『「中華」に関する意識と実践の人類学的研究』 |
***発表要旨***(『通信』92号に掲載済) |
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平成9年度第2回研究会 | |
日 時: | 平成9年12月6日(土) |
場 所: | AA研セミナー室 |
報告者: | 1. 潘宏立(総合研究大学院大学) |
2. 聶莉莉(西南学院大学) | |
3. 三尾裕子(所員,プロジェクト主査) |
今回の研究会では、中国福建省という一地域を取り上げ、村落における、ボランタリーアソシエーション、宗教信仰などの側面から、中国社会の普遍性と地域性の問題を考察した。 |
1.「中国福建省における宗族の再興 -- ![]() 宗親会は宗親組織の一形態で、擬制的な親族集団である。しかし、中国本土の宗親会の現状についての研究はこれまでほとんどおこなわれてこなかった。本報告では、福建省南部 ![]() ![]() 1990年代に入ってから、 ![]() 当宗親会は晋江市・石獅市にある蔡姓と柯姓の214の村落の宗親を中核とし、隣接する南安市、恵安県、 ![]() 当宗親会は東南アジアを中心とする海外の宗親会との連携を重要視している。そのなかでも、とくに晋江・石獅籍の華人が多く居住しているフィリピンの宗親組織である「菲律濱済陽 ![]() 1980年代から「改革開放」が進み、社会が急激に変化したために、村落や宗族間の紛争も増えてきたが、宗親会はこうした紛争を調停し、地域社会の安定と発展に大きく関与している。宗親会は政府との協力関係をうまく保ちながら、その必要性から地域社会において再興してきている。 |
2.「![]() 中国の民間信仰について、今までの文化人類学的な研究は、台湾、香港に関するものが多いが、大陸部については比較的少ない。本研究の目的は、三つほどある。 1.大陸中国で人類学の手法で行う民間信仰に関する基礎的調査として、地元の人々が神々と交流する様態をできるだけ具体的に把握し、現状を紹介する。 2.人々の信仰する様々な神明について記述するとともに、共存することなる宗派の神明を、話者の主観をよりどころに分類し、さらに人々の信仰心の分析を試みる。 3. ![]() まず、信仰されている神々の分類について。 ![]() また、現地調査のデータに基づいて、諸宗教信仰が習合した理由や、仏教や儒教が神々信仰に与えた影響、人々の神々を崇拝する心理と関連して人々にとって「聖」と「俗」・「正常」と「非常」・「普通」と「怪奇」の区別が何か、などの様々な問題について研究分析を行った。 |
3.「中国福建の王爺信仰:実地調査資料から」/三尾裕子 今回の発表では95年末から96年初め及び96年末から97年初めに行った実地調査資料をもとに、当該地区における王爺信仰の歴史と現状について整理し、王爺の起源は何か、王爺が信者にとってどのような意味づけを与えられたシンボルであるかを考察した。王爺は、台湾では最もポピュラーな神であり、民族学・民俗学の分野でも、その起源をめぐって、また霊的なシンボルと地域社会との関係などが研究されてきた。しかし、特に起源をめぐる議論においては、従来台湾以外での調査データがほとんどなかったために、台湾でのデータと歴史的な文献(大陸についての地方誌や道教の経典)が直接結びつけられて論じられる傾向があった。 二回の調査では、福建省の旧泉州府下、旧 ![]() ![]() 王爺は、従来瘟疫の神が起源である、という研究がなされてきたが、二回の調査では、ある程度の関連は見られるものの全ての王爺が瘟疫神である、とは考えられていたわけではなかった。ただ、瘟疫と王爺との関係が密接なのは旧泉州府下の廟であり、瘟疫との関連が指摘できる王爺については、その起源伝承の多くが第1のタイプの伝承(即ち、進士)を持っていることが指摘できる。また、瘟疫の放逐と関わっていると考えられる王船を流す儀礼を持ち、進士という伝承を持ちつつ王爺と瘟疫の関係が指摘されていない地区の場合を見ると、王爺が瘟疫と関わっていたにもかかわらず、その伝承が失われた可能性と、そもそも王爺と見なされる霊魂は瘟疫とは必ずしも関わっていないケースもあったという可能性が考えられる。 現時点では、まだ調査の事例が充分とは言えないが、当該地域では、王爺という範疇に含まれる霊魂は、宗族内において「祖先」として祀られる霊魂や、皇帝や玉皇大帝等によって封号を別個に与えられ、 ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() 東京外国語大学 アジアアフリカ言語文化研究所 |
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