<スンバワの民話> 前のお話 次のお話

ヤシの木ラナンマテの話

〜シロアリ長者の末路〜

スンバワ語テキスト提供:塩原朝子

 

あるところに,ラナンマテという男がいました。
ある日,ラナンマテは魚をとるための罠を仕掛けました。
普通,罠は川の中に仕掛けるものです。でも,変わり者のラナンマテは畑の中に仕掛けました。

翌朝,彼は仕掛けた罠の様子を見に行きました。すると,罠には,シロアリがいっぱい入っていました。
ラナンマテはそのシロアリを取って,袋に入れました。罠はシロアリに食われて台無しになってしまいましたが,代わりににシロアリを手に入れることができたわけです。

彼はシロアリをもって出かけることにしました。しばらく歩いていくと,人が鶏を飼っているところに着きました。彼はそこにシロアリの入った袋を置いて,ちょっと休みに行きました。

戻ってきてみると,なんと,シロアリは鶏に食べられてしまっていたのです。
彼は鶏の飼い主に弁償してくれるように言いました。
「おまえの鶏のせいで俺のシロアリが無くなってしまったのだから,鶏を一匹もらっていくぞ。」

鶏をもらって,彼はまた歩き出しました。
山をこえ,丘をこえ歩いて行くと,人が米を搗いているところに出くわしました。ラナンマテはそこに鶏を置かせてもらってひと休みすることにしました。
ところが,彼が休んでいる間に,鶏の上に米をつく棒が倒れてきて,鶏は死んでしまったのです。
それで,ラナンマテは米をつく棒を鶏の代わりにもらうことにしました。

彼はまた歩いて行きました。歩いて歩いて歩いて歩いて,疲れた彼は,今度は水牛がいる小屋に棒を預けてひと休みすることにしました。

戻ってきてみると,棒は水牛に踏まれて折れていました。
そこで,彼は水牛の持ち主に弁償を求めました。
「水牛が棒を追ってしまったのだから,俺は水牛を連れて行く」と。
「いいだろう」と持ち主は言って,水牛をくれました。

彼は水牛をつれて歩き出しました。歩いて歩いて,すっかりくたびれた頃に,彼はある村に到着しました。
そこには大きなナンカの木があって,よく熟れた実がたくさんなっていました。彼は,その木の下に水牛をつないで,ちょっと休みに行きました。

戻ってみると,水牛の上に大きなナンカの実が落ちて,水牛は死んでいました。
それで,彼は水牛のかわりにナンカの実をもらうことにしました。

彼は,ナンカの実を背負ってまた歩き出しました。
途中にある家がありました。七人の娘が住んでいる家でした。

彼はナンカを家の前に置いて,しばらくその場を離れました。
戻ってきてみると,なんと,ナンカの実は,その家の七人の娘に食べられてなくなっていました。

彼は弁償してくれるように言いました。
「おまえたちが俺のナンカを食べてしまった以上,かわりにお前たちを手に入れなければならない。」
それで,娘たちはラナンマテに付いて行きました。 七人とも彼のものになったのです。

娘たちは,ラナンマテに連れられて歩いて行きました。
歩いているうちに,川の側をとおりがかりました。ラナンマテは,そこにあった石の上に七人を座らせて,自分は用を足しにいくことにしました。

帰ってきてみると……七人の娘はいなくなっていました。逃げて行ったのです。

ラナンマテは娘たちが座っていた石を持って行くことになりました。

彼はその石を持って,もといた村に帰って行きました。

おしまい。

 


前のお話  ▲トップ▲   次のお話