V. 村・地区(Fokontany)
- 電気
電気の供給はなし。夜間の灯りとしては、ロウソク・灯油ランプを使用。ロウソクと灯油ランプおよび灯油は、県庁所在地の町で入手可。また、月の出ていない夜や雨の降る夜のために懐中電灯は必需品。県庁所在地の町で確実に入手できる乾電池は単一型である。単三型電池の入荷は、単一型に比べると不確実。町で売られている中国製の懐中電灯はかさばる上電球が暗くまた雨などにも弱いので、日本から単三型電池を使用する準防水型の懐中電灯を持って行くことも勧められる。日本から懐中電灯を持って行く時は、予備の電球を必ず複数持ってゆくことと州都などで単三型電池を多めに買ってゆくこと。明るい分、電球と電池の消耗が早い。また、夜間にトイレに行くことを考え、懐中電灯には紐をつけておくと便利。
- 水道
水道の供給もなし。まれに簡易水道を敷設している村もある。ほとんどの村では井戸または川や池の水を利用。したがって、飲料に用いる時は、煮沸するか浄水剤の<Sur l'Eau>を添加すること。
- 燃料
炭か薪を使用。灯油の入手が容易ならば、州都や県庁所在地の町で灯油コンロを買って持ち込むこともOK。
- 医療
保健所兼診療所も、ほとんどない。手当の必要な人は、県庁所在地の町の公立病院まで行く必要がある。緊急の場合、首都や州都の病院まで迅速に搬送してもらう手段とルートを確保しておくことが、大事。
- 衛生
標高1000m以下の市町村は、マラリア感染の危険性がかなり高い。村では対処が全くできないので、マラリア予防薬の定期服用をすると共に、マラリアの治療薬も常に持っておくこと(マラリアについては、別紙「マラリア日記」を参照)。蚊帳は、州都や県庁所在地の町で入手して持ってゆくこと。蚊だけではなく、就寝時のゴキブリやムカデなどの襲来を防ぐことができる。野菜は、回虫・蟯虫・嚢尾虫・ランブル繊毛虫・アメーバ赤痢やA型肝炎ウィルス・病原性大腸菌・細菌性赤痢による汚染の心配があるので、生食を避けること。ゴキブリとネズミが多いので、日本からゴキブリ用薬剤と殺鼠剤を持参すると役に立つ。日常生活用品の入手は、できない。
薬局なし。
ノミ・砂ノミ・シラミ・南京虫・シラミ・ダニあるいはムカデ・クモ・サソリなどが多くの村では日常的にいるため、噴霧式や粉状の殺虫剤だけではなく、燻蒸用にバルサ剤を持ってゆくと多少の役にたつ。ムカデに咬まれた時は、自分を咬んだムカデを捕まえ、そのムカデの内臓を傷口に塗布するか、あるいは捕まえたムカデをラム酒などの蒸留酒の中に漬けその酒を傷口に塗布することが有効。砂ノミが皮膚に入った時は、そのことを地元の人に伝えれば、取る事に慣れた人を連れてきてくれる。砂ノミを取り出すとその後の皮膚に穴があくので、抗生物質軟膏を塗ってバンドエイド等で覆っておくこと。皮膚に塗る虫の忌避剤やかゆみ止めは自分の肌にあったものを日本から持ってゆく方がベター。また、海岸部の市町村は紫外線が強いので、サングラスと共に日焼け止めクリームを持って行った方が良い。それから、とりわけ雨季は水虫もあなどることができず、また治療薬は日本の方が種類豊富なので最新の物を持ってゆくことがお勧め。ほとんどの村では、トイレなし。
マダガスカルの河川や池沼の一部には、ビルハルツ住血吸虫およびマンソン住血吸虫が棲息しているので、そのような場所での水浴や立ち入りはできるだけ避けること(水の中に入ると住血吸虫の幼生体が足の皮膚から侵入する)。とりわけ、水草が生えているような止水域は大変に危険。感染による典型的症状は、ビルハルツ住血吸虫が血尿、マンソン住血吸虫が下痢。慢性化すると治療が困難になるため、血尿が出たり、あるいは下痢が続くような場合は、必ず首都や州都の医者の診断を受けること。
村になると入手できる食材に明らかな偏りが出てくるため、総合ビタミン剤・カルシウム製剤・鉄分や亜鉛やヨードなど微量元素の補助栄養剤などを日本や首都で入手して定期的に服用し、不足がちな栄養等を補給するよう心がけること。特に、虫さされの跡やちょっとした傷がなかなか治らないあるいは鼻血や生理の出血がなかなか止まらないなどの症状が出てきたら、体内のビタミンや微量元素が不足し始めている兆候なので、要注意!
