<ジャワの民話> 次のお話

ヤシの木にわとり頭のタブー

テキスト提供:渡辺(岡崎)紀子さん

 

むかしのこと、ある日、バトワギ村で結婚式が行われました。スンダ社会の一般 的なしきたりにならって、「パベトット・ベトット・バカカ」の儀式も行われました。この儀式は次のように行われます。花嫁と花婿が並んで坐らされると、にわとりの丸焼きが与えられます。二人は一緒にその丸焼きをつかんで、お互いに引っぱりあい、二つに裂けると、それぞれ手にしていた部分を食べるのです。

この結婚式の最中に、花嫁の弟が旅から帰ってきました。花婿はまだ顔を知りませんでした。

パベトットの儀式の時、花婿は体の方をにぎり、花嫁はにわとりの頭の方をにぎっていました。

二人は食べ始めました。花嫁がにわとりの頭をかじった時です。中身がピュッと出て、花嫁の胸をよごしました。それを見ていたお客たちはどっと笑いました。花嫁は恥ずかしさで真ッ赤になり、うつむきました。

花嫁の弟がつと立ちあがって行って、自分のハンカチで花嫁の胸をふいてやりました。

花婿はそれを見てカッとなりました。自分の女房に慣れなれしくも手を触れる男がいるとは、と思ったのです。剣を抜くや、その図々しい男を刺すと、その場で花嫁の弟は死んでしまい、結婚式は大変な騒ぎとなりました。

この悲しい出来事が単なる誤解から起こったことはいうまでもありません。

この悲劇を二度と繰り返さないために、バトワギ村の老人たちは女性に、とりわけ若い娘たちに、にわとりの頭を食べることを禁じるようになったということです。

 


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