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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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"Palestinians in Diaspora:
Their Identity and Nationalism in Jordan"

Aiko Nishikida(Research Fellow, ILCAA, Tokyo University of Foreign Studies)
錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

報告内容の概略

本報告では、発表者が近年つよい関心を抱いているテーマと、それに関する研究成果として、ヨルダン・ハーシム王国在住のパレスチナ人にみられる帰属意識のあり方に関する一考察を示した。これは今年3月に提出した博士論文での主な議論のうえに、最近の研究動向を参照したものである。議論ではまず、1948年戦争以降に故郷を追われたパレスチナ人を、法的枠組みによる「難民」との呼称ではなく、一括して「ディアスポラ(離散)」と捉えることの意義と有効性を、枠組みとして提示した。そのうえで具体例として、ヨルダンの首都アンマーン市内に住むパレスチナ人をとりあげ、彼らの保つパレスチナ人としてのアイデンティティについて分析を加えた。彼らのアイデンティティ形成の過程は、個々のつながりと集合的なつながりの二通りで説明することができる。前者はパレスチナ人同士の親族間の交流によって、後者は離散に関する記憶・伝統文化の維持の中から育まれている。離散したパレスチナ人の間では、母国が現存せず、遠隔地間に住む人々の間での、関係性に基づくナショナリズムが形成されている。発表者はこれをディアスポラ・ナショナリズムと呼び、他の事例との比較に開く形で議論をしめくくった。

ディスカッションの概要

コメンテーターはAUB(ベイルート・アメリカン大学)のサリ・ハナフィー教授にお願いし、レバノン国内で実際にパレスチナ難民を対象に調査・研究される立場から、発表者の議論の内容について鋭いご指摘をいただいた。まず「ディアスポラ」という枠組みの使用について、その有効性を認めながらも「難民」という概念が既に広く分析対象として確立されたものであるため、容易には捨てがたいことを確認された。続いて発表者が最近関心を抱いているレバノンのパレスチナ難民について、今回の発表とご自身の研究との関連の中から、今後うまく研究を発展させていけるようにご助言をいただいた。同じくAUBのヒラール・ハッシャーン教授からは、本論が先行研究の中でどう位置づけられるのか、発表者自身の立脚点を明示する必要性が強調された。また研究成果を英語等で広く学会に提示していくことの重要性もご指摘いただいた。

会議参加の感想

会議全体としては、今回はAA研の所員として開催準備を手伝いながらの発表準備であり、かつレバノンの政治情勢自体も不安定であったため、やや気ぜわしい中での参加となった。研究対象地のパレスチナがレバノンとは隣接しているため、関連の政治情勢には詳しい研究者を前に、博士論文の内容を発表することには非常にプレッシャーがかかった。英語での口頭発表自体も初めてであったため、準備の要領がつかめずに緊張の中で本番を迎えた。しかし実際に始まってみると意外に落ち着いて発表ができ、今後への大きな自信につながったと思う。反省点としては、質疑応答の際にやや集中力が途切れて、回答がまとまらなくなったことが挙げられる。今後はもう少し余裕をもって発表に臨みたい。

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