マダガスカル政府機関から狂犬病流行に対する注意喚起が出されている。協力隊員のは予防注射を済ませているが、それでも犬はもちろんのこと猫や野生動物にむやみに近づいたり手を出したりしないこと。万が一動物に咬まれた時は、咬んだ動物を捕獲し(生きていても死んでいてもいずれでも構わない)、その動物と共に即刻医師の許に行き手当を受けるか指示を受けること。任地で狂犬病が発生したとのニュースを耳にした時は、外出時長めの棒を杖代わりに持って歩くことも自衛策として勧められる。動物の死体にも触らないこと。
性病はマダガスカル全土において都市部および農村部を問わず、エイズ・梅毒・淋病・軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫等および毛虱があるため、十分にその危険性を考慮の上、行動すること。
- 治安
「マダガスカルには牛泥棒以外の泥棒はいない」との話は、今は昔となりつつある。空き巣泥棒の被害が、一見のどかに見える村の中でさえ生じている。家を空ける際には、こまめに窓を閉め扉に鍵をかけること。犬を飼うことができれば、ベター。地方によっては武装強盗団ないし武装牛泥棒(dahalo ないし malaso と呼ばれる)が跳梁しているので、昼間でも村の外に出ると危険がある。村の外に出かける時は、必ず地元のマダガスカルの人と一緒に行くこと。
警察署、憲兵隊駐屯所、共になし。治安は、各村が自主的に対処している。
ここ10年近く、墓を暴きその中に安置されている人骨を盗み出す泥棒が、トゥアマシナ州・アンタナナリヴ州・マハザンガ州などの地域で跋扈している。また、南部や西部では、墓に置かれた彫刻や彫刻の施された柱を盗み出す輩も後を絶たない。そのため、被害に遭っている地元では、よそ者の墓や墓地への立ち入りに神経質になっている。したがって墓や墓地へ行く時は、必ず地元の人と一緒に行くこと。
- 通信・コミュニュケーション
- 郵便
郵便局なし。タクシ・ブルースの通道沿いの市町村の時は、タクシ・ブルースの運転手にそのタクシ・ブルースが経由する村や町への手紙を託すことができる。郵便の配達もなし。したがって、このような地方の市町村に住む人は、郵便が届く県庁所在地の町の知人の住所に気付とさせてもらうか、あるいは郵便局に私書箱を開設する必要がある。
- 電話
なし。
- FAX
なし。
- 小包
配達業務なし。
- インターネット
なし。
- テレビ
なし。
- ラジオ
首都から発信される短波放送を受信するしかない。県庁所在地の町ではたいてい中国製などのラジカセが、安価に出回っていて、買うことができる。ほとんどの地方の市町村では短波放送しか受信できないので、田舎に住む人は、日本で高性能の短波ラジオを購入したほうが良い。とりわけ、12月から4月までのサイクロンの季節は、天気予報に注意すること。日本語海外向け短波放送も、電波の状態が良ければ、受信可能。地方に赴任する協力隊員には無線機が貸与されるので、それを使って短波放送を受信することが可能。
- 新聞
なし。
- 本屋・図書館等
なし。
- 交通
- バス
なし。
- タクシー
なし。
- レンタカー
なし。
- 原動機付き自転車・オートバイ
原動機付き自転車やオートバイはあれば便利な場合が多いものの、首都や州都の町で購入したものを持ち込むしかない。ただし、ガソリンの入手は、田舎ではしばしば難あり。隊員の場合、車・オートバイの所有と運転は禁じられている。
- 自転車
5000円から1万円で中国製などの新品を県庁所在地の町で購入することができる。山間の市町村でない限り、自転車があると便利。
- プス
なし。
- 衣料
村では、市の立つ日以外は、入手の機会なし。首都・州都・県庁所在地の町で、事前に購入のこと。蚊帳や寝具なども同様。
- 娯楽
- レンタルビデオ店
なし。
- 映画館
なし。
- 催し物
