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中東研究日本センター(JaCMES)における研究活動
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JaCMES第1回研究会−報告要旨

日 時:2005年10月22日(土)16:00-18:00

場 所:JaCMES

報告者:三枝 奏(慶応義塾大学大学院修士課程・サンジョゼフ大学大学院留学中)

タイトル:「教育を巡る事象から再考する庇護国レバノンとパレスチナ難民の関係」

趣旨:

本研究は、レバノンのパレスチナ難民とその庇護国であるレバノンの現状と問題点を、パレスチナ難民の教育という視点を通じて、考察するものである。

レバノンにおけるパレスチナ難民の地位は、大変低く、そして厳しいものとなっている。レバノンの労働法は、2005年7月まで、パレスチナ難民をはじめとする外国人に対して厳しい就労条件を課しており、パレスチナ難民は、医師、弁護士、会社経営、金融関係、医療関係など70種類以上の職種への就業が禁止されていた。そのため、レバノンで暮らすパレスチナ難民のほとんどは、最低限の生活費すら得ることが困難な状況に置かれていた。また、難民キャンプに代表されるパレスチナ難民居住地では、ゴミ収集や基礎医療のような社会サービスは、ほぼ全て国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に頼らざるを得ず、電気や水道は利用不可能である場合も少なくない。さらに、収入の確保が困難ということは、病気にかかった際も民間の医療サービスを利用することが非常に困難であることを意味し、同様に教育に関してもUNRWAが提供する無料の学校サービス以外の教育機会を利用することは事実上不可能なことを意味する。

レバノンのパレスチナ難民を研究している人々は概して、上述したような「レバノンのパレスチナ難民の特殊性」を強調し、彼らの置かれている不安定な状況の調査と分析に焦点を当てる傾向がある。しかし、難民問題の解決策を論じる場合、難民自身の特殊性だけを取り上げるのではなく、難民の庇護国や発生国などその周りの環境と合わせて、包括的に問題を捉える必要がある。既存のレバノンのパレスチナ難民研究は、庇護国レバノンの社会状況に対する視点が欠如していることが多く、レバノン社会の問題こそがパレスチナ難民に影響を与えているにも関わらず、パレスチナ難民が抱える問題と、レバノン社会が抱える問題を、同じ文脈で語ることはほとんどなかった。

そこで、本研究では、レバノンにおけるパレスチナ難民の教育問題に着目し、そこから両者の問題を並列に論じようと試みる。

一般に教育は生活と密接に関わる問題であり、教育を普及させることで個人や集団の経済状況が向上し、生活の質も改善されると言われている。しかし、レバノンのパレスチナ難民は、その置かれている厳しい生活条件から、教育が直接的に生活の質を向上させる要因となり難く、モチベーションの維持が困難である。また、UNRWAを初めとする援助機関も、教育には大変力を入れているが、教育を受けた先には、レバノン国民であっても就職が難しいという現状があり、パレスチナ難民もレバノン社会自体が抱える問題に直面することになる。

本研究は、このようなレバノン社会とパレスチナ難民両者の問題が密接に関わり合う教育の場合を事例に挙げ、レバノンにおけるパレスチナ難民の現状を、レバノン社会という全体の文脈の中で再評価し、今後の生活向上や問題解決のための方向性を探っていくものである。

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