<ティモールの民話> 次のお話

ヤシの木ムササビとネズミ 

テキスト提供:小島恵子さん

ムササビとネズミが、散歩をしていると、じゃがいもが落ちていたので、拾い集めて、川で休みました。ムササビがいいました。

「じゃがいもを食べてから、マンディをしようよ」

「いけないよ。まず、マンディをしてからだよ」

と、ネズミがたしなめました。

二匹は走って水に飛び込むと、楽しそうに水をかけあいました。

「水の中にどれだけもぐっていられるか、競争しよう」とムササビがいいました。

「よし!」

ムササビは、ほんのちょっとしか水にもぐっていられません。ネズミは川の底までもぐると、じゃがいもの置いてあるところまで穴を掘って、じゃがいもを、皮だけ残して全部食べてしまいました。おなかいっぱいになって、ネズミは水から出てきました。

ムササビは、ネズミが死んでしまったのではないかと、いらいらして待っていました。

ネズミはおなかがすいているふりをして、「もうおなかペコペコだ。じゃがいもを食べようよ!」と、誘いました。

「そうしよう。ボクはもうくたびれた」

二匹が川からあがって、じゃがいものあるところに行ってみると、食べカスしか残っていませんでした。

「お前がみんな食べたんだろう。さっき、ずいぶんながく水にもぐっていたからな。掘ったばかりの穴もあるじゃないか」と、ムササビはどなりました。

「ボクのせいにするのか、よし!証拠をみせてやる。ボクを焼いてごらん。ボクが、じゃがいもを食べたんだったら死ぬ だろう。そうでなかったら、火の中からぶじに出てこられる」と、ねずみは、いばっていいました。

ムササビがまきを集めて、ネズミがそのまきを積みあげました。ネズミは、ムササビがまきを集めている間に、まきの下に、かくれる穴を堀りました。まきがたくさん集まると、ムササビは火をつけました。火がぼうぼうと燃え、消えかかったころ、ネズミは穴から出て来て、火の上で躍りました。

「今度は、お前の番だよ。ボクはどっちが正しいかを知りたいんだ」

ネズミは、たきぎを集めて、ムササビを焼いてしまいました。

ムササビは、穴が堀れなかったのです。

 


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