本基幹研究のメンバーを紹介します。

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深澤 秀夫

代表/教授

 飛鳥・奈良時代にインドネシアの島々から8000kmのインド洋の波涛を越えてマダガスカル島までやってきたオーストロネシア人、17世紀から18世紀に自由共和国をマダガスカル島に造ろうとしたヨーロッパの海賊たち、フランス革命前後の動乱のヨーロッパを巻き込みマダガスカル島の<王様>になろうとしたハンガリー人のベニョフスキー、19世紀博物学の世紀を体現する60巻の『マダガスカルの自然と政治と物質の歴史』を著したA.グランディディエール、 20世紀植民地期マダガスカルの平穏と退屈と孤独の中でマダガスカル人の詩歌の研究を行ったフランス人評論家J.ポーラン、同じく植民地期マダガスカルに生まれ過剰な言語能力と日常に潜む死の不条理と哀惜の彼方に自死した作家J.ラベアリヴェル、そんな人びとを育んできたマダガスカルの土地の上で繰り返される生と死の日常に惹かれ、30年近くの時が過ぎてゆきました。

〈主要業績〉
深澤秀夫(1986)「稲作を生きる、稲と稲作の実践と戦略:北部マダガスカルTsimihety族に於ける稲作と共同労働」『東南アジア研究』第26巻第4号,pp. 394-416.
深澤秀夫(2007)「家内的領域と公的領域の語られ方:北西部マダガスカルツィミヘティ族におけるムラの集会の会話資料の分析に基づいて」『アジア・アフリカ言語文化研究』第61号,pp. 1-50.
深澤秀夫(2011)「ラベアリヴェル 校正係の夢:作家に非ざる作家としての二〇世紀個体形成-」真島一郎編著『二○世紀<アフリカ>の個体形成:南北アメリカ・カリブ・アフリカからの問い』平凡社,2011年,pp. 675-708.

〈関連HP〉
個人ウェブサイト 

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石川 博樹

副代表/准教授

 私はソロモン朝エチオピア王国という13世紀にエチオピア高原に成立した王国の歴史研究を専門としています。ソロモン朝という名称は、君主たちがシェバの女王と古代イスラエル王国のソロモン王の間に生まれた息子の末裔と称したことに由来します。エチオピア高原には4世紀にキリスト教が伝わり、その後エチオピア教会という独自のキリスト教会が成立しますが、ソロモン朝エチオピア王国の住人の多くはその信徒でした。彼らはゲエズ文字(エチオピア文字)を用いて各種の文書を残しました。また16世紀から17世紀にかけてこの王国でローマ・カトリックの布教を試みたイエズス会士たちも多くの記録を著しています。これらの史料を用いて、未解明の問題が数多く残されていた16世紀から18世紀にかけてのソロモン朝エチオピア王国史の研究にこれまで取り組んできました。今後はエチオピア史の研究を続けつつ、サハラ以南アフリカ(アフリカ大陸の中でサハラ砂漠の南に位置する地域)の他の地域の歴史研究にも着手する予定です。

〈主要業績〉
石川博樹『ソロモン朝エチオピア王国の興亡:オロモ進出後の王国史の再検討』山川出版社,2009年.
石川博樹「イエズス会北部エチオピア布教:識字能力の観点から」川村信三編『超領域交流史の試み:ザビエルに続くパイオニアたち』上智大学出版会,2009年,pp. 182-204.
石川博樹「選択される過去:北部エチオピアのキリスト教徒の歴史認識」永原陽子編『生まれる歴史、創られる歴史―アジア・アフリカ史研究の最前線から』刀水書房,2011年,pp. 3-30.

〈関連HP〉
個人ウェブサイト
AA研共同利用・共同研究課題ウェブサイト

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椎野 若菜

准教授

 ケニアのヴィクトリア湖周辺に暮らすルオ(Luo)の人びとの村に、1995年から断続的に住み込んで人類学の調査をしています。修士課程の頃は葬送儀礼の調査、そして博士課程では一緒に暮らしていた寡婦たちが、夫亡きあと代理の夫をもつ「レヴィレート」の制度とどのように向き合い、組み込まれて、ある時は「使って」暮らしているのか、彼女らをとりまく複雑な人間関係などをつうじみてきました。またルオ社会のセクシュアリティ、ジェンダー、呪術、災因論、空間認識については細かなルオの「決まりごと」の内容と深くかかわり、生活の実践の場で繰り出されていますが、まだうまくその世界観が整理し描き切れていません。
 また、ルオの人びとが植民地化前後にどのように暮らし、居住形態や社会組織を変化させてきたのか、ということに関心があり、学際的研究に着手しました。ほかのテーマでも、フィールド、テーマを介して異分野の研究者とのコラボの可能性にも挑み始めたところです。
 いまや日本にいてもケニアの村と携帯がつながり、いつでもフィールドの家族や友人とのsmsのやりとりができるようになった現在。フィールドとの関係性、人類学のやり方も変わってきそうです。

