日本で作ろう!マダガスカル料理 第9回 ヘナンキスア・シ・トゥンドゥル(Henan-kisoa sy Trondro)の巻 |
『マダガスカル研究懇談会ニュースレター Serasera』 2005年 第13号 pp.17-18 掲載
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1.用意するもの(4人から6人分)
- 豚肉(ロース肉) 500gから1kg
- 白身の小魚 6匹くらい または 白身の魚の切り身6切れくらい
- ニンニク 1個
- 完熟トマト2個から3個
- 玉葱 1個
- 生姜 1個
- 食用油 少々(落花生油がベスト)
- 塩 小さじ 一杯半
- 市販の固形ブイヨン・スープの素 1個
- 深めの鍋
- 水
- 大根おろし器
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2.料理方法
- 玉葱の皮を剥き、みじん切りにします。へたの部分を取ったトマト1個を4つくらいに切ってから、種子の部分を手で揉み潰すようにして除きます。マダガスカル料理の場合、トマトの薄皮を湯剥きする必要はありません。ニンニクは薄皮を剥いでおきます。
- 豚肉を、ゴルフボール大くらいに切り分けます。魚は、表面を水洗いし、鱗を落とし、内臓を抜いておきます。小魚の場合、頭はつけたままにしておきます。
- 鍋に、食用油を入れ加熱します。油の量は、鍋の底に一面に油が広がり溜まるくらいを目安とします。
- 加熱した油から少し白煙が上がり始めたら、まずみじん切りにした玉葱を入れ、焦がさないように気を付けながら中火でよく炒めます。この時、油がはねますので、やけどしないように注意してください。
- 玉葱がしんなりとしてきたら、トマトを加えて、同じように炒めます。
- 炒めていた玉葱とトマトがペースト状になったところで、切り分けておいた豚肉を入れます。豚肉の表面にしっかりと火が通り、玉葱やトマトが肉の周りによくからまるくらいまで、かき混ぜながら炒めます。
- それから鍋に水を加えます。水の量は、100ccから200ccくらいです。ちょうど肉が三分の二くらい水の中に隠れるくらいが、適量です。
- 次ぎに、ニンニク1個の三分の一くらいを大根おろし器ですりおろして、入れます。生姜を少々、これも大根おろし器ですりおろして加えます。マダガスカルでは、市場で売られているミニチュアのような臼と杵を用いて、ニンニクや生姜を摺り潰します。生姜は豚肉と魚の生臭さを消すために加えるものですが、この料理の場合生姜の味が好きな人は、生姜をいくらか多めに入れても構いません。
- まず豚肉を、1時間から1時間半くらい鍋の蓋をして弱火で煮込みます。下の肉が焦げないよう、時々肉を掻き回します。そうしますと、やがて煮込む際に加えた水が煮とび、最初に加えた食用油と豚肉から出た脂の中で肉が煮えているような状態になります。
- もう一度水を50ccくらい加えます。次ぎに、用意してあった魚を豚肉の上に並べ、蓋をして弱火で煮込みます。魚が大きい場合、あるいは魚の身が厚い場合は、途中一度魚を裏返してください。最後に加えた水が煮とぶまでの15分から20分間くらい蓋をして煮て、出来上がりです。あまり煮込みすぎますと、魚の形が煮崩れてしまいますので、注意してください。
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3.ここがポイント!
- 煮込んでいるうちに豚肉から脂肪が滲み出てきて、その脂と魚の味とが良く調和します。ですので豚肉は、薩摩黒豚や沖縄アグー豚など高価なものを使ってください。安い豚肉では、その独特の脂臭さのため、この料理がだいなしになってしまいます。また豚肉は必ず、脂身の多いロースの部分を購入してください。脂身ののりが少ない時は、豚肉を鍋に入れた後で、さらに食用油を加えてください。
- 豚肉と一緒に煮込む魚には、マダガスカルではティラピアや同系のマダガスカル産の淡水魚あるいはウナギがよく用いられます。日本ではティラピア(商品名 イズミダイ等)等の入手に難がありますので、鯉・アジなどの魚で代用してください。ただし、魚の肉の味が強すぎますと豚肉の脂身で魚を味わうと言うこの料理の妙味が薄れてしまいますので、白身の魚のほうが無難です。活きたウナギが入手できるようでしたら、ウナギを水洗いしぬめりを落としてから頭部と内臓を取り去り、ぶつ切りにして鍋に入れます。豚肉の脂とウナギの脂とが混ざり合い、絶妙の味となります。
- 鍋に入れる時魚は、豚肉の上に並べてください。皿に盛りつける時は、なるべく魚の姿形を崩さないように鍋から取り出し、豚肉は魚の下に敷くか、魚の周囲に盛ると、視覚的にも<美味しく>感じられます。
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この料理の名前ヘナンキスア・シ・トゥンドゥル(Henan-kisoa sy Trondro)とは、「豚肉と魚」の意味です。特にウナギを用いた時は、ヘナンキスア・シ・アマールナ(Henan-kisoa sy Amalona)、すなわち「豚肉とウナギ」と呼ばれます。中華料理や和食も異質な食材を組み合わせることに長けていますが、この料理の醍醐味はなんと言っても、「豚肉と魚」なる魚喰い民族の日本人にもいささか意表を突く素材の取り合わせにあります。ほんのり甘い豚の脂で魚をさっと揚げたような味わい、少しきつめに塩味をつけておけば、たいへんにご飯の食が進むおかずとなります。アンタナナリヴからフィアナランツアあるいはアンバトゥンドゥラザッカ(Ambatondrazaka)辺りの中央高地の家庭や食堂(ホテーリ hotely)で、食べる機会の多いおかずです。この料理、中央高地では珍しいものではありませんが、豚肉と魚、二つの素材を使い多少食材費がかかるため、家庭では日曜日や祭日あるいは来客時に供されることが多いようです。素材の組合せがどんな未体験の味を生み出すかの良い見本であるマダガスカル家庭料理の味に、日本でチャレンジしてみてください!
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