<スマトラの昔話> 前のお話 次のお話

お腹がグー

 

一人の父なし子とその母親がいました。彼らは農民として生活をしていました。森の隣のある村に住んでいました。

ある日、子供はとてもお腹が空いてしまいました。子供は母親に「お腹がグーグー鳴ってるよ。もうお腹がぺったんこだよ。何か食べたいよ。」と言いました。

「もう少し待っててね。お母さんは先に畑の草刈をしてしまうから。」と母親は答えました。

母親が草刈を終えると、寝ていた子供は起きあがり、また母親にせがみました。「お腹がグーグー鳴ってる。もうお腹が空いたよ。ご飯をちょうだい!」

「その前に畑を焼いてしまうから、待っててね。」と母親はまた言いました。

体に力が入らなくなってきて、子供はまた眠り込みました。母親が畑の小枝や草を焼いて戻ってくると、子供も空腹で目を覚ましました。

「お腹がグーグー鳴ってる。お腹が空いてぺったんこだよ。何か食べたいよ。」と言って泣き出しました。

母親は答えました。「先に稲の苗を植えてきてしまうから待っててね。」

子供はまた眠ってしまいました。母親が田植えを終えて戻ってくると、子供は起きて泣きながらご飯をせがみました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。何か食べたい!」

またまた母親は答えました。「その前に草むしりをしてしまいたいから、待っててね。」

それを聞いて、子供はまた眠ってしまいました。しばらくして、子供は起きあがって泣き出しました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたいよ!」

「もう少し待っててね。稲がもう実ったから。」

子供はまた眠りました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたい。」

母親は答えました。「もう少し待っていなさい。私達の稲の穂先が黄色く色づいてきたから。」

子供はまた眠ってしまいました。だいぶ長いこと眠って、子供は目を覚まし、食べ物をせがみました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたい!」

またまた母親は答えました。「私達の稲がもう刈り時だから、先に稲刈りをしてきてしまうね。それまで待っててね。」

その約束を聞いて、子供はまたすぐに眠ってしまいました。突然子供は起きあがって、泣き出しました。

「お腹がお腹がグーグー鳴ってるよ。鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたいよ!」

「もう少し待ってね。お母さんは先に稲を脱穀してきてしまうからね。」

子供はまた眠ってしまいましたが、しばらくして目を覚ましました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたい!」

「もうちょっと待っててね。お母さんは先に籾をふるいにかけてくるね。」

子供は不安な気持ちでまた眠ってしまいました。お腹が空きすぎて、もう起きあがることもできませんでした。とてもお腹が空いてしまって、また泣き出しました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたい!」

母親は答えました。「待っててね。先に籾を干してくるね。」

子供はがっかりして、また眠ってしまいました。子供はまた起きて泣きました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたいよ!」

母親は答えました。「待っててね。先に籾殻をとってくるね。」

母親が、籾殻を取り去ってくると、子供の悲しそうなうめき声が聞こえてきました。「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたい!」

母親は答えました。「待っててね。先に米をふるいにかけてくるから。」

子供はまた眠ってしまいました。しばらくすると、子供はまた起きました。そして、泣き出しました。

「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたいよ!」

母親はすぐに答えました。「我慢しなさい。先にお米を洗うから。」

母親が米を洗ってくると、子供は泣いていました。「お腹がグーグー鳴ってるよ。お腹がぺったんこだよ。お腹が空いた。何か食べたい!」

「我慢しなさい。お母さんは先にご飯を炊いてしまうから。」

子供は、もう体もだいぶ力が入らなくなってきて、すぐに眠ってしまいました。しかし、しばらくすると起きて、泣きながら苦しそうな声でせがみました。

「お、お腹がグーグー鳴ってるよ。お、お、お腹、す、すいた。な、なにか、食べたい…。」

母親は答えました。「もう少しだからね。先にご飯をお皿に盛るね。」

しかし、子供がご飯を食べようと起きあがると、突然、お腹が「グー…」と鳴って、お腹が空きすぎて体の弱ってしまったその子供は死んでしまいました。

母親は子供に近寄りました。そして彼女は悲しくて泣きました。

 


前のお話  ▲トップ▲   次のお話