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今月の一枚 2010年10月

こちらにはひと月に一度,AA研スタッフや共同研究員がフィールド調査の際に撮った写真を載せています。

(写真の著作権は撮影者にあります。無断・無許可でのご使用は固くお断りします。)

エルサレムの青い花

お気に入りの花がある。青い花びらがしなやかに伸びた茎の先に星型に広がり、そよ風にゆらゆらと揺れる。藤色と空の青さを足したような爽やかな色合いは、夏の暑さをしばし忘れさせてくれる。私がこの花に初めて出会ったのは、エルサレムだった。宗教と歴史、文化の中心地をなす旧市街のダマスカス門近くで、優雅な青い花は城壁を取り囲むように低潅木の茂みを作っていた。早朝の朝靄の中にけぶる花びらは幻想的な印象すら受ける。気候が合わないせいか、日本では滅多にお目にかかれないこの花は、以来私にとってエルサレムの記憶の一部である。

今年の夏、学会報告のため訪れたスペインで、私はこの花とばったり出くわすことになった。意外な場所での古い「友人」との再会のようだ。しかし考えてみれば「好きな花」と言いながら、名前も知らないことに気づいた。写真をもとに調べてみたところ、どうやらイソマツ科のルリマツリという植物らしい。南アフリカが原産で、地中海沿岸にも多く植生する。海と陸を挟んで咲き誇る涼やかな花。もしかしてガウディもお気に入りだったかもしれない。

バルセロナで撮ったルリマツリ
2010年8月
錦田愛子撮影

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