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研究代表者:堀博文

 本研究課題の対象であるハイダ語スキドゲイト方言は,北米先住民諸言語の1つで,カナダのブリティッシュ・コロンビア州クィーン・シャーロット諸島に分布する言語である.その話者は,専ら70歳代以上の高齢者に限られ,この10年から20年の間に消滅してしまう可能性が極めて高いと予想されている. 本研究課題は,いまだ十分な研究がなされていない同方言の形態統語法の包括的な記述を第一の目的とし,更に,現地調査での?を補うという意味で,国内外の研究機関などに所蔵されている,過去のハイダ語(あるいは周辺の諸言語)の研究資料を蒐集し,その整備を図る.また,これまで行なってきた現地調査によるアナログの録音資料を,永年保存に耐えられるように,デジタル媒体へと変換していく.加えて,北米北西海岸地域の他の先住民諸言語との比較・対照を通じて,ハイダ語の言語類型論的特質の考察を試みる.

 ハイダ語スキドゲイト方言の話される地域に赴き,同方言の記述研究を行なう.調査に当たっては,同方言の話者数名の協力を仰ぎ,比較的複雑な構造をなす動詞の形態法に焦点をおくと共に,談話資料に基づき,統語法の解明を図る.更に,辞書作成のための基礎的作業に入る. 現地調査のみならず,ハイダ語の包括的な理解を得るため,同方言の既存資料の蒐集ならびにその分析と整備を図る.いずれの資料も19世紀末から20世紀初頭にかけてなされたもので,誤った解釈や不正確な記述が少なからず含まれるであろうが,今日となってはすでに得ることが困難な情報も含まれているという点で,今もってその利用価値は高いと考えられる.併せて,北米先住民諸言語に関する文献資料も蒐集し,ハイダ語の言語類型論的特質の考察を行なう. これらの研究を遂行するにあたっては,環北太平洋の先住民諸言語の研究に従事する国内外の研究者と頻繁に意見交換を行ない,本研究課題の成果について助言を仰ぐ予定である.