FIELD PLUS No.8
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32 32Field+ 2012 07 no.8荒川慎太郎(あらかわ しんたろう)1971年生/AA研/西夏語、西夏文字、疑似漢字主要著作:武宇林・荒川慎太郎主編『日本蔵西夏文文献』上下冊(北京、中華書局、2011年)●ひとこと:使用者の絶えた、西夏語・西夏文字を研究しています。タイムマシンのない現在、ロシアの東洋文献研究所などで、「西夏文字の原文」を調査するのが、一番「フィールド」に近づける瞬間です。井坂理穂(いさか りほ)1969年生/東京大学大学院/インド近現代史主要著作:“Gujarati Elites and the Construction of a Regional Identity in the Late Nineteenth Century”(In Beyond Representation: Colonial and Postcolonial Constructions of Indian Identity, ed. Crispin Bates, New Delhi: Oxford University Press, 151-176, 2006)●ひとこと:昨年から現代インドの出版業界に関する個人研究と、「食文化とアイデンティティ」をテーマにした共同研究を進めています。乾 睦子(いぬい むつこ)1967年生/国士舘大学/変成岩岩石学主要著作:“Two types of garnet in Sanbagawa pelitic schists along Asemigawa River, central Shikoku”(Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 105(5), 274-279, 2010)●ひとこと:変成岩の形成履歴の研究をしています。岩石が石材としてどのように使われてきたかにも興味があります。苅谷康太(かりや こうた)1979年生/AA研/西アフリカ地域研究主要著作:『イスラームの宗教的・知的連関網――アラビア語著作から読み解く西アフリカ』(東京大学出版会、2012年)●ひとこと:本年4月にAA研助教となりました。これまでの研究内容を深めつつ、新たな環境で新たな研究課題にも取り組んでいこうと考えています。黒木英充(くろき ひでみつ)1961年生/AA研/東アラブ近現代史主要著作:The Inuence of Human Mobility in Muslim Societies(編著, London: Kegan Paul, 2003)●ひとこと:人間移動のことを扱っているうちに、ベイルート拠点設立の仕事やレバノン・シリア移民の調査などで自分自身の移動が激化してしまいました。今年こそ腰をすえて仕事しなければ、と毎年誓いを立てながら……。いずれ世界各地のレバノン料理の比較研究もまとめてみたいものです。呉 英喆(ご えいてつ、モンゴル名OYONCHI)1971年生/内蒙古大学蒙古学学院、AA研外国人研究員/契丹語、契丹文字主要著作:『契丹語静詞語法範疇研究』(呼フフホト和浩特、内蒙古大学出版社、2007年)。●ひとこと:契丹文字の碑文と会話し、契丹文化の足跡を探し、モンゴル大草原の征服者であった契丹人の秘められた歴史の解明を試みています。サンジェジャンツォ1969年生/北京ヒマラヤ映像文化有限公司/映画プロデューサー、詩人主要著作:『人の世の物語』(西寧、青海民族出版社、21世紀チベット族作家シリーズ、2009年)白石壮一郎(しらいし そういちろう)1970年生/日本学術振興会ナイロビ研究連絡センター、京都大学アフリカ地域研究資料センター、AA研共同研究員/人類学、アフリカ地域研究主要著作:『文化の権利、幸福への権利――人類学から考える』(関西学院大学出版会、2011年)●ひとこと:1990年代末より、東アフリカ、ウガンダ共和国エルゴン山域のサビニ人社会が20世紀後半期、トウモロコシなど商品作物栽培の普及にともなって経験した農村社会変化について調査しています。現在暮らしているナイロビは、適度に涼しくとても過ごしやすいところです。武内康則(たけうち やすのり)1983年生/日本学術振興会特別研究員(大谷大学)、AA研共同研究員/言語学、アルタイ諸語古文献主要著作:”Kitan Transcriptions of Chinese Velar Initials”(Acta Orientalia, 64(1), 13-23, 2011) ●ひとこと:契丹語資料を中心とした文献の研究を行っています。