<スマトラの昔話> 前のお話 次のお話

「きれいな川」

〜魚になった兄妹〜

 

ある日、一人の未亡人が息子と娘と三人で、ある村で行われた感謝祭にでかけました。二人の子供はとても喜びました。二人ともかわいらしくきれいな服を着ました。彼らは、そこでおいしい食事と飲み物をごちそうになりました。その祭りには、たくさんの人が集まってきていました。その祭りは音楽や「ランダイ」などの見世物でとても盛り上がっていました。二人の子供は、そのにぎやかな方へ行ってもいいかと母親に聞きました。

「お母さん、ランダイとかの見世物を見に行きたい」と彼らは母親に言いました。

「いいよ。でも、あまり遠くへ行っちゃだめだよ。」と母親は言いました。

しかし、いたずらざかりの二人の子供はその見世物を見るだけでは満足しませんでした。そこで、二人はランダイに見飽きると、他の場所へ行きました。彼らは、楽しくて、母親に言われたことをすっかり忘れてしまいました。彼らは、水のとても澄んだ池を見つけると、ますます遊びに夢中になってしまいました。その日はとても暑かったので、彼らは池で水浴びをしようと思い、服を脱ぎ捨て、冷たい水に飛び込みました。彼らは魚のようにあちこち自由に泳ぎ回り楽しみました。

しばらくして、母親は子供達のことを思い出しました。子供達はまだ祭りの会場に戻ってきていませんでした。母親は心配になってきました。そして、あちこち探し回りましたが、子供は見つかりませんでした。

すでに日もだいぶ傾いてきましたが、それでも子供達はまだ見つかりません。母親は泣く泣く一人で家に帰ることにしました。彼女はずっと、愛する二人の我が子の運命を思っていました。彼女はとても疲れていたので、家に着くと、すぐに眠り込みました。

彼女は夢をみました。夢のなかで、一人のおばあさんが彼女に近寄ってきて「あんたの子供達は、昨日の祭りの場所からそれほど遠くないところにある池の住人になってしまったよ。もしも子供に会いたいのなら、米を一握り持っていって、池の中に投げてごらん。そしたら、子供達があんたを出迎えてくれるよ。」

彼女は、目が覚めると、一握りの米を持って、大急ぎでその池に行きました。彼女は池の岸に着くと、子供達の名前を呼びながら、その米を池に投げ込みました。しばらくすると、池の中から、大きくとてもきれいな魚が飛び出しました。同じ村の人たちもその池にやってきました。村の人々は、その可愛そうな母親を慰めようとしました。しかし、どんなに慰めても、母親の悲しみは消えませんでした。

その出来事のあと、その池の水はますますきれいに澄んできて、輝きを増しました。そして、その後、その村は、「きれいな川の村」と呼ばれるようになりました。この村は、アガム県のナガリ・バソの北側にあります。

 


前のお話  ▲トップ▲   次のお話