<フローレスの民話> 前のお話

ヤシの木天国の鳩ニニ・サリ

 

ある日あるところに、夫をなくしたおばあさんが畑にむかっていました。その畑の近くには、不思議な泉がありました。太陽がまだ高くて暑い頃、そのおばあさんが小屋で休んでいると、泉の方から少女たちの笑い声が聞こえてきました。これから起こる災いに恐れることなく、そのおばあさんは泉のそばに近づき、泉で泳いではしゃいでいる7人のかわいい少女たちを小高いところから覗き見していました。水浴びを終えると、7人の少女達は空を飛ぶ7羽の鳩に姿を変えて、青い空に姿を消しました。

その翌日、そのおばあさんは泉に急ぎました。藪でかくれた大きな石の後ろに身をかくしていると、やがて次々と7羽の鳩が飛んできました。泉につくと、7羽の鳩はかわいい女性に姿を変えて、泉で泳ぎに夢中になっていました。

おばあさんは一番小さい末っ子の少女にみとれてしまいました。偶然なことに、その翌日に末っ子の少女はおばあさんの隠れているところのそばに着るものを置いたのでした。7人の少女が泉で水遊びをしていると、おばあさんはそっと黙って末っ子の女の子の服を取ってしまいました。その末っ子の女の子は泉から出て、服を置いたところに行ったのですが見つけることはできませんでした。 あちこち探しましたが、見つけることができなかったので末っ子の女の子は泣き出してしまいました。

ちょうどその頃をみはからって、おばあさんが隠れていたところから姿をあらわして、末っ子の女の子に話しかけました。おばあさんは準備してきた一枚の布を差し出したのでした。二人はすわってそれぞれのことについて話をして、末っ子の女の子は話の終わりに、おばあさんに自分の素性や名前を黙っていてほしいとお願いしました。おばあさんが同意すると、二人は畑にある小屋に行って眠りました。

一方、Lagen Doniは5日間も自分の母親が家に戻らないのでとても心配していました。その次の日には、Lagen Doniは母親を探しに畑の近くの小屋に出かけました。女の子はおばあさんに言われてかくれていました。

「母さん、どうして家に帰ってこないの?」とLagen Doniは母親にたずねました。

「ここで母さんは私の選んだ女性といたのだよ」とおばあさんは答えました。

「何のために母さんはその女性と一緒にいるの?」

「お前の結婚相手を探すためだよ。母さんが死ぬ前に最後に母さんが選んだ人だよ」とおばあさんはまた答えました。おばあさんはLagen Doniに会わせるために女の子を呼びました。Lagen Doniはまるで夢の中かのように美しくて真面 目な少女を見つめていました。結局はりりしいLagen Doniも母親の選んだ人を受け入れたので、母親は一人っ子の息子が妻を持ったことに非常に喜びました。しかし、数ヶ月後たっても、Lagen Doniの妻となった女の子は妊娠の兆しを示しませんでした。その時、妻の素性を知りたいという気持ちが沸き起こったのでした。

ある日、ラガン・ドニがヤシの木の樹液を取っていると、木から落ちて気を失ってしまいました。命の望みは薄かったので、母親も妻も嘆き悲しみました。気を失った状態で、Lagen Doniは、「ねえ、世界の王のラガン・ドニ、あなたは天国の鳩のニニ・サリを置いて行ってはいけないわ!」と妻が嘆いているのを聞いてしまいました。

やがて、ラガン・ドニは目を覚ましました。妻と母親はすっかり回復するまで見守りました。気がついた後、ラガン・ドニはふざけて、「僕はもう君の素性とニニ・サリという君の名前を知ってるよ」と言ってしまいました。

その言葉を聞いて、ニニ・サリはひどく傷ついて、顔が真っ赤になりました。彼女はすぐにごみを燃やし?雲の中に身を投げ、天空へ飛び立っていってしまいました。ラガン・ドニがその事を母親に伝えると、母親は病気になって亡くなってしまいました。

愛する母親の遺体を埋葬したあと、ラガン・ドニは天国で妻を探すのに役に立つ不思議な能力が得られるように、両親のお墓にお祈りをしました。お祈りをしていると、両親は一番高い山の頂上を示してくれました。ラガン・ドニはそこへ行き、一本の木に登りました。それは非常に滑りやすい木でしたが、ついに彼は天国について、天国の少女たちが水汲みで使う泉で待っていました。

