5.故障
  経験の範囲ながら、パンクを故障の内に含めないのならば、ボンネットを開けて何やらごそごそエンジンをいじっていることはしょっちゅうだとしても、エンジン本体等のトラブルにより広野の真ん中で完全に動かなくなることは存外少ない。一番多いのは、バッテリー切れなどのためセル・モーターが始動しない場合で、ただこの時には「押しがけ」をすればエンジンそのもは動くので、故障の内には入らない。ラジエターからの水漏れも多いが、これは運ちゃんがそのことを知っていれば、給水を繰り返しながらちゃんと目的地へと連れていってくれるので、心配はいらない。バッテリーが古く、夜になってライトを点灯したら走行途中で消えてしまい、結局その場で朝を待ったことも二回。僕が巻き込まれた一番酷い車体トラブルとしては、プジョー404ファミリアールが雨季にトラックが掘った轍跡を避けようとして路傍を通り抜けた時に、段差に車体下面をこすりシャフトを折ったものがある。この時は自慢の応急修理措置もとることができず、結局運ちゃんが通りがかったトラックをつかまえて交渉、金を渡して乗客全員と荷物を目的地まで運んでもらい、事なきを得た。これに対し、パンクの方は、ま、タクシ・ブルースを何回か利用するうちには必ず遭遇するものと心得るべし。むしろ、タイヤ交換の時間を、先ほどのレクラションの時間として積極的に活用するぐらいのつもりでいればいい。が、僕のレコードには、452kmを走行する間に4回パンクし、修理に10時間近くを喰ったというやつがある。
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