日本で作ろう！マダガスカル料理　第３回 ル・マザーヴァ（ro mazava）の巻　その一 初出：『マダガスカル研究懇談会ニュースレター　Serasera』第７号　pp.15-16　２００２年 １．用意するもの（４人から６人分） ワタリガニ　３匹から４匹 牛肉赤身ブロック　１ｋｇ 玉葱　１個 トマト　３〜４個 小松菜　２束 クレッソン　１束 塩　小さじ　一杯半 水 深めの鍋 ２.料理方法 牛肉を、マッチ箱くらいの大きさに切り分けます。 玉葱を、スライスします。トマトの種子を取り、四つくらいに切り分けます。小松菜とクレッソンは、根の部分を取り去り、後は食べやすいくらいの長さにざくざくと切ります。 鍋に水をはり、先に切り分けた肉、トマト、玉葱を入れ、さらに塩を加え、蓋をして強火で煮込みます。ル・マザーヴァは汁物ですから、水は鍋に七分目か八分目、沸騰しても煮こぼれない程度にたっぷり入れます。沸騰してきますと肉からあくが出ますので、それをおたまなどで根気よくすくい取ります。 肉の質によって時間が変わってきますが、沸騰してから大体３０分から１時間くらい経ちますと、肉が柔らかくなってきます。肉が柔らかくなったところで、小松菜とクレッソンを加えます。葉野菜を加え、一煮立ちしたところで、火を止めます。 ３.ここがポイント！ 肉は、国産牛よりも脂肪が少なく値段も安い、アメリカ産やオーストラリア産の牛肉のブロックを用います。またそのほうが、マダガスカルで食べるル・マザーヴァの味に近いものを作ることができます。 ル・マザーヴァは、これまでに紹介した煮込みを主体としたマダガスカル料理と異なり、汁物のため、煮炊きの火加減は強火です。鍋の中で、肉の固まりが踊りを踊るくらいの火加減でちょうど良いくらいです。 葉野菜を加え一煮たちしたところで、さっと火を止めることが大事です。あまり葉野菜を煮込みますと、葉野菜の風味が損なわれてしまいます。 最後に葉野菜を加えると水が出ますので、塩加減は少し強めにする必要があります。肉だけを煮ている時にちょうど良い塩加減ですと、できあがった時には塩が足りないように感じられます。 クレッソンが手に入らない時は、小松菜だけでもかまいません。ただし、味の異なる複数の葉野菜を使うほうが、できあがったル・マザーヴァの味が深くなります。 　ル・マザーヴァの、ル（ro）とは「汁」、マザーヴァ（mazava）とは「澄んだ」を意味します。余談ですが、マダガスカル語で「乳」を指すルヌヌ（ronono）も、このルに由来し、「胸の汁」の意です。それに対しル・マザーヴァとは「澄まし汁」くらいの意味で、旅行ガイド書などで間違って紹介されているように特定の料理内容を指すわけではありません。日本の味噌汁やお澄ましがそうであるように、ル・マザーヴァの中に入れる具やその組み合わせは地方や家庭や季節によりいろいろなものがあります。今回紹介したル・マザーヴァはその中でも一番＜スタンダード＞なものの一つですが、ル・マザーヴァの中のほんの一例に過ぎません。日本でル・マザーヴァを作ろうとすると入手することのできる材料に制限があるため、そう多くの種類を作ることができるわけではありませんが、この後もいろいろなル・マザーヴァを紹介してゆきたいと思います。都会に住むマダガスカルの方の家に食事に招待された時は、来客用の肉の煮込み料理を出されることが多く、ふだんの食事に多く出されるル・マザーヴァと出会うことは少ないかもしれません。しかし、田舎の民家で食事をとったりあるいは都会でもマダガスカルの方の家に宿泊した経験を持つ方は、必ずこのル・マザーヴァと出会っていることでしょう。一説では、もともとマダガスカル語にはこの水で煮込む料理方法があまりにも日常的でありふれているため、とりたててこの種類の料理を指す単語が無く、そのためマダガスカルに住んだフランス人がル・マザーヴァと言う名前をつけたとも言います。「こんな単純なものは料理の内に入らない」、「マダガスカル料理はこんな程度のものか」と言い放つマダガスカル滞在経験を持つ日本人の方が少なくありませんが、日本人にとってのお茶漬けや味噌汁と同じく、料理法はシンプルしかし具の組み合わせはいろいろあるからこそ、ル・マザーヴァはマダガスカル人にとって自分の故郷や家庭を想いおこさせふと無性に食べたくなるソウルフードなのかもしれません。また実際に食してみれば、ヨーロッパのスープとも中国や韓国の湯とも違うさっぱりした汁の味は、きっと同じ米食民族である日本人の好みにあうことでしょう。この機会に、マダガスカルの人たちのソウルフードに挑戦してください！

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