泉の近くに、一本のタマリンドの木がありました。その木に登って、そこから水汲みにやってくる少女たちを見ていると、その中に妻のニニ・サリがいました。その時、ニニ・サリは水を汲んでいました。ラガン・ドニはタマリンドの葉を彼女のつぼの中に落とし、次に宝石のついた指輪を落とすと、ニニ・サリは指輪を取り上げました。ラガン・ドニは下りていき、二人は再会しました。ニニ・サリはもはや自らの素性を隠すことはありませんでした。

ラガン・ドニを家に連れて行く前に、ニニ・サリは父親の課す試験や罰に対して忍耐強く向かい合うようにお願いしました。二人が家に着き、彼女の父親がラガン・ドニを見るやいなや、二人の執事に命令してラガン・ドニを牢屋へ連れて行かせました。しかし、ラガン・ドニはニニ・サリに言われたとおり、その挑戦に辛抱強く立ち向かいました。

その翌日、二人の執事はラガン・ドニを白い砂浜へ連れて行きました。そこには、砂のように滑らかな粟の入った7つの籠が用意されていて、その粟を砂浜にまいて、ラガン・ドニに籠の中に粟をもう一度入れるように命令しました。

「もしばらばらに散らばった粟を籠の中に入れられなかったら、お前はこの浜で死ぬ ことになるからな」と二人の執事は言い残して立ち去りました。ラガン・ドニは自らのさだめを思って悲しくなりました。

「おい、人間の子よ、どうしてお前は悲しいのだ?」とすずめの王がたずねるので、ラガン・ドニはすべて話をしました。すずめの王はすずめの仲間に命令して、散らばった粟をついばんで籠の中にいれるように言いました。夕方に執事たちがやって来たときには籠の中には粟が入っていました。ラガン・ドニはまた牢屋にもどされました。

またその翌日に、ラガン・ドニは海の真中へ連れて行かれました。そこに執事たちは数珠だま(ネックレスを作るときの修飾品のひとつ)を7つの袋から海へ投げ入れて、執事は陸へ戻って行きました。ラガン・ドニが困っていると、白鷺たちが助けにやってきました。夕方に執事たちがやって来た時には7つの袋には数珠だまが最初と同じように入っていました。彼はまた牢屋に戻ったのでした。

その翌日に、ラガン・ドニはケロコ・プケンの慣習に基づいた家を建てるために、ある場所へ連れて行かれました。その非常に困った状況に、ヤマアラシの王とその仲間達が彫刻を掘って、慣習の家を建てるのを手伝ってくれました。夕方に執事たちがやって来た頃には、慣習に基づいた美しい家が建っていました。ラガン・ドニはまた牢屋に戻されました。

その翌日は、ある真っ暗な建物に連れて行かれました。そこには夫婦が集まっていて、その中にニニ・サリもいて、ラガン・ドニはニニ・サリの手をつかむように言われ、もし人の妻の手をつかんだら殺されることになりました。その大変な状況に、ホタルたちが助けにきました。明かりがついたときには、ラガン・ドニがニニ・サリの手を握っていました。

次々とLagan Daniが課題を乗り越えて行き、最後には彼はニニ・サリと結婚する事ができました。一週間に及ぶ結婚式が終わった7日目の日、ニニ・サリは夫をケロコ・プケンの地へ案内しました。その地で、ニニ・サリは真面目に働き、機織では横に並ぶ人がいないくらいの腕前でした。

ある日、皮の色が美しい小さなヘビをニニ・サリが見つけました。そのヘビを集めて家にもって帰り、織物のモチーフとして真似て作るために目の前においていました。

日ごとにヘビは大きく、狂暴になり、人間の子どもを殺してしまいました。有名だったニニ・サリは、ケロコ・プケンの人達に悪口を言われるようになりました。ケロコ・プケンの人達はどんどん狂暴になるヘビを殺すために、呪術師を呼びました。ヘビの口に熱した槍を突き刺すと、恐ろしい声を響き渡らせて、ヘビは死にました。そのヘビの叫びと同時に大雨が降り、水がわきあがり、大きな波がケロコ・プケンの人々に押し寄せました。ケロコ・プケンは沈み、人々はあちこちへ逃げました。

 


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