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今月の一枚 2014年6月

こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。

(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

シンガポールのビルマ由来道路名

写真の道標に書かれたProme Roadという道路名は,ミャンマー特にヤンゴンを訪れたことのある人なら聞き覚えがあるものかもしれない。プロームはエーヤーワディー川を望むミャンマー中部の都市ピェーPyayの旧名であり,この名を冠したこの通りはヤンゴンの幹線道路の一つである。

しかしながら写真の光景はヤンゴンらしくもなければプロームらしくもない。それもそのはず,この写真はシンガポール中心街の北にあるバレスティアで撮ったものである。では道路名は単なる偶然かというとさにあらず,地下鉄ノヴェナ駅とバレスティア通りの間のエリアには,プローム通りを含めてビルマの地名に由来する道路名が少なからず存在するのだ。ノヴェナにある海南鶏飯の店をめざす途中で「バセイン通り」(エーヤーワディー管区の首都)という道標を見つけてびっくりし,食前食後とも探し続けたのだが,あるわあるわ。アキャブ(ラカイン州の州都シットウェーの旧名),マンダレー(ご存知ミャンマー第2の都市),ミンブー,マルタバン(貿易港として栄えた),ペグー(モン人の築いた古のハンターワディー王国の都),バモー(カチン州南部の都市の名前さえあるのには正直驚いた),モールメイン(モン州の州都)などなど。シャン(少数民族名)やイラワディ(エーヤーワディー川の旧名)なんてのもあった。(ついでながら,リトル・インディアにもBurmah Rd.という道路がある。綴りがなんともインド的である。)ここまで来ると,ラングーン(ヤンゴン)やパガンがないのがいっそ不思議である。

明らかに狙ってやったとしか思えない。そう思って調べてみると,ノヴェナには19世紀末に作られたビルマ仏教寺院が存在していた。この寺院と一連の道路名の間には何かつながりがあるに違いない。あるいはこの一帯はかつてビルマ人街だったのかもしれない。今やビルマ人らしい人影も見えず,ビルマ語の話し声も聞こえなかったのだけれど。

2013年11月26日
シンガポール,バレスティア地区プローム通り
澤田英夫 撮影

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