FIELD PLUS No.8
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18Field+ 2012 07 no.8野外って 外を歩いて何をするんですか? ……野外調査に行ったことがない学生を調査に誘うといつも聞かれます。地質学といえば野外(フィールド)調査。文字通り「野」に出て岩石の調査をするのは基本なのですが、ピンとくる人はあまりいないようです。日本で「野外」の「自然豊か」な場所ではたいてい植物が生い茂っているので、岩石を意識する機会はめったにないからかもしれません。でも、例えば海沿いにはこんな素晴らしいフィールドもあります(写真1)。観察してスケッチしてみましょう。 え? 何を描くんですか? ていうか灰色の岩ばっかりじゃないですか! ……だから来たのです。岩石を見て描けるものがどれだけたくさんあるかを、今からご紹介しようと思います。まずもって「灰色」なだけではありませんね。縞々があります。それくらいは気づいたよ、という人、じゃあその縞々はどこも同じですか。いろんな幅の縞がありませんか。一部斜めになっていませんか。途切れていませんか……。よく見てみましょう、岩石にはいろいろな組織が見られます(岩石に見られる縞模様や形を一般に「構造」や「組織」と呼びます)。経験は見た目に表れる 写真2のような堆積岩の場合、一番目立つ縞々は堆積組織です。堆積岩というのは海や湖の水底に細かい砂や泥の粒子が沈んで積もり、長時間の間に水が抜け固結して岩石になったものです。堆積する粒子の粗さは環境によって決まりますが、時の移り変わりによって多少は揺らぎがあります。例えば、少し沖の静かな海底では普段はとても細かい粒子(泥)だけしか積もりません。でも台風などで大きく海が荒れると、海は何日間か濁りますね。多量の粒子が水中に巻き上げられるからです。通常よりはずっと沖まで粗い粒子が運ばれるでしょう。そうすると、いつもとは少し色の違う砂の層が一枚できることになります。どんな堆積物がどのような順に、どのような時地球の歴史を描き出す乾 睦子 いぬい むつこ / 国士舘大学岩石が経験してきたプロセスを、ひとつずつ明らかにすることによって、地球の営みを解明しようとする分野が「岩石学」です。描く3写真1 室戸ジオパーク。写真2 室戸ジオパーク内の大露頭。主に海溝にたまった堆積物から成る「四万十帯」に含まれる。写真3 斜交層理(城ヶ島)。写真の上端と下端に見える面が水平面とすると、中央付近には斜めの筋が入っていることが分かる。写真4 生物が残した痕跡は生痕化石と呼ばれる(城ヶ島)。写真上部のブツブツも、写真右側に縦孔のように見える部分も、どちらも生痕化石と思われる。写真5 白い火山灰層の上端が炎のような模様になっている(城ヶ島)。固結していない火山灰層の上に、急激に新たな堆積物が乗ったためと解釈できる。撮った写真を見た時に、露頭前で何を考えていたかが思い出せるように簡単なメモを取る。長瀞町(埼玉県秩父郡)城ヶ島(神奈川県三浦市三崎町)室戸市(高知県)

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