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ヤシの木ジャンデンさんの奥さん

 

ジャンデンという名の農家の息子がいました。父親はすでに年老いてしまい、母親も高齢に達していました。ジャンデンさんは一人っ子でした。本当は妹が一人いたのですが、その妹は10歳の時に死んでしまいました。畑でサルの一団に懲らしめられたからでした。

ジャンデンさんは勇敢な若者に成長して、かわいらしい女性に求婚をしました。彼女はかわいいだけではなくて、畑仕事をまじめにする人でした。そして、ひとなつこい性格なので多くの人に好かれていました。おかしなことに、サルもたびたび誘惑するようになりました。

ある日、ジャンデンさんの奥さんは一人で畑にいました。その畑は山の斜面 にあり、サルを含めたいろんな動物たちのすむジャングルから近いところにありました。その日、ジャンデンさんの奥さんが草むしりをしているところに、大きくて毛の長いサルが2匹やってきました。その2匹のサルはジャンデンさんの奥さんに近づいてきたので、奥さんは非常に驚いて怖くなりました。

「怖がらないで!」と片方のサルが言いました。ジャンデンさんの奥さんは、サルが人間と同じように話をするのを聞いてとても驚きました。

「あなたたちは誰なの? 悪魔なの? サルなの?」と奥さんはたずねました。

「私たちはあのジャングルのサルの遣いの者です。」と片方のサルが答えました。

「ここに何しに来たの?」と奥さんはまたたずねました。

「私たちはあなたにあのジャングルに住んで、私たちの女王になっていただこうと思ってきたのです。」と片方のサルが言いました。

「もしいやだと言うのなら、畑の作物を全部盗んでしまいますよ。」とそのサルが続けて言いました。

「では、約束してもらえませんか?」と奥さんは2匹の大きなサルの前で言いました。

「どんな約束でしょうか?」と片方のサルがたずねました。

「明日、ジャングルにいるサル全員で、お墓まで私を迎えに来てほしいのです。」と奥さんは知恵を働かせました。

「ということは、あなたの夫はすでに亡くなっているのですか?」と片方のサルがたずねました。

「ええそうです、彼はすでに亡くなっていて、明日埋葬するのです。あなたがたが私を手伝ってくれるといいのですが。」と奥さんは2匹のサルにうそをつきました。2匹のサルは喜びました、なぜならもはや彼らが怖がらせる相手はいないからでした。約束に同意すると、2匹のサルは森に戻っていき、ジャンデンさんの奥さんは村に戻っていきました。

村に戻ると、奥さんは畑で起こった事を話しました。そして、ジャンデンさんと奥さんはサルたちと戦うために計画を立てました。彼らは10匹の獰猛な犬を用意しました。翌朝、鶏が鳴くとすぐに、ジャンデンさんと奥さんと10匹の犬は畑に出かけました。

畑につくと、彼らはすぐに一本の大きなバナナの木を探しました。そのバナナの木をジャンデンさんの背丈の大きさに切って、家に持って帰り、死体のように寝かせました。偽の死体を布で包み、家の玄関の近くに横にした後、10匹の犬を家の天井裏に待機させました。ジャンデンさんも10匹の犬と一緒に、天井裏でなたと棒を手に待機していました。

ジャンデンさんと奥さんは、サルたちとの戦いの準備ができていました。そこに全く準備をしていないサルたちがやってくるのです。サルたちはジャンデンさんはすでに亡くなっていて、奥さんはジャングルの女王になってくれると思っていました。

その日、太陽が大地を照りつけ始めると、サルたちの一行はジャンデンさんの畑のすみにある木々に集まり始めました。サルたちが集まっているのを見ると、奥さんは家の扉を開けました。すると、奥さんはバナナの木でできている偽の死体に泣いているふりをしました。

「あぁ、ジャンデンさん、私の愛する夫。一体誰があなたを埋葬するのでしょうか?」と奥さんは泣き声まじりに言いました。その泣き声を聞いて、サルたちの一行は木から下りてきました。

「私たちが…、私たちがあなたのご主人を埋葬しましょう。」と一斉にサルたちが答えました。

「あぁ、ジャンデンさん、私の最愛の夫。一体誰が畑に塀を立ててくれるのでしょうか?」と奥さんは泣き声で続けました。

「私たちが…、私たちがあなたの畑に塀を立てましょう。」とジャンデンさんの家に近づいているサルたちは答えました。妊娠している一匹のサルを除いた他のサルたちはジャンデンさんの家に続いて入っていこうとしていました。その妊娠しているサルはやめるよう止めに入りましたが、誰も聞こうとしませんでした。

「あの家に行ってはいけないわ。あそこにはまだ生きている男がいるのよ。」と妊娠しているサルが言いました。

「あぁ、きみは歩けないんだね、木の下にいればいいよ。」と一匹のサルが言いました。

「あなたたち、ジャンデンさんの奥さんにだまされてるのよ。」と妊娠しているサルが言いました。サルの一行は考えを変えることなく、家に近づいていきました。ジャンデンさんの奥さんも泣くふりをして言いました。「あぁ、ジャンデンさん。一体誰が私と一緒に生きていってくれるのでしょうか?」

「私たちが…、私たちがあなたと一緒に生きていきましょう。」とサルたちは言って、ジャンデンさんの家に入っていきました。奥さんは偽の死体にずっと泣いているふりをしていました。

「あぁ、ジャンデンさん、勤勉な夫。一体誰が家の穴をふさぎ、戸を閉めてくれるのでしょうか?」

「私たちが…、私たちがこの家の穴をふさぎ、戸を閉めましょう。」サルたちが家の穴をふさぎ、戸を閉めながら言いました。サルたちが家の穴をふさぎ、戸を閉め終わるやいなや、奥さんは、サルたちへの攻撃を始める合図のせきをわざとしました。その合図があるとすぐに、ジャンデンさんはすぐさまサルと戦うために天井裏から10匹の獰猛な犬を放ちました。その10匹の犬を見ると、サルたちは家中を逃げ回りました。サルたちは困惑してしまいました。彼らは自分で家の戸を閉め、穴をふさいでしまったので、家から外へ出ることはできませんでした。天井裏に逃げるサルもいましたが、そこでは隠れていたジャンデンさんに一匹ずつたたかれてしまいました。

あっという間に、そのサルの一行は犬にかまれ、ジャンデンさんにたたかれて死んでしまいました。あの妊娠しているサルしかジャングルへ戻る事ができませんでした。その妊娠しているサルの存在のおかげで今日までサルが子孫を残すことができているのです。    

 


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