7月から8月のバカンスのシーズン、12月から1月の年末・年始、4月の復活祭の頃に生バンドを呼んでのダンス大会(bal)の開催されることがある。サッカーチームがあり、乾季にはその対抗試合の行われる村もある。
- ディスコ
なし。
- ジム・スポーツクラブ等
なし。
- 音楽ソフト販売店
なし。
- 美容室・床屋
なし。
- 宿泊
村長( chef de village や Presidentn'ny fokontany)などに頼むかつてを頼って民家に泊めてもらうくらいしか手段がない。キリスト教の一派のアドヴァンティストの信者は信仰が強固なため、この信者を紹介してもらうことも村で宿泊先を見つける一つの手段。
- 買い物
【マダガスカルの通貨表示について】
マダガスカルには、マダガスカル・フラン(Franc Malgache、FMGと省略表記)とアリアーリ(ariary)、二つの通貨表示があります。地方での売り買いでは、このアリアーリの価格をマダガスカル語の数詞で言ってきますので、数字をしっかりと覚えてください。詳細は、首都アンタナナリヴの項の記述を参照。
- 市場(tsena , bazary)
牛市ないし定期市が、開催される村がある。そのような市の日には、県庁所在地等から商人たちが商品を持ち込むため、食料品や衣料品などを買い求めることができる。あるいは即席の肉屋が開かれることもある。
- 店舗
常設の店のある村は少ないが、塩・砂糖・マッチ・ロウソク・灯油・ノート・布くらいまでの日常用品は村の内部で売る人がいることも。
- スーパーマーケット
なし。
- 食生活
- レストラン
なし。
- 現地食堂(hotely)
タクシ・ブルースが通る街道沿いの村ではhotelyのある可能性があるが、それ以外の村では、hotelyもなし。
- 立ち食い
牛市や市の日に限って立ち食いの店が出るが、日常はなし。
- 自炊
薪か炭を使って自炊するしかない。県庁所在地の町が遠くないならば、灯油をプラスチック容器に貯蔵し、灯油コンロを買い求め使うことも可能。米や葉野菜、果物などを入手することは容易。タマネギ・ジャガイモ・ニンジン・白菜・レタス・長ネギなどの西洋野菜や中国野菜等は、それらの産地の市町村でなければ、入手することは困難。肉は、祭礼でもない限り日常的には入手不可。祭礼の際などに大量の牛肉が入手できた時は、干し肉(kitoza)を作り、それを貯蔵して少しずつ使うと良い。干し肉は、肉を短冊状に切り、塩をふるか、塩水につけてから、天日もしくは炉の上に紐をかけて3日から7日くらい乾燥させて作る。食べる時は、焼くか油で炒める。良く乾燥させたものは、数ヶ月の貯蔵に耐える。
- 金融機関
なし。
【付録 医薬品チェックリスト】
(この全てを用意して持って行かなければならないと言うことではなく、医薬品を揃える場合のあくまでも目安です このリストの中の薬品等の多くは首都のアンタナナリヴでも調達や購入が可能です 私が無医村で調査を行う時は、だいたいこのような医薬品を持参しています 医療環境が整い、医薬品がすぐに入手できる首都アンタナナリヴや州都の町に住む人たちは、ごくわずかの常備薬で十分です)
1)マラリア予防薬 ・マラリア治療薬(田舎に住む人は必須 「マラリア日記」参照)
2)抗生物質軟膏(砂ノミを採った跡やおできなどの必需品 副腎皮質ホルモンの入ったもののほうが抗炎症効果にすぐれているが、長期連用による副作用も心配されるため、入っていないものの方がお勧め 傷口や虫の咬傷跡が化膿した場合に使用のこと ケガや傷は、まずオキシドールかミネラル・ウオーターなどで傷口の泥やゴミを取り除いてから、ヨードチンキか白マーキュロを塗布し、蠅にたかられないようにバンドエイド等で覆います 砂ノミを採った後以外では、化膿していない傷などにこの種の軟膏を濫用しないこと)
