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今月の一枚 2013年1月

こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。

(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

眺めのいいレストラン

中東や欧米で主食となるパンは,古来さまざまな形でその重要さがなぞらえられてきた。聖体拝領での「キリストの身体」としてのパン。イエスの奇跡によって増やされた5つのパン。日用の糧として実際に食されるパンの形にも,地方や集団によっていろいろある。ドゥルーズの作るパンは薄くて広く,カフェテーブルほどの大きさがある。エジプトのパンはアエーシと呼ばれ,ややくすんだ色に見える。一般に東地中海のアラブ世界で食べられるパンは,フブズという平たいパンだ。だがこれも焼きたてだと,中に蒸気がたまって丸く膨らみ,ふかふかの柔らかい食感になる

ベイルートの東側に広がる山の上のレストランでは,名物の羊の生肉料理と一緒にこの焼きたてパンが出てくる。木立やまばらな家屋の向こうに沈む夕陽を眺めながら,地酒のアラックとともに舌鼓を打つのは最高だ。だがこの場所も,内戦中など,空港から市内への道が危険だった時代には,抜け道に使われた経由地なのだという。食も場所も,避けようもなく人の歴史を刻む。 今年が穏やかで見通しのよい一年となることを願う。

2012年12月
レストラン「サフラ」のパン給仕
錦田愛子 撮影

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