日本で作ろう!マダガスカル料理 第14回 ル・マザーヴァ(Ro mazava)の巻 その三
アクー・ルーニ(Akoho Rony) |
『マダガスカル研究懇談会会報 Serasera』第18号 pp.19-20. 所収
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1.用意するもの(4人分くらい)
- 鶏の胸肉やもも肉 500gから700g
- 生姜 一個
- 玉葱 四分の一 または 浅葱 一束
- トマト 一個
- 塩 少々
- 包丁
- 鍋
- 水
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2.料理方法
- 洗ったトマトを半分に切り、へたを包丁で取り除きます。その後トマトをもう一度縦に切り、指で中の種子の部分を掻き出します。へたと種子を取り除いた皮付きのトマトを、包丁で切り分けます。
- 生姜の皮を剥き、薄目にスライスします。
- 次ぎに、浅葱を洗って、みじん切りにします。あるいは玉葱を一個また半分、皮を剥いてから、みじん切りにします。浅葱と玉葱、双方を入れても構いません。
- 鶏肉を大きめのぶつ切りにします。
- 鍋にたっぷり水を入れ、そこに、鶏肉、生姜、トマト、玉葱または浅葱を加え、鍋に蓋をして加熱します。
- 煮立つまでは強火、煮立ったら中火に弱めます。塩を加え、味を整えます。
- 鶏肉に火がよく通って生臭さが消え、チキン・ブイヨンのような匂いになったら火を止めます。
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3.ここがポイント!
- ニワトリの肉からしみ出るスープの味を賞味するわけですから、鶏肉の善し悪しが全てです。マダガスカルの市場で生きたまま売られているニワトリでしたら問題はありませんが、日本ではいささか高価でも、名古屋コーチンや比内鳥などいわゆる<地鶏>と呼ばれるものの肉を購う必要があります。マダガスカルで家庭やホテーリで出される、アクー・ルーニには骨付きの大きな塊の鶏肉が入っていますが、日本の<地鶏>の肉は高価なため、ぶつ切りくらいで我慢するしかありません。もし、骨付きの鶏肉を入手できるのでしたら、それを用いる方が、味が良くなります。
- このル・マザーヴァに必須の材料は、水と塩と鶏肉と生姜です。トマト、玉葱、浅葱は、入れなくても構いません。トマト、玉葱、浅葱を加える場合には、鶏肉本来の味の邪魔をしないよう、入れすぎに気をつけてください。
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アクー・ルーニとは、「ニワトリのスープ」くらいの意味です。マダガスカル人自身が、「一番簡単な、誰にでもできる料理」と言うのが、このアクー・ルーニです。肉と塩と水からできる点では、この連載の第一回でご紹介したヘナ・リチャ(hena ritra)もシンプルですが、焦がさずに煮汁を煮とばすためにはいささかの時間と技術が必要です。それに対し、水たっぷりのアクー・ルーニの場合には、中火で煮込むこと30分くらいですから、さらに簡単です。このアクー・ルーニはその手軽さおよびマダガスカル人のほとんどの人がニワトリの肉を食べることができ、またマダガスカルのどの地方でもニワトリを飼育している点から、現地食堂ホテーリ(hotely)の定番メニューの一つです。タクシ・ブルースが良く通る街道沿いのホテーリならまだしも、本当に田舎のホテーリにはこのアクー・ルーニくらいしかおかずが無い場合がままあります。またアクー・ルーニは、そこいらへんのニワトリを捕まえてきて捌いて煮れば良いだけですし、ニワトリ以外に必要な材料ときたらどこの家庭に何時でもある塩と水それに生姜くらいですから、急な来客時の家庭におけるこれまた定番メニューでもあります。マダガスカルの農村に行けば何処でもニワトリを飼育しています。貴重な財産でありまた神や祖先に対する供犠獣である牛と異なり、ニワトリは食べる目的のためだけにも殺します。とは言え、農村でニワトリを殺すのは、お祭りの時かさもなくば大事なお客さんが来た時です。とりわけ、偉い人や目上の人や敬うべき人にニワトリ料理を出す際には、地域によって差がありますが、もも肉か以前Q&Aで問題とされたぼんじりの部分tsingimbodyを、選んで皿に載せます。ですから、マダガスカルの農村を突然訪れた際に、このアクー・ルーニがおかずとして出され、もも肉ないしぼんじりの肉を主人からことさらに勧められた場合には、みなさなんは大事なお客さんとして扱われているものと思って頂いて構いません。
マダガスカルのお客をもてなす手軽な家庭の味に挑戦してみてください!
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