<スンバワの民話> 前のお話

ヤシの木ミナちゃんの災難

スンバワ語テキスト提供:塩原朝子

 

むかし,ミナという名前の5歳の女の子がいました。
ミナの頭にはたくさんしらみがたかっていました。たくさんのしらみとたくさんのしらみの卵が頭にいたのです。
ミナのおかあさんは、毎日ミナに髪を梳くように言いました。
でも、ミナはいうことを聞きませんでした。くしで梳くとき、髪がひっぱられて痛いのがいやだったからです。

毎日毎日お母さんはミナに髪を梳くように言いました。でも、ミナはお母さんのいうことを聞こうとしませんでした。
「今はいいよ。後でね。痛いのがいやだから、今はいいよ。」
ミナはこんなふうに言って、おかあさんのいうことを聞こうとしませんでした。
来る日も来る日もおかあさんはミナに髪を梳くようにいいましたが、ミナは「今はいや。あとでやるよ」とばかり言っていました。

そんなふうだったので,おかあさんはお父さんにこんなことを言いました。
ミナが寝てしまってからのことです。
「ねえねえお父さん、いっそのことミナの髪を焼いちゃうのはどう?そうすれば、しらみは全部死んじゃうでしょ。ミナの頭に油をつけて、マッチで火をつけるのよ。髪が燃えてしらみは全部死んじゃうわ。」

髪を燃やしたら、ミナも焼け死んでしまいます。もちろんおかあさんがそんなことをするはずはありません。ふざけて言ってみただけです。

でも、しらみは、おかあさんの話を聞いて本気にしました。
「逃げよう。逃げよう。たいへんだ。ミナのおかあさんに焼かれてしまう。」
しらみは、いっせいに飛びたちました。
そのとき、なんと、ミナもしらみにつれられて飛んでいってしまったのです。ミナはたくさんのしらみに連れられて、大きな森の中に飛んでいきました。

しらみの飛んで行った先は、大蛇の住むほら穴でした。
大蛇は人間がやってきたのをみると言いました。「人間じゃないか。しかも、子どもじゃないか。こりゃ、蛇のごちそうにうってつけだ。」蛇はミナに近付いて、大きく大きく口をあけました。

ミナは叫びました。
「おとうさーん。おかあさーん。しらみにつれられて、ほら穴に来ちゃったよー。蛇に食べられちゃうよー。」

さて、ミナの家では、おとうさんとおかあさんが起き出して、ミナが寝床にいないことに気付きました。
二人はびっくりしてミナを探しに出かけました。
二人はミナを探して歩きに歩きました。丘をのぼり、丘を下り、けわしい山を超え、なだらかな山を超え、二人はミナを探して歩きました。
二つか三つ山を超えた頃でしょうか、子どもの叫ぶ声が聞こえました。

「おとうさーん。おかあさーん。蛇に食べられちゃうよー。しらみにこんなところに連れてこられちゃったよー。」

おとうさんとおかあさんは、あわててその叫び声の聞こえる方向へ走って行きました。

ちょうど蛇がミナを食べようとしているところに、二人はかけつけ、お父さんが蛇の頭を切り落とし,蛇は死にました。

二人はミナを連れ帰りました。

おかあさんはミナに言いました。
「ほら、わかったでしょ。だから、おかあさんは毎日しらみを取るようにいっていたのよ。それなのに、ミナちゃんは髪を梳くと痛いから、ってばかり言っていたわね。それでこんなひどい目にあったのよ。おかあさんの言うことを聞かなかったからよ。しらみに連れて行かれて、もう少しで蛇に食べられちゃうところだったじゃない。おかあさんとおとうさんが助けにいかなかったら、どうなっていたと思うの?
で、ミナちゃん、おかあさんのいうことを聞く気になった?」

「えーん。いうとおりにします。お願いだからしらみを取って下さい。
でも、どうすればあんまり痛くないように髪を梳くことができるの?」

おかあさんは、ミナに教えてあげました。
「まず、やしの油を髪に付けてからまっているところをほぐすのよ。そうすれば痛くないから。」
ミナはそのとおりにして、しらみを取ってもらいました。

これが「ミナちゃんのお話」でです。ミナちゃんはおかあさん、おとうさんの言うことを聞かなかったから、危うく蛇に食べられるところだったんですよ。

さ、鶏はつぶされた。おしまい。

 


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