3月26日(月):5時目をさます 7時30分ネギと魚のみそ汁の朝食が運ばれてくるが、食べられず 体温36・8度 熱による不快感と圧迫感はなくなり、胃の気持ち悪さと全身の倦怠感だけが残る 11時30分みそ汁とご飯の昼食が運ばれてくる ようやくみそ汁の中にご飯を入れて胃の中に流し込む 12時脈拍75/分 室内にあった洗面台で歯を磨き、石鹸をぬって髭を剃る 終わると昨日と同様の貧血のような気分に襲われ、ベッドにひっくりかえる 3時森本さんと加瀬さんが手配してくれた薬局の女性が立ち寄り、キニマックスの注射を臀部に打ってくれる 昨日の医師よりもこの女性のほうが注射は上手い それでもこの注射は、しびれるような痛みが後に残る 女中さんに現金を渡し、コカコーラやソーダなどの清涼飲料水を買ってきてもらう 食欲はないものの、清涼飲料水等を飲むことはできるため、それによって水分とカロリーの補給を図る 5時体温36・5度 7時階下の食堂で船員さんや森次さん・田辺さん・加瀬さんたちと夕食 女中さんたちが肉入り雑炊を作ってくれたが、肉の臭いに拒絶的になっているため食べられず 代わりに、生のトマトをスライスしたものを次々と口に入れる アスピリンと経口ヴィタミンアンプル薬を服用 11時眠る
  3月27日(火):5時目を覚ます 6時30分朝食 ご飯とみそ汁 ご飯には全く手をつけず、みそ汁だけ半分食べる コーラをがぶ飲み 女中さんが熱の薬と言って生姜を煮出したお湯を持ってきてくれる 温水の風呂にいささかふらつくのを我慢しながら入り、身体を洗う 身体中の血の巡りがよくなったような心地よい気分 その後すぐに昼食 刺身・エビの丸焼き・フライドポテト・魚の煮付けなどの食事にも少しずつ箸をつけられるようになる 2時30分薬局の女性がキニマックスの注射を打ちに来てくれる 女中さんが生のオレンジジュースを持ってきてくれるが、これが素晴らしく美味しく感じられる 5時30分体温36・7度 7時すぎ夕食 コーラを飲みながら、刺身・牡蠣・焼き魚に手をつける まだ、肉の臭いに耐えられないため、食卓にあったル・マザーヴァ(マダガスカル風スープ)は一匙も口にしない 夕食後、宿舎内の船員さんたちと紅白歌合戦のヴィデオを見る アスピリンと経口ヴィタミンアンプル服用 11時眠る
  3月28日(水):5時30分目を覚ます 6時30分朝食 ご飯とみそ汁 ご飯を茶碗に半分とみそ汁を一杯食べる 7時体温36・6度 体温は平熱を維持しているものの、食欲は回復しない 胃が小さくなったような気がする コカコーラやソーダをがぶ飲みする状態が続く 12時10分薬局の女性が来て、最後のキニマックスの注射を打ってくれる 1時過ぎ昼食 刺身・茹でたエビ・野菜肉炒め・焼き肉 おかずだけをつっつく 昼寝するが寝汗をかく 6時30分夕食 里芋の煮付け・トマトサラダ・カボチャと牛肉のトマト煮込みのおかずに一渡り箸をつける アンタナナリヴから戻られた森本さんに「だいぶ元気になったね」と言われる 紅白歌合戦のヴィデオを見る 経口ヴィタミンアンプル薬を服用 11時30分眠る
  3月29日(木):5時30分目を覚ます 6時体温36・9度 脈拍80 注射が終わった今日からニヴァキンを毎日3錠5日間飲むことになる 6時30分朝食 みそ汁とご飯 今日はみそ汁を残して、ご飯を茶碗一杯平らげる まだ、みそ汁とご飯の二つともを食べきることはできない 12時20分昼食 焼き肉一枚とキュウリのサラダだけ食べる 1時30分風呂に入る 火曜日に比べれば、たちくらみのようなめまいを感じることもなく楽に入浴することができた 昼寝 4時30分体温37・6度 脈拍90 一本調子で熱が下がっていただけに、マラリアのしつこさに驚く 6時20分夕食 焼きエビ・牛タンのステーキ・里芋の煮付け・鶏肉と春雨のスープ・キュウリのサラダ それまで忌避していた油や脂の臭いを受けつけるようになり、牛タンを二枚それに春雨と鶏のスープまでをも口にする アンタイサカ族出身というガルデイアンのおじさんと10時すぎまで話をする ヴィタミンアンプル薬を服用 0時眠る
  3月30日(金):6時30分に起きる すぐ朝食 みそ汁の汁だけを飲み、ご飯に佃煮海苔とウニをかけて食べる コーヒーを飲む 7時30分体温36・7度 脈拍90 寝汗をかかなくなる 8時50分船員宿舎に投宿してからはじめて外出 マハビーブの市場と書店に行く 身体がふわふわするような感覚 11時前に宿舎に戻る 体温36・9度 脈拍89 12時昼食 カニの煮込み・茹でたエビ・牛肉と玉葱の炒め物・焼き魚 ご飯は少ししか食べられなかったが、おかずには全て箸をつける 昼食後ニヴァキン3錠とMP錠(サルファ剤とピリメサミンの合剤 医師の処方箋上はニヴァキンの服用だけであったが、自分で勝手に日本で入手していたMP錠を追加服用 副作用上危険な組み合わせのため、絶対にこのような異なる種類の抗マラリア剤の併用をしないこと ただし、パラドリンを毎日服用しながら一週間に一度クロロキン製剤を服用することは認められている)2錠を服用 昼寝 4時に目を覚まし検温37・1度 脈拍61 書店で買い求めた新聞を読む 7時30分から船員さんの歓送迎会のため、マハザンガ市内唯一の中華料理店からの仕出し料理の夕食 焼きそば・カニ卵・酢豚・モヤシと豚の炒め物・伊勢エビのサラダ・蛙のたつた揚げ・チャーハン 焼きそばと刺身を主として食べる まだ中華料理はいささか胃に重すぎる 1981年以来私を知っている機関長の方に「ずいぶん痩せたね」と言われる あらためて一週間前のことを想い出し、ぞっとする ヴィタミンアンプル薬服用 10時40分眠る
