2.5. 世帯員数
  ここでは平均世帯員数の推移を各村についてカーストごとに示し、3村を比較する形でまとめて手短に考察を加える

 

2.5.1 ネワール調査村(S村)

 

S村 平均世帯員数の推移グラフ

 

2.5.2 B村(バルパテ・ヒンドゥー)

B村 平均世帯員数の推移

 

2.5.3 G村(ミティラー)

G村 カースト別平均世帯員数の変化

 

 S村、B村、G村いずれもカーストによる平均世帯員数の差異はかなりの程度見られる。3村の中で比較的この面でのカースト差が少ないのはB村である。世帯員数の差異は(ここでは表やグラフの形では示さないが)カースト内にも存在する。たとえば、1970年S村では最も世帯員数の多かった世帯はジャプの1つの世帯で29人にのぼっていた。一方、同じカーストで最少の世帯員数は1人であった。

 全世帯についての平均世帯員数を3村で見てみると、S村では1970年から78年にかけて上昇し84年、96年にかけては下降の傾向を見せ、その結果として1970年の数値と1996年の数値との間にあまり差がなくなっている。20数年の間に人口変化や世帯数の変化があり、また平均世帯員数の変化もあったのであるが、後者はひとつの決まった傾向の変化の道をたどらなかったのである。

 B村では平均世帯員数は2時点間で上昇の傾向を見せている。また、G村では下降の傾向を見せる。しかし、S村の4時点でのデータからの考察に照らしてみれば、それらの傾向がこれからも同じ方向性を持って続くかどうかについては、保留が必要であるということになる。むしろそこで必要なのは、その時点時点での経済その他の様々な条件について個別に見ることであるが、それについては別のところで扱わなければならない。

 角度を変えて3村の全世帯についての平均世帯員数を比べてみると、B村、S村、G村の順で多いということは指摘できる。すなわち、平均的に見た場合に、世帯の大きさはB村で小さくG村で大きくS村では中間的であるといえる。ただし、これはあくまでも平均にとどまり、上でも指摘したように個々の世帯間の世帯規模の差は大きい。

 平均世帯員数のカースト差については、この節のグラフと人口のグラフの双方を見ればわかるように、人口の少ない(1〜2世帯しかない)特定のカーストにおいて高い平均世帯員数が示されている。このような数は、その1〜2世帯の個別の動きで大幅に変化する。典型的な例はS村のカウ(Kau)で、1984年〜1996年の間に世帯分割がなされたことにより急激に平均世帯員数が減少している。

 なお、S村の一時的居住者、B村の「その他」は、流入労働者であり、世帯規模はごく小さい。また、G村のブミハールは他村を主居住地とする地主の家族がG村内に大きな家を造り、土地の監督のために家族のひとりを住まわせていたものであるが、1996年にはすでにそのような居住の形ではなくなっており、無住の家があるのみであった。

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