〈主要業績〉
椎野若菜編『やもめぐらし:寡婦の文化人類学』明石書店,2007年.
椎野若菜『結婚と死をめぐる女の民族誌:ケニア・ルオ社会の寡婦が男を選ぶとき』世界思想社,2008年.
奥野克巳,竹ノ下祐二,椎野若菜共編『来るべき人類学シリーズ セックスの人類学』春風社,2009年.
椎野若菜編『「シングル」で生きる:人類学者のフィールドから』御茶の水書房,2010年.

〈関連HP〉
個人ウェブサイト

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苅谷 康太

助教

 これまで、アラビア語資料の分析を礎に、サハラ以南アフリカ北西部からサハラ沙漠西部、北アフリカ、そして西アジアへと広がる、イスラーム知識人達の知的連関網を研究してきました。北アフリカや西アジアは勿論ですが、サハラ沙漠西部やサハラ以南アフリカ北西部にも、現地の人々が書き残した大量のアラビア語文書群が存在しています。また、サハラ以南アフリカ北西部では、アラビア文字を使った現地語の書物も数多く著されてきました。今後も、こうした豊富な文字資料の分析から、西アフリカおよびその周辺地域のイスラームの諸側面を詳細に検討していこうと思っています。
 また同時に、サハラ以南アフリカ北西部の多様な現地信仰の体系にも関心を抱いており、上記のようなアラビア語および現地語の文字資料をこうした信仰体系の歴史的様相の把握に利用できないかと考えています。

〈主要業績〉
苅谷康太『イスラームの宗教的・知的連関網:アラビア語著作から読み解く西アフリカ』東京大学出版会,2012年.
Kota Kariya, "The Murid Order and Its 'Doctrine of Work'," Journal of Religion in Africa, Vol. 42, No. 1 (2012), pp. 54-75.  

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目黒 紀夫

研究機関研究員

 アフリカは、豊かな自然が残っていてたくさんの野生動物が大草原に暮らしている「野生の王国」。アフリカは、どの国も貧しくて人びとが援助を必要としている「暗黒大陸」。そんな両極端なイメージがもたれるアフリカでは、「コミュニティ主体」で野生動物を保全しながらそれを目玉とする観光業を発展させることで、環境保全と地域開発の両方を同時に達成することが最近ではめざされているらしい。
 私がケニア南部のサバンナに暮らすマサイの人たちのところで調査をしているのは、そこで取り組まれている「コミュニティ主体の(野生動物)保全」に興味を惹かれたからです。歴史的に野生動物と共存して暮らしてきて、今なお伝統文化を大切に守っているマサイの人たち。そんなマサイが自分たちの土地に保護区をつくり、野生動物を守りながら観光業をつうじて経済的な利益を挙げているというのです。
 これまでに私は、「コミュニティ主体」を掲げたプロジェクトが地域社会に正負両面の影響(金銭収入と獣害、地域発展と格差拡大、援助と抑圧など)をもたらしている現実を見てきました。また、そこにおける大きな問題として、地域の歴史や伝統文化、住民の生活や発展観を正しく理解しないままに、外部者が自分たちの理想とする「人間と野生動物の共存」を地域に押し付けていることがあることが分かってきました。
 今、マサイ社会は大きな変化のさなかにあります。伝統文化の変容、市場経済の流入、生計活動の変化、土地所有の変質などなど。ナショナル・グローバルなものごとの影響を受けるなかで、マサイ社会がこれからどういう方向に向かっていくのかを、これからより詳しく見ていきたいと思います。

〈主要業績〉
目黒紀夫『さまよえる共存とマサイ』新泉社,2014年(近刊).
目黒紀夫,岩井雪乃「『共存』再考:東アフリカ2地域社会における人間‐野生動物関係の分析から」『環境社会学研究』第19号,2013年,pp. 127-142.







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