  3月31日(土):6時すぎ目を覚ます 体温36・8度 脈拍78 6時30分朝食 ご飯とみそ汁の双方を平らげる 11時30分昼食 ビフテキ・魚の唐揚げ・キャベツとトマトのサラダ・卵焼き 広間にあった文庫本の中から山本七平の『私の中の日本』を借りて読む ご飯を食べずに、ビフテキとサラダを食べる ようやく脂と油の臭い等に対する忌避感が薄れる 2時検温37度 脈拍79 ニヴァキン3錠とMP錠2錠を服用 5時45分再度検温37・3度 脈拍78 午後になると体温が上昇してくることに苛立ちを覚える 7時過ぎ夕食 キュウリとトマトのサラダ・魚の煮付け・焼きそば・肉とニンジンとインゲンの炒め物 とりわけサラダを好んで食べる 11時10分眠る
  4月 1日(日):6時目を覚ます 体温36・7度 脈拍79 このところ体温と脈拍は全く一定 しかし、早朝の体温としては若干高い上、午後から夕方にかけて37度代に上昇することを繰り返している 7時過ぎ朝食 ご飯とみそ汁 今日はご飯を残す なかなか、食欲が一定しない 今日は阿川弘之の文庫『米内光政』を読む 12時すぎ昼食 ビフテキ・ジャガイモとニンジンと玉葱の煮付け・魚の唐揚げ・キュウリのサラダ なんとかご飯を茶碗に一杯とおかずの双方を平らげる 食後入浴 お湯が熱くて身体が火照る 風呂からあがって検温37度 脈拍105 脈拍が早いのは、入浴のせいと思う4時体温36・9度 脈拍82 ニヴァキン3錠とMP錠2錠を服用 7時30分夕食 焼き魚・茹でたエビ・キュウリのサラダ・牛肉とアナマファーナのル・マザーヴァ ご飯とル・マザーヴァをなんとか平らげる 10時30分眠る
  4月 2日(月):6時30分目を覚ます 体温36・6度 脈拍73 7時朝食 ご飯とみそ汁の双方を平らげる 8時10分外出 タクシー・ブルースの発着所に行き、翌日のアンタナナリヴ行きの便の切符を買い求める バザーリ・ベをのぞき、マダガスカル航空の事務所に行き、帰りのアンツヒヒー行きの便を予約し切符を買う 9時過ぎに宿舎に戻る 12時昼食 ビフテキ・マグロとイカの刺身・ニンジンとジャガイモの煮付け 刺身を中心に食べる 食後昼寝 3時30分起きて検温37・1度 脈拍88 最後のニヴァキンとMP錠を服用 平熱より高いが、特に熱っぽさや気分の悪さを感じることはない 7時40分夕食 牛肉の串焼き・マグロとイカの刺身・イカと大根の煮付け・肉とカボチャとニンジンの煮付け・キュウリの塩もみ 自分でも驚くくらいこれらのおかずを食べる 11時眠る
  4月 3日(火):6時過ぎ目を覚ます 体温36・5度 脈拍80 7時朝食 ご飯・みそ汁・リンゴ・コーヒー  9時過ぎ外出 蒸し暑い上にひどく身体がだるい マハビーブの市場でアンタナナリヴの下宿先の家庭へのお土産にするためにカニを買う 20匹で1000FMG 9時45分に宿舎に戻る 12時昼食 キスの刺身・イカに煮付けなど しかし、今日は胃がむかむかしほとんど食べられず 3時過ぎにタクシー・ブルースの発着所に行く しかしながら、雨のため途中の道路状況が悪く、アンタナナリヴからの車がまだ到着していないため、出発は翌朝の午前5時とタクシー・ブルース会社から発表がある 再び宿舎に戻る 6時夕食 刺身・鶏の煮込み・茹でたカニ・カレー カレーを二皿食べる それでも全身の疲労感が強い 9時30分眠る
  4月 4日(水):午前1時30分までぐっすりと眠る その後は、蚊に襲われ眠ることができず 午前4時30分に宿舎を出て、徒歩で発着所に向かう 空には星が輝き、夜明け前の空気の冷たさが心地よい 予定よりも少し遅れて午前5時50分 プジョー504ステーションワゴンタイプのタクシー・ブルースは、アンタナナリヴに向けマハザンガの町を後にする
  1985年3月22日に日本に帰国 4月3日に群馬大学医学部寄生虫学教室の鈴木 守先生に直接お会いして採血して頂き、マラリア間接蛍光抗体法の検査を受ける 4月5日付けの診断書:「三日熱か卵形マラリアと断定 ×16という血清力価を得た場合、過去一年以内のマラリアとほぼ断定できると考えます」
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