者からはクフターローのシリア与党・バアス党との関係についての事実確認、コメントがなされ、隣国レバノンにおけるクフターロー評の紹介なども意見も拝聴することができ、発表者にとって有益な時間となった。また報告会に参加していたベイルート在住の研究者とは報告会の時間帯以外にも会って、話をする場が設けられていたことで、二次資料の紹介、研究方法や展望についての意見交換の機会を引き続き頂戴した。

 報告会自体は二日間に留まったが、その前後日程にはベイルート市内の教育機関の訪問などが叶い、今後の研究活動、特に現地調査における「ベイルート活用」について色々と学び知る機会を頂戴した。流動的な政治情勢下にあったベイルートでの報告会開催に尽力頂いた、黒木英充教授を始めとした関係者各位には、この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

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