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研究代表者:宮岡伯人
研究分担者:笹間史子
研究協力者:永井佳代、永井忠孝
海外共同研究者:O. Zepada, J. Mulder, T. Stebbins

 本研究は、言語の危機に対する関心が世界的に高まりつつある今日的状況にかんがみて、存亡の危機がせまっていながら調査研究がきわめて立ちおくれている言語の中でも、とくに危機度の高いアラスカからカナダ北 西部にわたる諸言語にかんする包括的な研究の基礎をかためることを目的とする。これら北アメリカ北西部の言語は、言語類型的にも言語系統的にも興味深い問題を含んでいるが、まとまった記述資料はほとんどない。また、その話者数も少なくその大部分が英語を優勢言語とする二重言語生活を送っているため、21世紀中の消滅は避けられないと思われる。本研究の遂行により、学術的に有意義な資料が蒐集できるのみならず、研究成果を現地に還元することによって、文化遺産ともいえる少数民族言語の保持と継承に貢献しうる可能性も大きい。

 これまでに、研究代表者、研究分担者、研究協力者のいずれもが数年以上にわたり年に1度ないしそれ以上の現地調査を継続し、着実に成果を挙げてきている。本年度は、各参加者がすでにもっている当該言語の調査経験と蓄積資料にもとづき、あらたな言語的側面にかんする調査をおこなう。それぞれの調査の具体的内容は、 以下のとおりである。 

 1.エスキモー語については、宮岡がアラスカ・ユピック語の文法概要の完成をめざし、言語構造の各側面 について最終的な調査をおこなう。研究協力者である永井佳代[日本学術振興会特別研究員]と永井忠孝[東京大学大学院博士後期課程]は、研究代表者と連携・協力しながら、それぞれシベリア・ユピック語とイヌピアック語の形態法にかんする調査をすすめる。 

 2.インディアン語については、笹間は海岸ツィムシアン語の形態論に重点をおいた調査をおこなう。Zepedaはパパゴ語の文法概要の完成をめざす。研究協力者の當銘ジョゼフ[熊本学園大学外国語学部講師]は、サハプティン語の形態論にかんする記述をすすめ、Stebbins[ラトローブ大学言語類型研究所研究員] はツィムシアン語にかんする記述をまとめる。 

 現地調査は、一日約2−4時間の資料提供者からの聞き取りによる第一次資料の蒐集を中心におこない、残りの時間は、聞き取り調査でえられた資料の整理・分析にあてる。  11月には日本国内のメンバーが京都に集まり、各人の調査結果の検討と今後の調査研究に向けての打ち合わせをおこなう。