正しく、早く、広く、そして永く-「文字を伝える」ために、さまざまな試みが続いています。印刷、活字、電子写植、ワープロソフトと形を変えて、文字は「書く」だけでなく「入力する」ものにもなっています。文字を簡便に入力して文書を作成する機械として「タイプライター」が誕生したのは、19世紀末と言われています。
 いわゆる「欧文タイプライター」に続いて、日本を含むアジアの諸文字を入力するためのタイプライターも作られましたが、ワープロ専用機とパソコン・プリンターの普及により、それらは短い活躍時期を終えました。しかし、欧文タイプライターのキー配列が現在のキーボード配列に繋がるように、アジア諸文字のタイプライターも、文字入力システムなどの開発に影響を与えています。
 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所既形成拠点GICAS(アジア書字コーパス拠点)は、アジアの貴重な文献・書籍の収集に努めるだけでなく、文字に関わる資料も収蔵・整備してきました。本企画展「アジア諸文字のタイプライター」では、GICASが所蔵する、インド系をはじめとしたアジアの各種文字を入力するためのタイプライターを紹介します。さまざまな言語・文字に溢れたアジア世界の一端を知っていただければ幸いです。

 最後になりましたが、開催にあたり貴重な資料をご出品くださったご所蔵先をはじめ、展示会の実現にご尽力いただきました皆さまに深く感謝申し上げます。


2015年10月
アジア・アフリカ言語文化研究所 所長 飯塚 正人
既形成拠点GICAS 代表 荒川 慎太郎