線路は続くよタンザニア編

タンザニア鉄道の旅 その7 最終回




ビクトリア湖!


 3日目の朝、前日と同じように7時頃目が覚める。朝の空気は冷たい。窓の外には相変わらず、緑の平原となだらかな丘陵、畑や小さな集落、マンゴーの木やサイザル麻という景色が続いている。

 朝食のバナナを食べていると列車は山を登り始めた。遠く眼下に広がる平原。その景色も大きな岩山で遮られるようになる。奇岩が重なり合う山間の中をゆっくり進んでいく。岩山にへばりつくように建てられた家がみえる。今にも倒れてきそうな大きな岩が家の後ろにそびえている。やがて下り坂になり、しばらくすると人里らしきところに出てきた。

 岩石の地質のせいか地面も空気も砂っぽい。家々が続くようになり、人が大勢行き来しているのが見えてくる。明らかに町の中に入ってきたのだと思った途端、家と木々の間から青黒い色で横たわる水面が見えた。

ビクトリア湖だ!

思わずカメラを取り出してシャッターを切る。が、すぐにカメラを置いた。対岸がすぐそこに見え、イメージしていた広大なビクトリア湖とは違いすぎる。インド洋の抜けるような美しい青とも違い、沈んだ暗い色をしている。19世紀の探検家気どりでビクトリア湖を目指してきたのにガッカリではないか。まぁ、たった3日の鉄道の旅で探検家のような感動を期待するのも厚かましい話か。

 気を取り直して地図を見てみると、ビクトリア湖は南端のところが60kmほど南に入り込み、細長い入り江になっているのがわかった。列車はその入り江に沿って北上していたのだった。

新たな期待を取り戻したとき、列車は終着駅ムワンザに到着した。午前8時45分。本物のビクトリア湖にお目にかかるために、私は重い荷物を背負って列車を降りた。茫洋としたビクトリア湖には、その後ウケレウェ島へ向かう船の上で対面することができた。




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