自然分類では通常、「タロ」と呼ばれるものは次の4つの属(Genus)に自然分類される。
Colocasia
これらすべてが属する Araceae 科には、この他にコンニャクなどを含む Amorphophallus 属がある。これらそれぞれの見かけの特徴については図参照。
--> 図を参照する
属の見分け方
1. まず、葉がどのように葉柄についているかを見る。 Colocasia の場合には、葉の真ん中に葉柄がついている(図1参照)。他の属の場合には、多少内側に寄り気味のこともあるものの、原則として葉の端から葉柄がのびている。
2. 次に、葉に二つ以上の切れ込みがあるかどうかを見る。Amorphophallus の場合には、多くのきれ込みがある(図2参照)が、その他の場合には一個所しかない。
3. 残った3つのうち、葉の縁にそって線が入っていたら Xanthosoma (図3参照)。
4. 線が入っていないもので、二つに対称になって分かれた葉の先の部分がとがっていたら Cyrtosperma、とがっていなければ Alocasia (図4参照)。
--> 一覧表
今回の調査では、25種類の Colocasia タロが記録された。それらのタロはときに、「古い種類のタロ」、「新しい種類のタロ」などと呼ばれたり、「長い種類のタロ」「わきから芽がでてくるタイプのタロ」などと呼ばれていくつかのグループに分けられる。二つのグループは互いに完全に独立したものであり、樹状の図のように、二つを組み合わせられる種類のものではない。
起源による分類
-->図参照
この分類は、知識として学習するものである。
suli-maxawa 「(文字どおりには)古いタロ」
どのタロが suli-maxawa で、どのタロが suli-vou かという知識は、畑仕事をしながら村の年寄りに聞いて覚えるものだそうである。具体的にどの種が suli-maxawa でどの種が suli-vou かについては、検索のページ参照。
根茎の形による分類
これは、根茎の形・新しい根茎の育ち方により、
suli-balavu 「長いタロ」
の二種に分類するものである。suli-balavu は親芋が長く成長しわきにコイモを産する。これに対し、baasoga ではヤツガシラのように親いもの上部が成長して次第に分化し新しい根茎となる。
Alocasia
Xanthosoma
Cyrtosperma
(吉野熙道(p.c.)、Massal and Barrau 1956:11による。)
各属のワイレブにおける名称と標準フィジー語名などについては一覧表の通り。
suli-zina は文字どおりには「本当のタロ」という意味で、特徴の異なるいろいろな種を含む。(sulizina の画像資料参照。)現地の人によれば、これは「昔から」この地にあるタロだということである。このグループに含まれるタロには多くの種類があるが、個別の名称はない。
sulizina 以外のタロは次の二種にわかれる。
suli-vou 「(文字どおりには)新しいタロ」
(なお、ここでの分類法の分析にあたっては吉田集而氏にヒントをいただいた。)
suli-baasoga 「わきから出るタイプのタロ」
ただし、この分類は実際の根茎そのものの形態よりも、植え付けまたは収穫の方法の違いによるなど、形態による分類法の描写は二次的なものである可能性があると考えている。たとえば、滞在中に次のようなことが観察された。
vulalima vulavula という種は suli-balavu (長いタロ)に分類されている。ところが、食用にするため畑から運ばれたものを見て親芋の上部が分化して成長するタイプであることに気付き指摘したところ(写真)、balavu であると分類した本人もその事実に気づいてびっくりしていた。彼は毎日畑で作業をし、タロを見て暮らしている。ここで考えられることは、現地の人が言葉で分類の基準を描写するときに、それが必ずしも実際の分類の基準と一致しているわけではないのではないか、ということである。
たとえば、baasoga を収穫するときには、画像資料に示したようにまわりに出てくる新芽を残す形で引き抜くが、そういった実際にに扱う上での違いが、意識の上では「形態の違い」という目に見える特徴に反映された形で理解されているのではないか、という可能性が考えられる。この部分に関しては、ざんねんながら調査者が日常的に畑における仕事を観察できる状況ではないため、推測にとどめるしかない。