1983年12月22日よりマハザンガの町から道のりで537km離れた州北部の一農村にて、社会人類学のフィールド・ワークを開始する。住み込んだ農村は、病院や市場・商店またタクシー・ブルースの発着所のある県庁所在地の町からは7kmの距離にあり、徒歩で乾季であれば1時間20分、雨季であれば1時間30分以上を必要とする。村では、マダガスカル人の家族のもとに下宿していたため、村人と全く同じ食事を摂っていた。マラリア予防策としては、ベッドに蚊帳を吊り、一週間に一回クロロキン製剤であるニヴァキンを規定量の3錠正確に服用していた。
  住み込んで87日めの1984年3月17日(土):12時20分昼食 海魚の干物のココナッツミルク煮 全て平らげる ウリを食後に食べる 美味しい その後、何とも言えない頭痛がする 3時すぎぞくぞくと寒気がする 4時に検温38・4度 関節も痛む 5時から6時にかけて40度かそれ以上に体温が上昇したように感じられ、不安感とも孤独感ともつかない感情がつのる 7時20分夕食 牛肉とアナマファーナ(インド・クレッソン)のスープ 肉の臭いを嗅ぐと吐き気がするためおかずには手をつけず ご飯だけ皿に四割ほど食べる 身体が火照り息苦しい ベッドに横になっていても暴れだしたいような気分 9時頃から汗が出て体温が下がり気分が楽になる 0時10分眠る
  3月18日(日):6時12分体温37・8度 頭痛が少し楽になる 朝食 夕食の残りもの 脂っこさが嫌で残す 12時20分昼食 ルージ(豆の一種)と牛肉の煮込み 食欲はないものの、全て食べる ツアモーツ(柑橘類の一種で比較的酸味が強い)を二個食べる かすかに甘く美味しい 4時体温37・1度 7時20分夕食 ルージの煮込み ご飯とおかずを半分ほど食べる 夕食後、予防のために毎週服用しているニヴァキン3錠を飲む バナナ一本を食べる 11時20分眠る
  3月19日(月):6時体温38・2度 夜から熱の上がったことがわかる 下痢7時朝食 ルージ の煮込みと茹でたマニオクとムカーリ(米粉を水に溶き型に入れて焼いたもの) マニオクとムカーリとご飯半分を食べる おかずは食べず 熱はあるものの気分はそれほど悪くはない 1時昼食 生の川魚を搗いたマニオクの葉と煮込んだおかずとトウモロコシを一度茹でてから天日干しにしまた煮たもの 一口も食べず 吐き気はないが食欲はわかない ラヌンアンパング(鍋のおこげ飯に水をさして沸かしたもの)だけ飲む 4時から5時半頃までひどく身体が熱くまた息苦しい 意識が朦朧とし目を閉じた視界が白くなる この時日本語かマダガスカル語で絶えず何事かをうわごとのごとくにしゃべり続ける 6時30分夕食 生の川魚の唐揚げと搗いたマニオクの葉と川魚を煮たおかず 油くさいものの臭いに耐えられず、ご飯とおかずに全く手をつけない ラヌンアンパングを飲む 少し吐き気がする 7時25分眠る 夜間に4〜5回小便をし、その度に水を飲む ひどく喉が乾く 寝汗がでてから気分が多少楽になる
  3月20日(火):6時体温38・1度 吐き気は消えるが、軽い頭痛が残る 7時朝食 お粥とバナナ二本 お粥に砂糖をかけ八割ほどとバナナ一本を食べるが、これでも胃には重たすぎる 9時30分体温37・2度 1時40分昼食 カボチャの葉とルージとアナマファーナの煮込み ご飯とおかずを二割ほど食べる 7時夕食 カボチャの煮込みと昼食の残り物 ご飯を一皿食べたもののおかずは半分ほどしか食べられない 10時10分眠る
  3月21日(水):6時体温36・9度 気分はいいものの、食欲がない 6時40分朝食 お粥 二割ほど食べる 12時体温37・5度 少し頭痛がする 12時40分昼食 ルージの煮込み 4時20分体温38・2度 喉が乾き身体が火照る 風邪と思いバッファリン2錠とクロロマイセチン2錠を服用する 7時40分夕食 川魚とマニオクの葉を搗いたものの煮込み おかずを二割にご飯を三割しか食べられず 8時頃から40度代の熱 9時30分頃から汗が大量にでる 心臓の鼓動が激しく速い 小便をして水を飲むことを2〜3回繰り返す クロロマイセチン2錠を服用 0時30分床に就く
  3月22日(木):殆ど寝付けず 喉がひどく乾き小便と飲水を繰り返す 心臓の鼓動が高まる 明け方に汗をかき少し気分がよくなる 6時10分体温38・6度 脈拍100/分 クロロマイセチン服用 食欲なし 7時朝食 生の川魚とマニオクの葉を搗いたものの煮込みとムフラーヴィナ(バナナと米粉を搗きバナナの葉に包んで茹でたもの) ムフラーヴィナをひとつだけ食べる 10時30分体温37・5度 汗が出て気持ちがよくなる 脈拍98 クロロマイセチン服用 村に居ては十分な休養も栄養もとれないと考え、外国人登録証の書き換えにあわせアンタナナリヴに行く途中マハザンガの大洋漁業(現在のマルハ)の船員宿舎に泊めてもらう心づもりで、翌日村を一旦離れることを決意する 1時20分昼食アナマファーナとサツマイモの葉とアンギービと小エビのスープ ご飯には全く手をつけずにおかずだけ半分食べる 脈拍100を超す 急にビフテキのようなものが食べたくなる 2時30分検温37・2度 5時体温37度 ツアモーツを3個食べる 果物を無性に食べたかったが、口内の味覚がなくなりあまり美味しいとは感じない 7時検温36・7度 脈拍86 7時15分夕食 アナマファーナと海魚の干物のスープ 急に食欲ができて全て平らげる バナナ一本を食べる 8時40分眠る
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