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今月の一枚 2013年12月

こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。

(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

レバノンの長いクリスマス

私がレバノンで定宿にしているホテルでは,12月に入るとエレベーター脇に大きなサンタクロースの人形が登場する。日本と同様にポインセチアと並び,きょろきょろした目と玉のような白髭が愛らしい。しかも彼の出番は日本のクリスマスよりもずっと長い。日本では25日を過ぎるとクリスマス飾りが慌ただしく片づけられ,正月飾りに場所を奪われるのに対して,このサンタクロースは少なくとも年明けの1月7日までは居場所を確保されるのだ。
どうして出番がそれほど長いのか。理由はレバノンの宗派構成にある。レバノンではキリスト教,イスラーム教それぞれの諸宗派を中心に,公認されたものだけで18宗派の人々が住んでいる。キリスト教のなかでも,ギリシャ正教やアルメニア教会などは,日本や欧米で普段用いられるグレゴリオ暦とは異なるユリウス暦に従い祭儀を行なうため,彼らにとってのクリスマスは,毎年おおよそ1月7日にやってくる。カトリックとプロテスタントのためのクリスマスが終わっても,他宗派のクリスマスが来るまで,サンタクロースはお役目が続くというわけだ。

クリスマス・イルミネーションが輝く街には,イスラーム教徒も多数居住している。ツリーを飾っている店員は,シーア派かもしれない。宗派対立をあおる過激派が勢いを増す昨今だが,こうした平凡な共存が続くことを願う。メリークリスマス。

2011年1月
メイフラワーホテルのクリスマス飾り
錦田愛子 撮影

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