多言語状況データベース  インド
内藤雅雄/足立亨祐

 
1.国名(通称、正式名称、英語名) 
 
インド (インド共和国)、Bharat (Bharat Ganarajya)、India (Republic of India)

 
2.「国語」、「公用語」など
 
2.1. 「国語」、「公用語」に相当する言葉の有無:
有り (連邦公用語 Official Language of the Union)
2.2. (存在する場合)その言語
デーヴァナーガリー文字によるヒンディー語(連邦公用語)
2.3.その指定の根拠(法、その他):憲法343条

 
3.当該国(地域、行政区分)の諸言語、および関連する政治社会状況の概況: 
 
州再編成委員報告(1955/9/30)を下に言語別の州再編成が行われ(1956)、14州と6連邦直轄地(当時)が誕生。ボンベイ州の分割によるマハーラーシュトラ州・グジャラート州の成立(1960)など、その後も新たな言語的アイデンティティによる運動は今日まで継続している。

 
4.憲法、その他の法規における言語の扱い
 
[憲法]
4.1. 当該憲法の名称:
Constitution of India (Bharat ka samvidhan)
4.2. 当該憲法の施行年:
1956/1/26
4.3. 当該憲法において、言語(多言語)について言及している条項と内容 
29条 - 30条、120条、210条、343 - 351条、394条A、及び第8付則
4.4. 言語関連法令
大統領令(1960/4/27)、公用語法(1963年、67年に修正)、内務省決議(1968/1/18)、公用語使用に関する規則(1976年、87年に修正)
4.5. 言語関連法令
大統領令(1960/4/27)、公用語法(1963年、67年に修正)、内務省決議(1968/1/18)、公用語使用に関する規則(1976年、87年に修正)
4.6. 法令内の言語関連条項:別頁資料を参照
4.7 解説
憲法に定められた連邦公用語はデーヴァナーガリー文字表記によるヒンディー語であるが、ヒンディー語の公的地位の独占に関しては、特に南インドからの反発をうけ、連邦公用語としてのヒンディー語に加え、憲法の第8付則により使用促進が望まれる言語として憲法第8付則に18言語(1992年第72次憲法改正時;ヒンディー語、ベンガル語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語、グジャラーティー語、カンナダ語、マラヤーラム語、オリヤー語、パンジャービー語、アッサム語、スィンディー語、ネパーリー語、コンカニー語、マニプリー語、カシュミーリー語、サンスクリット語)が指定されている。

 
5.国会、官公庁等における使用言語(公用語)
 
[国会、官公庁等]
5.1. 国会、官公庁等における主使用言語の名称:
デーヴァナーガリー文字によるヒンディー語(連邦公用語)
5.2. その他の使用言語名称
英語、州の公用語に関しては別表を参照
[憲法]
5.3. 憲法を書き表すのに用いられている言葉:英語
5.4. 憲法の公式翻訳(第二言語)の有無:有り
5.5. 公式翻訳の使用言語:ヒンディー語
5.6. 使用言語をめぐる問題点
ヒンディー語版の憲法についても1987年憲法第58次改正により、正文と認められる。
5.7. その他
連邦の公用語に関しては、ヒンディー語を連邦公用語と定めた憲法343条において、憲法施行後15年を経過した際には英語を連邦公用語から排除するという規定があるが、この点に関しては1963年公用語法により、憲法の条文を残したまま、英語の廃止については無期限に延期となった。同時に348条では連邦議会で特別な規定が行われない限り、(a)最高裁・高裁における手続き、(b)連邦議会・州議会に提出される法案、及び制定法、命令などの正文は英語と定められている。また各州の州公用語に関しては、345条において、連邦公用語であるヒンディー語もしくは州立法・行政命令の定めるところの言語と定められている。

 
6.教育における使用言語(教室での使用言語、教科書での使用言語)
 
[教室]
6.1. 初等中等教育における主使用言語の名称:各地域語
6.2. 初等中等教育において他の言語の使用が認められているか:
初期初等教育でのみ認められている
6.3. 上記の場合、その言語: ヒンディー語/英語など
6.4. 高等(大学)教育における主使用言語の名称: 英語など
[教科書]
6.5. 初等中等教育用教科書を書き表すのに用いられている言葉:
各地域語、ヒンディー語、英語など
6.6. 高等(大学)用教科書を書き表すのに用いられている言葉:英語など 
6.7. 初等中等教育で教えられている言葉:
基本的に三言語定則(後述)に基づき、(1)母語または地域語、(2)連邦の公用語または準公用語(associate official language)、(3)インド諸語あるいは外国語が授業科目として設定される。
6.8. 代表的な大学で教えられている言語:
デリー大学(文学部:アラビア科、イギリス科、ヒンディー科、ゲルマン・ロマンス研究科、近代インド諸語文学研究科、ペルシャ科、パンジャービー科、サンスクリット科、社会科学学部:アフリカ研究科、中国・日本研究科)、ジャワハルラール・ネルー大学(言語文学文化学部:アラビアアフリカ研究、ペルシャ中央アジア研究、日本北東アジア研究、中国東アジア研究、フランス・フランコフォニー研究、ゲルマン研究、インド諸語、言語学英語学、ロシア研究、スペイン研究、国際研究学部:アメリカ・西ヨーロッパ研究、東アジア研究、ロシア・中央アジア・東ヨーロッパ研究、南・中央・東南アジア・南西太平洋研究、西アジア・アフリカ研究)など。

