「アラビア、東南アジア、インド洋−ハドラマウト出身移民の活動から」
本発表では主に南アラビアのハドラマウト地方から東南アジアへ移民したアラブの歴史と、彼らが移住先とハドラマウト双方に与えた影響を写真を交えながら説明し、この分野の研究を行う際に遭遇する史料の問題を論じた。ハドラマウトは中東の中でも「周縁」と位置づけられており、歴史史料も少ない。特に報告者が研究している家系史では、主な「史料」はマナーキブと呼ばれる聖者伝である。この、史料と呼ぶには微妙な、しかし捨ててしまうにはあまりにも惜しい文書を歴史研究にどのように役立てるのかという問題を提示し、史料と真摯に向き合うこと、「自分の」史料と呼ぶべきものを持つことの重要さを強調した。