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研究代表者:津曲敏郎
研究分担者:池上二良、風間伸次郎
研究協力者:山越康裕、山田敦士、牧仁

 日本の北方に分布するツングース諸語は、中国語・ロシア語という圧倒的勢力にさらされてきた結果、現在ではそのほとんどがすでに子供への継承のとぎれた、まぎれもない「危機言語」である。永年、外国人研究者による実地調査が困難であった事情もあり、多くの言語が基礎的データさえとどめられずに失われようとしている。これらを可能なうちに調査し、記録にとどめることはまさに緊急事であると言わなければならない。最終年度では以下の目的にそった活動を行う。
(1) 言語資料の収集と整理:新たな資料収集と現有資料の補足・確認および整理
(2) 音声データのデジタル化と公開:録音資料の整理とデジタル化、公開
(3) テキスト・コーパスの作成と刊行:民話資料等の分析とテキスト化、刊行
(4) 現地語教育への寄与:地域の話者との連携をはかり、必要に応じて文字の策定、初等教科書と学習用辞書の作成等に協力する。

(1) 実地調査による資料収集:津曲は昨年度に引き続き、中国東北部におけるツングース諸語のうち、特に危機度の高い言語・方言についての資料を収集する。この目的のために現地の事情に詳しい中国人研究者(中国社会科学院民族研究所研究員・朝克および黒龍江省満語研究所所長・趙阿平ほか)の助力をあおぐとともに、研究補助のため大学院生(北海道大学・山越康裕、山田敦士、牧仁)を研究協力者として同行・派遣する。池上はこれまで行ってきた北海道在住のウイルタ語話者からの調査を継続するとともに、サハリンのウイルタ語について、教科書作成のための資料収集と実務作業を行う。必要に応じて大学院生(北海道大学・永山ゆかり)の協力を得るとともに、現地協力者の招聘も計画している。風間は主にナーナイ語、エウェン語等について民話テキストの収集・分析と刊行のための確認作業を行う。
(2) 現有資料の整理・刊行:現有資料について、新たな現地調査での確認作業を経て、原文対訳テキストの整理と分析を進め、可能なものから刊行する。
(3) 音声資料の複製と公開:これまで蓄積されてきた録音資料をMDやDAT、CDなどの形でデジタル化して複製し、可能なものについてはテキスト刊行に付す形で公開する。