<スマトラの昔話> 前のお話 次のお話

つの坊や

 

ある村に、父親、母親そして娘の貧しい三人家族がありました。父親も母親も娘をとても可愛がっていました。しかし、両親は実はとても残念がっていたのです。なぜなら、彼らは男の子が欲しかったからです。彼らは毎日毎日、神様に自分達の血を引き継いでくれる男の子が生まれますようにと祈りつづけました。

何年も何年もたって、神様はようやく彼らの願いを受け入れてくれたのでした。彼らはそれは大喜びでした。しかし、彼らはまたすぐにがっかりしてしまいました。なぜなら、その男の子の頭には角があったからです。恥ずかしいだけではありません。彼らは、親戚や村の人々に馬鹿にされるのではないかと思うと、恐ろしく、また恥ずかしくもありました。

そこで、彼らは、その生まれたばかりの子供を捨ててしまうことにしました。彼らは赤ん坊を川に流しました。赤ん坊は、箱の中に1つの卵とカップ1杯の米と一緒に入れられて流されました。

そのことを知って、その赤ん坊の姉はとても悲しみました。彼女はこっそりと家を出て、川沿いに箱に入れられて流された弟を追いかけました。しばらく行くと、弟の泣く声が聞こえてきました。彼女は、弟の空腹感を癒そうと、歌を歌ってあやしました。「かわいい私の弟、長い角くん、泣かないで。お腹がすいたら、お米を一粒食べなさい。お腹がいっぱいになるように。」

何日か後、姉は、ひよこがピヨピヨ鳴いているのを聞きました。坊やと一緒に流された鶏の卵がかえったのです。そして、弟が泣き出すといつも、姉は愛情を込めて歌を歌って聞かせました。

その赤ん坊をのせた箱は何ヶ月も何ヶ月も川を流されて行きました。姉はなかなかその箱に追いつけませんでした。それでも彼女は、ずっとその箱を追いかけました。神のご加護があって、ついにその箱は川の流れに押されて川岸に到着しました。そして彼女はようやくその箱を捕まえることができました。

すると、なんと、箱のふたが開いて、顔立ちのよい、体格のがっしりした、頭に角のない少年が箱の中から飛び出したのでした。そして、彼の後ろには一羽の立派な雄鶏もついてきました。姉はどんなに喜んだことでしょう。彼女は神様に感謝しました。二人の兄弟は、すぐにその川岸から一番近い村を目指して歩き始めました。その村の門の前で、その村の人が彼らに話しかけました。その村の村長が、よそ者が村に入るには、まず、その村の鶏と闘鶏をしなければいけないと言っている、と言うのです。そして、村の鶏に勝てば、彼らは賞金を得ることができ、もし負けると、彼らはその村で奴隷にならなければいけないと言うのです。もし勝負をする勇気がなければ、その村に入ることはできません。二人の兄弟は、村の人々の挑戦を受けることにしました。そして、約束の日、二人の兄弟の鶏は、村民全員が見守るなか、闘鶏に挑みました。そして、兄弟の鶏は勝ちました。そのため、彼らは、村に入る許可を与えられ、村民らのもてなしを受け、そして、たくさんの財産を手に入れました。そして、彼らは別れを告げ、村を後にしました。

不思議なことに、別の村に入ろうとするたびに、彼らは同じ条件を突きつけられました。つまり彼らは自分達の鶏に闘鶏をさせなければいけなかったのです。しかし、運のいいことに、彼ら二人の鶏はいつも勝ちました。そして、その賞金のおかげで彼らは大金持ちになりました。

彼らはある村につき、そこで村民に、どこからやって来たのかと質問されました。そして、彼らは自分達の生い立ちを事実のまま話しました。

その話しを聞いて、その村民は、彼ら二人が何者なのか、分かりました。それから、長い角の子とその姉が莫大な財産をもって戻ってきたという噂が広まりました。

この知らせは両親の耳にも入りました。両親は、子供達を喜んで迎えようとしましたが、子供達はそれを断りました。

「私達には親なんてもういない。だって、私達が親の愛と保護を必要としているとき、親は私達を見捨てたのだから。」

両親は、自分達の犯した過ちに気づいて、とても悔やみました。それから、彼らは病気になり、死にました。

 


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