日本で作ろう!マダガスカル料理 第13回
ラサーリ(lasary)の巻 その一
ラサーリ・ヴアタビア(lasary voatabia)と
ラサーリ・キャロッティ(lasary karaoty)
『Serasera』第16号 pp.8-10 掲載
1.用意するもの(4人から6人分)
 
 ラサーリ・ヴアタビア
  1. 完熟トマト 4個から5個
  2. 浅葱    1束
  3. 玉葱    四分の一
  4. 塩     少々
  5. ボール
  6. 包丁
 ラサーリ・キャロッティ
  1. ニンジン  4本から5本
  2. 完熟トマト 1個
  3. 玉葱    半分
  4. レモン   1個から2個
  5. 塩     少々
  6. 包丁
  7. レモン絞り器
  8. 線状剥き器
  9. ボール・器
2.料理方法

 [ラサーリ・ヴアタビア]
  1. 洗ったトマトを半分に切り、へたを包丁で取り除きます。その後トマトをもう一度縦に切り、指で中の種子の部分を掻き出します。へたと種子を取り除いた皮付きのトマトを、包丁で細かく刻んでゆきます。ペースト状になるくらい細かく刻んだほうが、味が良いようです。
  2. 次ぎに、浅葱を洗って、みじん切りにします。
  3. 玉葱を一個の四分の一、皮を剥いてから、みじん切りにします。
  4. トマトをボールないし器に入れ、そこにさらにみじん切りにした浅葱と玉葱を加えます。
  5. 少し塩をふってから、匙でトマトと浅葱と玉葱がよく馴染むようにかき混ぜます。
 [ラサーリ・キャロッティ]
  1. 洗ったニンジンの皮を剥きます。それから、線状剥き器でニンジンをこそぎとるように剥き、ニンジンを細い線状にします。
  2. 玉葱の皮を剥き、みじん切りにします。玉葱の刺激臭の強い時は、みじん切りにした後で笊に入れ、軽く水で洗ってください。
  3. 洗ったトマトのへたと種子を取り除き、少し細かく切り分けます。
  4. ニンジンを器かボールに盛り、みじん切りにした玉葱と細かく切ったトマトを加えます。
  5. そこに軽く塩をふり、絞ったレモン汁をかけ、よくかき混ぜます。
3.ここがポイント!

 [ラサーリ・ヴアタビア]

 トマトの甘みが生命ですから、完熟トマトを選ぶように心がけてください。できあがったラサーリの味が水っぽくなりますので、トマトの種子は取り去ってください。ペースト状に細かく刻むのが面倒ならば、キャラメルくらいの大きさにざくざく切っても構いません。皮と実の間にトマトのうま味が凝縮されていますので、皮は湯剥きしないでください。

 [ラサーリ・キャロッティ]

 これもニンジンの味が生命ですので、なるべく良質のニンジンを選ぶよう心がけてください。それから、日本製の線状剥き器は刃が鋭利な上、皮を剥いたニンジンは滑りやすいため、指をけがしないよう十分に注意してください。
 ヴアタビア(voatabia)はトマトを、キャロッティ(karaoty)はニンジンを、意味します。一方ラサーリ(lasary)と言う単語は、フランス語のアシャール(achard)に由来します。アシャールは、フランス語の大辞典かフランス料理事典にしか記載されていませんが、「酢に漬け油で保存した、たいへんに香辛料の効いた、果物や野菜の薄切りの薬味ないし香味料」(Le Grand Robert de la Langue Française, 1985)、あるいは「トウガラシ、サフランなどを混ぜ、塩を加えたレモンあるいは酢に漬けた、ないしマリネにした野菜や果物から成る薬味の総称、インドで用いられる」(Trésor de la Langue Francaise, 1971)などと説明されています。これら辞典の説明によれば、ラサーリの起源はインド料理にあることになりますが、いつ頃マダガスカルの料理に組み込まれたのかは、はっきりしていません。1835年に出版されたダヴィッド・ジョーンズの『英語−マダガスカル語辞典・マダガスカル語−英語辞典』にラサーリの語が採取されていない一方、1888年に出版されたマルザックの『フランス語−マダガスカル語辞典』には、その語源が「クレオール語のles achards」にあることが示されていますので、この時代から人の行き来の活発化したモーリシャスないしレユニオンのクレオール料理から持ち込まれたものかもしれません。ちなみに、モーリシャスとレユニオンの料理の本には、クレオール料理の項に、アシャールの作り方が必ずと言ってよいほどに載っています。マダガスカル料理のラサーリは、そのお手本となったインド料理やクレオール料理のアシャールと異なり、ほとんど油を使いません。そのため、この連載で既に紹介したヘナ・リチャをはじめ肉料理のつけ合わせとして良く出され、またそれが肉の脂っこさを打ち消してくれるため、食が進みます。その上作り方は、とても簡単です。トマトと浅葱、日本でもお馴染みの食材ですが、その二つを組み合わせると、そこには未知のラサーリの味の世界が広がりますから不思議です。ラサーリ・ヴアタビアは、ルガイ・ ヴアタビア(rougail voatabia)と呼ばれることもあります。ルガイも、モーリシャスやレユニオンのクレオール料理に由来する名称で、「肉や魚を、生姜、玉葱、トウガラシ、トマトのソースで煮たもの」(Le Grand Robert de La Langue Francaise, ibid.)を指します。また市場では、トウガラシ、玉葱、生姜、マンゴー、レモンなど瓶に入ったさまざまな酢漬けのラサーリも売られています。『Serasera』の誌上では、マダガスカルの家庭でご飯とおかずのつけ合わせとして良く作られているラサーリ四品を、紹介します。今回はトマトのラサーリとニンジンのラサーリでしたので、次ぎの機会にはキュウリのラサーリとパパイヤのラサーリを作ります。

 マダガスカルの香の物あるいはお新香とも言うべき手軽な家庭の味、ラサーリに挑戦してみてください!
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