34Field+ 2011 01 no.5Field+2012 07 no. 8フィールドプラス[発行]東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1 電話042-330-5600 FAX 042-330-5610定価500円(本体476円+税)[発売]東京外国語大学出版会電話042-330-5559 FAX 042-330-5199しらいし そういちろう日本学術振興会ナイロビ研究連絡センターAA研共同研究員いく金属製のガソリンタンク(20ℓ)。アフリカでは入手しづらい丈夫なトレッキング靴を置いている人も多い。漁民や魚類の調査をしている人の荷物には釣り竿や網も入っているが、これは調査のためか現地での生活のためか。 つぎに、調査道具。地図、未使用のノートブック、カセットテープなど録音媒体、計量用ばねばかりなど。地図はいろいろな場面で使えるので持っておいて損はしない。録音媒体は文化・社会人類学の聞き取り調査、言語学の調査などで使用。近年はICレコーダーを使用する人がかなり増えている。ノートブックはどんな調査でも携行ツールの基本中の基本。 分野外の人にはちょっと見ただけではわからないものもある。新聞紙二つ折りサイズの、竹を編んでつくられたフォルダ(書類挟み)のようなもの。これは新聞紙とともに採集した植物を挟み込み、植物標本をつくる野や册さつだ。また、サンドウィッチ大の三角柱形の金属製の箱。その蓋を開けてみれば、やはり三角形に折り畳まれたパラフィン紙が重ねて入れてある。これは昆虫採集のさいの三角紙と三角ケースで、採集した蝶などを壊さないように紙に包む。全長70cmほどの不思議な形の機械は、人類・類人猿をふくむ古生物の化石を発掘する際に活用する削岩機だ。歯科用のパテのケースがぎっしりと詰められている箱もあるが、これを利用して発掘した化石の「鋳型」をつくり、その鋳型をもとに模型をつくる。 このような種々の調査道具を擁した事務所だが、今年同じナイロビ市内で移転予定。新事務所もまた調査基地として、成果発信・アウトリーチ、日本・アフリカ間の共同研究促進の拠点としてその機能を発揮し続けることだろう。(移転先情報は下記でご確認ください)http://jspsnairobi.org/の事務所はさまざまな分野の研究者の調査基地として機能してきた。倉庫に格納された荷物の持ち主たちは、それぞれ名をなした錚々たる面々だ。日本はアジアにありながら、フィールドワークにもとづいた各分野のアフリカ研究を発達させてきたとてもユニークな国なのだ。 いったいどんな道具があるのだろう。まずは生活用具だ。たとえば僻地で滞在するためのテント、寝袋。マラリア感染予防のための蚊帳。意外と多いのが枕だ。これはテント生活で硬い地面の上に頭を置いて寝なければならない場合の、あるいは未舗装道での車輛運転時の背中クッションとしての必需品だ。さらに、ガソリン補給スタンドのないフィールドにむかうさい、燃料を詰めてフィールドワーカーの鞄白石壮一郎 星霜をものがたる薄暗い倉庫に、フィールドワーカーのデポ(deposit、置き荷物)が、サンドゥク(70×40×25cmほどの大きさ、行李のように使う)と呼ばれるブリキ製の箱や木箱に詰められて整然と格納されている。その数じつに300点余り。みな、東部を中心としたアフリカ地域を調査する研究者の調査道具箱だ。 東アフリカ随一の都市ナイロビに日本学術振興会の在外事務所がある(通称ナイロビ学振、JSPS Nairobi Research Station)。現在、世界10カ所にある同会の海外研究連絡センターのうちナイロビは最古のもので、1965年に開設された。国立ナイロビ大学横の現事務所に落ち着いたのは1975年、以来現在まで37年間、こタイヤ交換のさいなどに車体を持ち上げるためのハイリフトジャッキ。三角ケースと三角紙。35年間居着いたこの現事務所も、まもなくお別れ。サンドゥク。削岩機。倉庫の入り口。生活用具、調査道具が整然と棚に格納されている。
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