文献研究においてもフィールドで資料を調査することの重要性を強く感じています。今後は他の言語の文献研究にも取り組みたいと考えています。 武田和哉(たけだ かずや)1965年生/大谷大学/歴史学、考古学、人文情報学主要著作:『草原の王朝・契丹国(遼朝)の遺跡と文物』(主編著、勉誠出版、2006年)●ひとこと:現代でも世界各地で民族紛争が多発していますが、かつて言語・習俗が異なる遊牧民と定住民がひとつの国をつくり、それが二百年以上存続したことは驚くべきことです。この国の「仕組み」に関心を持っています。永山ゆかり(ながやま ゆかり)1969年生/北海道大学、AA研共同研究員/言語学主要著作:Ocherk grammatiki aliutorskogo iazyka (露文、邦題「アリュートル語文法概説」)(文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「環太平洋の『消滅に瀕した言語』にかんする緊急調査研究」成果報告書A2-038、2003年)●ひとこと:これまでに収集したテキスト資料の刊行をめざして整理に着手したところですが、辞書のない言語ですから話者の協力がなければ翻訳ができず、なかなか作業が進みません。私が収集したのと同じ話を生で聞いたことがある人たちが元気なうちに出版したいです。中村美知夫(なかむら みちお)1971年生/京都大学野生動物研究センター、AA研共同研究員/人類学主要著作:『チンパンジー――ことばのない彼らが語ること』(中公新書、2009年)●ひとこと:タンザニアで野生チンパンジーの長期調査をしています。「人間と動物」という単純な二項対立を乗り越えて、人間も含む動物の社会を理解していくことが目的です。古松崇志(ふるまつ たかし)1972年生/岡山大学、AA研共同研究員/ユーラシア東方史主要著作:「契丹・宋間の澶淵体制における国境」(『史林』第90巻第1号、28-61頁、2007年)●ひとこと:文献屋でありつつ、歴史が生起した現場で考える「フィールド歴史学」を実践したいと考えています。しばらくご無沙汰しているモンゴルの草原と青空がそろそろ恋しくなってきたところです。ペマツェテン1969年生/北京ヒマラヤ映像文化有限公司/映画監督、小説家主要著作:『誘惑』(西寧、青海民族出版社、21世紀チベット族作家シリーズ、2009年)松川 節(まつかわ たかし)1960年生/大谷大学、AA研共同研究員/モンゴル史主要著作:「モンゴル国における契丹文字資料と研究状況(1)」(荒川慎太郎・高井康典行・渡辺健哉編『遼金西夏研究の現在(1)』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、101-112頁、2008年)●ひとこと:コツコツと地道に写本や文献を読み進め、「そうだったのか!」とヒザを叩いた瞬間。そして、草原で出会った未知の碑文の内容が文献記述を塗り替えた瞬間。これがあるから研究はやめらません。松原康介(まつばら こうすけ)1973年生/筑波大学、AA研共同研究員/都市計画学、都市保全主要著作:『モロッコの歴史都市――フェスの保全と近代化』(学芸出版社、2008年)●ひとこと:2009年度にAA研の研究機関研究員(MEIS)を務めさせて頂いたご縁で、ベースマップに関わらせて頂きました。最近は独立直前期のアルジェ市政下で行われた共生型の都市計画について日本人都市計画家の業績を踏まえて調べています。 PROFILE●巻頭特集「契丹文字解読の最前線」補遺・巻頭特集ヘッダの文字の正体は?漢数字 一 二 三 四 五契丹大字契丹小字・記事を読んで興味をもたれた方に、おすすめの図書を紹介します。『図説 アジア文字入門』東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編、河出書房新社、2005年。『世界の文字を楽しむ小事典』町田和彦編、大修館書店、2011年。『草原の王朝・契丹国(遼朝)の遺跡と文物』武田和哉編、勉誠出版、2006年。『図説 モンゴル歴史紀行』松川節編、河出書房新社、1998年。

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