日本で作ろう!マダガスカル料理 第11回
ル・マザーヴァ(Ro Mazava)の巻 その二
−ヴァリ・ラーヴァ シ アナナ
(vary lava sy anana)−
『Serasera』第15号 pp.9-10 掲載
1.用意するもの(4人から6人分)
  1. 食べられる煮干し 一袋
  2. 小松菜      一束
  3. クレッソン    一束
  4. 完熟トマト    1個 または ミニトマト 5個から6個
  5. 玉葱       1個ないし半分
  6. 塩    小さじ 一杯
  7. 固形ブイヨン   1個
2.料理方法
  1. 玉葱の皮を剥き、ざっくりと切りわけます。みじん切りよりは、よほど大きめに切ってかまいません。へたの部分を取ったトマト1個を4つくらいに切ってから、種子の部分を手で揉み潰すようにして除きます。マダガスカル料理の場合、トマトの薄皮を湯剥きする必要はありません。ミニトマトの場合は、そのまま一個を手で押しつぶして中の種子を取り出せば、後は切る必要ありません。
  2. 小松菜とクレッソンを水洗いして根を除き、5cmくらいの長さにざくざくと切ってゆきます。
  3. 鍋に水を入れて加熱します。鍋はどのようなものでもかまいません。肉を煮込むわけではありませんので、薄手の鍋でも問題ありません。水の量は、鍋の半分から三分の二くらいが、適当です。塩、固形ブイヨン、切った玉葱と種子ぬきしたトマト、それに煮干しを入れます。
  4. 蓋をして、強火で加熱してください。吹きこぼれる恐れがありますので、沸騰するまではそばに居て、時々中の状態を確認してください。
  5. 沸騰したら、火を中火に落とします。この頃からアクが浮いてきますので、おたまなどでこまめに掬い、取り除いてください。アク取りが終わったら、味見をして塩加減を決めてください。葉野菜を入れると味が薄くなりますので、少し濃いめに味付けしておきます。
  6. 10分か20分くらい煮ると、玉葱もトマトもしんなりしてきますので、そこで、切っておいた小松菜とクレッソンを入れます。
  7. 再び強火にします。ひと煮立ちしたら、それでできあがり、火を止めます。葉野菜を入れてから長時間煮込みますと、葉野菜本来の味が飛んでしまいます。
3.ここがポイント!
  1. 煮干しはどれでも良いようなものですが、早く煮え食感が良いと言う点で、「食べる煮干し」とか「食べられる煮干し」などの表示のあるものを使ってください。
  2. アク取りは、丁寧ににおこなってください。アク取りを丁寧に行うと、味がすっきりとしあがります。
  3. 入れる葉野菜は、小松菜とクレッソンでなくても全く問題ありません。第7号の「ル・マザーヴァの巻 その一」で書きました通り、ル・マザーヴァに入れる葉野菜は、味の違う系統のものを複数入れるほうが、味が深くなります。日本にある葉野菜でいろいろと組合せを試してみてください。ちなみに、小松菜はマダガスカルではアナン・ツンガ(anantsonga)またはアナン・ベ(anambe)、クレッソンはアナン・ドゥラヌ(anandrano)と呼ばれ、現地でも馴染みの深い葉野菜です。
 ル・マザーヴァの、ル(ro)とは「汁」、マザーヴァ(mazava)とは「澄んだ」を指し、それゆえル・マザーヴァとは「澄まし汁」くらいの意味であると、第7号の「ル・マザーヴァの巻 その一」で書きました。その点から言うと、今回ご紹介したヴァリ・ラーヴァ シ アナナは、少し具が多いものの、まさに「澄まし汁」そのものです。アナナは、葉野菜や野菜を指します。ヴァリ・ラーヴァとは、単語の逐語的な意味は「長いお米」ですが、小魚の乾物を指します。ヴァリ・ラーヴァと呼ばれる小魚には複数の種類が見られるようですが、最もよく見かける体色が少し黄色いものは大きな籾米のようにも見えるため、このような呼び方が生まれたのでしょう。ヴァリ・ラーヴァは、安いこと、乾物であることなどから、都会や町だけではなく、農村部においても広く流通しています。手近にある葉野菜とこのヴァリ・ラーヴァをさっと煮込んでル・マザーヴァにする、そのためこのル・マザーヴァは、多くのマダガスカルの人たちによって賞味されている実にざっかけない日常のおかずです。ですから、マダガスカルの人と日常生活を共にしていないと、このル・マザーヴァと出会うことはなかなかできないかもしれません。ル・マザーヴァと言うと肉と葉野菜のスープを頭に浮かべる日本の方が多いかと思いますが、魚好きの日本人にはこのヴァリ・ラーヴァ シ アナナの方が、舌に合うはずです。ちなみにマダガスカルでヴァリ・ラーヴァを買ってこのル・マザーヴァを作る時は、ヴァリ・ラーヴァの頭から腹の辺りに砂が含まれているため、一匹ずつ頭の部分をむしり取り、その後数回ざっと水洗いしてください。市場などで売られているヴァリ・ラーヴァの品質の善し悪しは、実際にその場で一匹食べてみることが一番確実な判定方法です。また、ヴァリ・ラーヴァは、そのまま油で炒め、少し塩をふれば(醤油が手に入ればベスト)ご飯のおかずにもまた手軽な酒の肴にもなります。この機会に、最も多くのマダガスカルの人たちが食べているル・マザーヴァの味に挑戦してみてください!
 番外編:トマトと玉葱を入れる代わりに細かく切った薄油揚げを入れ、菜っぱは小松菜だけにして、固形ブイヨンではなく、塩、醤油、酒と砂糖で味付けをすれば、マダガスカル料理ではなく手軽な和食の一品に早変わり。お試しあれ!
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