日本で作ろう!マダガスカル料理 第15回 ラサーリ(lasary)の巻 その二
ラサーリ・ココンブル(lasary concombre)と
ラサーリ・マパーザ(lasary mapaza) |
『マダガスカル研究懇談会会報 Serasera』第19号 pp.15-17. 所収
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1.用意するもの(4人分から6人分くらい)
ラサーリ・ココンブル
- 白瓜 2本から3本
- ミニ・トマト 4個から8個くらい
- レモン 1個
- 塩 少々
- ボール
- 包丁
- レモン絞り器
ラサーリ・マパーザ
- 生パパイアの実 1個から2個
- ミニ・トマト 4個から8個くらい
- 玉葱 半分
- レモン 1個
- 塩 少々
- 包丁
- レモン絞り器
- 線状剥き器
- ボール・器
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2.料理方法
[ラサーリ・ココンブル]
- 洗った白瓜の皮を剥いてから、半分に切ります。種子を取り除いてからさらにそれを、輪切りにします。厚いと口の中での食感が良くありませんので、舌で輪切りを曲げることができるくらい、薄めに切ります。
- ミニ・トマトを洗い、指で押しつぶすようにして中の種子を取り出してから、二つに切ります。
- レモンを絞り器で絞り、レモン汁を作ります。
- 切った白瓜とミニ・トマトをボールないし器に入れ、そこに軽く塩をふってから、レモン汁を加え、全体がよく馴染むようにかき混ぜます。
[ラサーリ・マパーザ]
- 生のパパイアを洗ってから、縦に四つに割り、中の種子を匙などで掻き取ります。その後、線状剥き器でパパイアの果肉をこそぎとるように剥き、細い線状にします。
- 玉葱の皮を剥き、みじん切りにします。玉葱の刺激臭の強い時は、みじん切りにした後で笊に入れ、軽く水で洗ってください。
- 洗ったミニ・トマトを、指で押しつぶすようにして種子を取り出してから、二つに切ります。
- レモンを絞り器で絞り、レモン汁を作ります。
- 線状にしたパパイアとトマトそれにみじん切りの玉葱をボールなどに入れ、軽く塩をふってから、レモン汁を加え、よくかき混ぜます。
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3.ここがポイント!
[ラサーリ・ココンブル]
白瓜が日本で店頭に出回るのは、初夏から夏です。白瓜は、姿形が良くてみずみずしく、固いものを選んでください。白瓜の中には、時折へたの辺りに苦みのあるものありますので、皮を剥く時に、へたから数センチを切り落としてください。
[ラサーリ・マパーザ]
パパイアは、沖縄料理の普及と共に、本土でも生のものが入手できるようになってきました。このため売られているパパイアの実は緑色の未熟なものが多く、炒めものや漬け物に使う沖縄料理ではそれで構いませんが、生で食べるマダガスカル料理の場合には、全く未熟なものよりも、少し色づいてきたくらいのものの方が、味もまた食感も良いようです。買ってきたパパイアがまだ緑一色の場合には、少し色づくまで室温でしばらく放置してください。17号でお伝えしたラサーリ・キャロッティを作る時と同様、日本製の線状剥き器は刃が鋭利な上、パパイアは滑りやすいため、線状に剥く際には指をけがしないよう十分に注意してください。
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ココンブル(concombre)はフランス語で<キュウリ>を、マパーザ(mapaza)はマジュンガ州からディエゴ・スアレス州地方の方言で、パパイアを意味します。一方ラサーリ(lasary)と言う単語は、既に17号で説明したように、酢漬けなどの薬味を総称するフランス語のアシャール(achard)が、マダガスカル語に訛音したものです。
日本の仏和典でconcombreをひくと、確かに<キュウリ>とありますが、ではconcombreが胡瓜かと言うと、いささか違和感があります。試しに、日本に普通売られている胡瓜を使って、このラサーリ・ココンブルを作ってみてください。できあがったものの味は、マダガスカルのラサーリとは似て非なるものとなってしまいます。マダガスカルで売られている<キュウリ>は、見かけもずんぐりとしている上色も薄緑で、日本の細長くて緑色の胡瓜とはだいぶ違います。日本で売られている野菜の中で、このココンブルに一番近い味のものは、胡瓜ではなく白瓜になります。マダガスカルのココンブルにもよく見ると表面にわずかにいぼいぼがありますが、色も形も胡瓜よりは白瓜に似ていると言えるでしょう。2006年7月に東京の駒沢にオープンしたマダガスカル料理も提供してくれるイタリア料理のエリック・ピエールさんのお店でも、この白瓜を使ったラサーリ・ココンブルを、マダガスカル料理の定番のように付け合わせないし前菜として出しています。ココンブルは、マジュンガ州などでは一年中出回っている上、値段も比較的安いため、このラサーリ・ココンブルは、家庭でサラダ代わりによく食べられています。
マダガスカルのパパイア、とりわけマジュンガ州のものは甘味が強くそれでいてみずみずしく絶品ですが、ラサーリ・マパーザとして未熟な実をこのような形で生食もします。パパイアにはあまりはっきりした登熟の季節が無いため、串焼き肉(mosokita, tsakitsaky, brochette)の付け合わせとして無くてはならないラサーリ・マンガ・マンタ(lasary manga manta)、すなわち未熟なマンゴーの実を同じように線状に剥いたラサーリを入手できない3月から7月くらいの間に、よく作られます。串焼き肉の付け合わせとしては、酸味があり歯ごたえがしゃきしゃきしたラサーリ・マンガ・マンタがベストですが、御飯やおかずと共にサラダ代わりに食べるのでしたら、このラサーリ・マパーザも悪くありません。辛いものが好きな人は、生トウガラシを潰して入れても良いでしょう。
マダガスカルで良く食べられているラサーリとしては、この他にも上に挙げたラサーリ・マンガ・マンタがあります。未熟なマンゴーの実を線状剥き器で剥いて、それに軽く塩をふり、トマトを入れたり、あるいは生トウガラシを入れたりします。未熟なマンゴーの果肉は白っぽくて固く、またかなり強烈な酸味があります。そこが、串焼き肉の付け合わせとしては大変に良く合うわけですが、日本で未熟なマンゴーの実を入手することは不可能に近いでしょう。マダガスカルの西海岸地方には至るところにマンゴーの樹が生えており、熟れた実同様、未熟な実も塩をなすりつけて食べれば、農村の子供たちのかっこうのおやつとなります。
あるいはちょっと変わったラサーリとしては、熟れたタマリンドの実(kily, madiro)の果肉を取り出し、それにトマトを潰して混ぜ合わせたものがあります。タマリンドの実は熟れても酸味があり、その酸味とトマトの甘味が絶妙にこれまたよく合い、少し塩を加えてかき混ぜ、御飯にかけると食が進みます。マダガスカルでは、タマリンドの実も甘くて美味しいトマトも簡単に入手できますので、ぜひ一度現地でお試しください。
マダガスカルの香の物あるいはお新香とも言うべき手軽な家庭の味、ラサーリに再度挑戦してみてください!
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