こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。
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パレスチナの春は美しい。雨季の終わりに気温が上がり始めると,地中に眠っていた草花の種や,木々の枝の芽がいっせいに目を覚ます。ポピーやタンポポ,菜の花など色鮮やかな花の絨毯が広がるのも楽しいが,日本人にとってなんと言ってもうれしいのはアーモンドの花だ。これが非常に桜に似ている。うっすらとしたピンク色や5枚の花びらは日本のソメイヨシノを思い出させる。
私がその光景に出くわしたのは,パレスチナの北部でイスラエルが建設を続ける境界線の分離壁を見に行った帰り道だった。なだらかに下る丘一面に咲き広がるアーモンド。緑の絨毯に綿を転がしたような景色が,穏やかな陽気の中でまどろんでいる。人間が土地を奪い囲い込むために作る壁や,争いなどにはお構いなしの,自然の生命力がそこには溢れていた。
2006年2月
パレスチナ北部アラカ村の春
錦田愛子 撮影
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