3)バンドエイド等(これも必需品 ちょっとした傷やケガでもそのままにしておいて蠅にたかれると、化膿したり熱帯性潰瘍になったりします)
4)鎮痛解熱剤(自分に合った物を選んでください マラリアの熱と頭痛にはどの鎮痛解熱剤もあまり効きません)
5)総合ビタミン剤(田舎に住む人は食事がどうしても偏るため必須)
6)宮入菌や乳酸菌だけからできた整腸剤(機能性の薬剤の入っていないものの方が副作用を心配なく服用できます)
7)下痢止め(濫用しないこと 仕事や移動に差し支えないならば無理に下痢は止めない方が良いことが多い)
8)メトロニダゾール(商品名 フラジール アメーバ赤痢とランブル繊毛虫症の特効薬 田舎に住む人は必需品)
9)経口の合成抗菌剤ないし抗生物質(細菌性赤痢・破傷風・腸チフスおよび化膿に有効なこれらの薬品を田舎に住む人は携帯しておいた方が良い)
10)オキシドール(過酸化水素水 傷口の浄化と消毒に威力を発揮します)
11)痒み止め(自分の肌に合ったものを選択のこと マラリアを媒介するハマダラカに刺されると、藪蚊やイエカよりも痒く感じるようです ノミが多いので都会に居住する人でも必需品)
12)虫除け剤(自分の肌に合ったものを選択のこと マラリアを媒介するハマダラカは足首から足の甲を集中的に刺しますので、この部分だけにでも虫除け剤を塗布するとマラリア予防の効果があります ただし、虫除け剤もノミ・ダニ・南京虫・シラミにはほとんど効果なし)
13)サルファ剤入り目薬(結膜炎が多いのでこれも田舎に住む人は必需品)
14)オロナイン(田舎に暮らしているとひび割れや乾燥肌になることが多く、オロナインは汎用性があり便利)
15)イソジン(うがい薬としてよく効きます)
16)トローチ(マダガスカルでは乾季は乾燥して温度が下がるため咽をやられたり、あるいは咽風邪をひくことが良くあります)
17)総合感冒薬ないし葛根湯(中央高地は寒暖の差が激しく、その気候に慣れないうちはよく風邪をひきます)
18)ビタミンC製剤(田舎に生活する人はどうしても不足します)
19)カルシウム製剤(田舎に生活する人はどうしても不足します)
20)粉末スポーツドリンク(ポカリスウェット・ゲーターレード等 下痢をして消耗の激しい時に飲むと有効です)
21)絆創膏・殺菌ガーゼ・脱脂綿・綿棒・油紙・包帯(特に圧迫包帯は便利)・三角巾・ピンセット・ハサミ・毛抜き・体温計(体温計は忘れないように!電子体温計が良い)
22)噴霧式殺虫剤・バルサ剤(ノミ・ダニ・南京虫・ゴキブリ等々 都会にも田舎にもいろいろいます)
23)ヨードチンキもしくは白マーキュロ(傷口消毒剤は必需品)
24)リバノール・ガーゼ(火傷などに良く効きます)
25)噴霧式外傷消毒剤(キズドライ等 便利です)
26)抗ヒスタミン剤(蕁麻疹のための薬ですが、ノミに咬まれた跡が炎症状態になった時は痒み止めの塗布と抗ヒスタミン剤の服用を併用すると良く効きます)
27)水虫薬(マダガスカルの水虫は、指の又にできる湿性タイプが多いようです)
28)サロンパス・トクホン等(筋肉痛だけではなく、打撲・捻挫の痛みの緩和、あるいは頭痛にも有効です)
29)駆虫剤(コンバントリン等 腸内寄生虫はすぐに生命にかかわるわけではありませんから、感染したことを確認してから機会を見て首都や州都の医療機関の許を訪れても構いません 首都や州都から遠い地方に居住する人は駆虫剤を持って行ったほうが良いかもしれません ただし、ビルハルツ住血吸虫やマンソン住血吸虫の感染が疑われる場合は、すぐに首都や州都の大きな病院に行って医師の診断を受けてください これらの住血吸虫には通常の駆虫剤が効かない上、慢性化しますと治療が困難になりますので)
30)正露丸(下痢一般に効果がありますが、主成分はクレオソートのため長期連用や濫用をしないこと また、穴のあいた歯痛箇所に詰めると一時的な鎮痛効果があります マダガスカルでは入手できません)
|
|