線路は続くよタンザニア編
タンザニア鉄道の旅 その6
夕暮れのタボラ
永遠に続くかと思われた暑い午後もようやくその終わりを迎えようとしていた。西の空から橙色に染まり始める。
「あと2つ駅を過ぎたらタボラよ。」
ウルスラを着替えさせ自分も身支度しながらベロニカが言う。
「今度タンザニアに来るときは是非タボラの我家にも来てちょうだい。」
荷物をまとめ終えて彼女は言った。
午後7時、夕闇の中タボラ着。大きな駅舎があり、出迎えの人や客引きのタクシー運転手、荷物運びの人などでごった返している。駅へ降り、カハニと別れる。
「ウケレウェ島へ行ってみて。また会おう。」
そう言いながら握手すると彼は人混みの中に去って行った。ベロニカは列車の窓から荷物を降ろすのに忙しくしている。迎えに来ていた彼女の夫とあいさつする。娘と再会し、しっかり手を握っている。荷物を降ろし終えたベロニカがやってきた。
「泥棒にはくれぐれも注意してね。ムワンザに着いたら電話ちょうだい。じゃあ、またね。」
彼らを見送ると急に心細い気持ちになった。
列車はキゴマ行きとムワンザ行きに切り離されて別々のディーゼル車に接続され、午後9時半、闇の中へと出発した。ガランとしたコンパートメントの窓から見る景色は、暗い大地のシルエットとまさに無数の星々だった。オリオン座が頭上近くに見える。目が慣れてくると、霧のように細かい星がオリオン座の中を埋め尽くしていることに気がついた。日本では見たことのない星空だった。
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