 
[問題点・解説] 
6.9. 教育での使用言語をめぐる問題点:
中央教育諮問委員会(Central Advisor Board of Education; 1957)にで示された三言語定則(Three Language Formula)は教育会議(Education Commission; 1964-66)の勧告をうけ、1968年の内務省決議(前項参照)と共に政策として採用される。(1)母語または地域語、(2)連邦の公用語または準公用語、(2)インド諸語あるいは外国語の三つを初等中等教育における言語関連の授業科目とする。三言語定則は、連邦公用語であるヒンディー語に対する反対感情の強いタミル・ナードゥ州を除いて、ほぼ定着していると言われる。

 
6.10. 教育システムに関する解説:
1968年の「国家教育政策National Policy on Educatin; NPE」以降、教育体系の全国的統一が目指された。10+2+3制全国委員会(National Committee on 10+2+3; 1973-75)、10年生学校カリキュラム再検討委員会Review Committee on Curriculum for the Ten-Yeat School; 1977)、後期中等教育再検討委員会(National Review Committee on Higher Secondary Education; 1978)などを経て1986年のNPEで全国共通の10(1-5:初等/6-8:中等前期/9-10:中等後期)+2(Higher Secondary School)+3(大学)制に統一、以降その定着がはかられている。

 
7.放送における使用言語
 
[全国放送] 
7.1. ニュース放送の主言語:
国営(公社)のラジオ(All India Radio: Akash Vani)では19言語による88のニュース速報(bulletins)、テレビ(Doordarshan)では全国ネットワークの英語、ヒンディー語のニュース速報に加え、DD-2Metroでウルドゥー語、また各地域で、ヒンディー語、ウルドゥー語、パンジャービー語、カシュミーリー語、ドグリー語、マラーティー語、グジャラーティー語、タミル語、テルグ語、マラヤーラム語、ベンガル語、オリヤー語、英語、アッサム語の速報が行われる。
7.2. ニュース放送の副言語: 
7.3. ドラマ、歌(等)で用いられる言葉:
[地方放送] 
7.4. ニュース放送の主言語:
7.5. ニュース放送の副言語:
7.6.  ドラマ、歌(等)で用いられる言葉:
[問題点・解説] 
7.7.放送での使用言語をめぐる問題点:
7.8.放送システムに関する解説:
国営放送はNational/Regional(/Local)の各放送により形成される。国営ラジオは地域の89.51%、人口にして98.82%をカバーする。国営テレビは技術的には人口の87%をカバーする。調査によると、都市部(1998年)ではラジオに19%、テレビに76%(1998年)、農村部(1996年)ではラジオ20%、テレビ33%(1996)が触れている。http://www.allindiaradio.com および http://www.ddindia.netを参照
7.9.その他(衛星放送受信について等) 
ケーブルテレビは1984年にグジャラート、マハーラーシュトラの大都市の中間層に導入され、StarTV等の視聴が可能になる。また1992年にはZeeTVが開局され、普及を促進する。1995年にはケーブルテレビ網(規制)法が成立し計画的な普及がはかられている。

 
8.国勢調査における母語・使用言語調査のありかた 
 
8.1. 国勢調査における母語・使用言語に関する調査の有無:有り
8.2. 質問がある場合の尋ね方−選択肢から選ばせる方式か否か:
言語に関しては、自己申告による集計データを行政機構が整理統合
8.3. 国勢調査での上記以外の言語調査の特徴
設問は母語、及び他の言語(二言語まで、熟達の度合い順に記述)について記入 (Q.10&11, Census Questions 2001:Household Schedule for Population Enumeration) を参照
8.5. 国勢調査で使われる言語: ヒンディー語(デーヴァナーガリー文字)・英語(ローマ字)
8.6. 国勢調査の結果の公表において使われる言語:英語 
8.7. 国勢調査結果の言語関係情報のまとめ:別頁を参照

 
9.出版物 
 
9.1. 新聞はどんな言語のものが読まれているか:
1999年の日刊紙の発行部数統計によると、ヒンディー語41.71%、英語12.85%等。詳しくは別頁参照
9.2. 雑誌は何語で出版されているか:
1999年の雑誌の発行部数統計によると、ヒンディー語48.19%、英語15.98%等。詳しくは別頁参照

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