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研究セミナー >> 2005年度感想・報告 >> 宇野陽子
2005(平成17)年度 後期
宇野陽子(津田塾大学大学院国際関係学研究科)
 このたび参加させていただいた研究セミナーは実に興味深く、かつ実り多いものだった。特に私の場合は、主催者の先生方のお取り計らいで東京外国語大学の新井政美先生が座長として足を運んでくださった。未熟な報告を補って余りある有益なコメントをいただくことができ、他の参加者に対していささかばつが悪く感じられたほどに、いわば「得をした」ような気さえした。お越しくださった新井先生、及び新井先生の招聘に労をおとりくださった先生方や事務担当の村上さんに、まずは心からお礼を申し上げたい。

  さて、研究セミナーに参加を決めた第一の目的は、やはり複数の中東・イスラームの専門家からのコメントをいただけるということだった。少なからぬ院生が同様の状況に置かれていると思うが、私もまた日常的に中東・イスラーム関係者に囲まれて研究生活を送っているわけではない。そのため研究セミナーは、複数の専門家から一度にコメントをいただくまたとないチャンスと思えた。参加してみて、やはり専門家からのコメントで気付くに至った多くの研究上の収穫や、思い込みを正された箇所があった。これらはぜひ今後の研究に生かしていかなければと思う。

  しかし、そうした研究上の発見のほかに、「研究セミナー」というユニークな場ならではの収穫が多くあったと思う。以下、特に有意義と思われた点を列挙する。

1)プレゼンテーション
  プレゼンについて非常に実践的な指導があり、参考になった。一般に研究会や学会ではプレゼン方法の良し悪しまでは踏み込まれないと思うが、「セミナー」という教育も兼ねた場の性質が活きていると感じた。また、1時間という報告時間は、フロアも集中力を保って聞くことができ、報告者もきちんと内容を伝えることができるという点で適切と思われた。一度にこれだけ連続して1時間単位の報告を複数聞くことも珍しいが、そのことでプレゼンを比較することができ、他の参加者のプレゼンにおける良い点や改善点などから自分なりに吸収できたのも大きかった。

2)フロアの一員として
  うかつな質問はできないという緊張感もあったが、一方でざっくばらんな雰囲気が生まれる場面もあり、全体としては適切な規模だった。そうした緊張と弛緩が混在する雰囲気で、いわば「質問の練習」のようなことができたのは思いがけない収穫だった。また、全体的に非常に議論が盛んで、参加者に恵まれたように思う。

3)身近になった(ような気がした)博論
  研究員の新井和広氏の博士号論文執筆談をうかがえたのは大変得がたい経験だった。「ような気がした」と書かねばならないのは、もちろん自分の研究の進展から考えると現実的には身近でないせいである。しかし比較的近しく感じられる先輩の生活感あふれるお話から、大きな勇気をもらえたように思う。新井氏には心から感謝申し上げたい。

最後に蛇足ながら今後の改善点として愚案を付け加えたい。

  参加者のテーマはそれぞれ全く異なる種類のものであり、それも専門的である。そのためコメンテーターの存在があれば、議論がもっとスムーズに行くのではと感じられたことがあった。私の場合は冒頭に述べたように座長の新井先生がコメンテーターの役割も果たしてくださり、その結果益するところが大変大きかった。そこで、全く同じ分野でなくても、ディシプリン・時代・地域のいずれかが共通するAA研関係者にお願いすることはできないだろうかと思われた。

  ところで、正直なところ、私は研究セミナーへの参加をかなり迷っていた。自分はまだ研究セミナーに参加する段階に達していないのでは、という気持ちからである。しかし今は、未熟さを晒した感はあるがやはり参加してよかったと思う。次回のセミナーへの参加を迷っている方には、躊躇を振り切って参加されることをお勧めしたい。必ず大きな収穫があるはずである。
 

 

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