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まとめ

ここまで述べてきた2つのサイトを通じて、幾つかの WWWにおける知識の共有の在り 方がみえてくる。

一つは、リンク集作りの過程を通じたものであり、 メインとなるサイトを中心に相 互に情報を共有しあうことによって、 より多くの人にそのメリットを提供できると いう形である。15 これは、 インターネットが本来持つ双方向性 がもっとも端的に現れ たものと言うことができよう。

いま一つは、後藤氏が提唱する 「ゆるやかな分散型総合学術情報システム」という 言葉に集約されるような、WWWを利用する 個々人が、ハイパーリンクというWWWの特 性を利用することによって様々な形で情報を収集し、再加工し、 そして、新しい独 自の視点を提供していくことである。

筆者のリンク集や全文検索エンジンは、それぞれその分野として は 時期がはやかったために、網羅的であること自体が独自の視点になり得たわ けだが、それですら、既に他分野において、あるいは、 アメリカにおいて先行していたものから着想を得たという部分が少なからずあり、 さらにその後、筆者の運営する網羅的なWebサイトをはじめとする様々なWeb サイトに影響を受け、あるいは、それらを利用して、様々な視点から 独自のリンク集が作成されるように なっている16。日増しに増加しつつある人文 科学分野のWWW上のリソースは、様々な形で活用され、より多様な意味を 付与されるようになってきているのである。 17

また、これらを支えるものとして、インターネット関連の各種の技術 が、極めて手の届きやすいところにあるという事実も看過してはならない。 これは、先にも多少触れたが、二つの点から成り立っている。すなわち、 フリーであることと、ドキュメントが充実しているという点である。 フリーであるが故に、予算的に恵まれていない場合でも、極めて容易に手をだす といったことが可能である 18。 WWWがここまで隆盛を誇るようになったのも、ひとえに技術が フリーであり、開発者も利用者も一様に、容易に技術にアクセスできたからにほ かならない。 そして、もう一点は、ドキュメントが充実しているということである。 これには、開発者が作成し添付したものだけでなく、活字出版されたものや、 様々な人が作成し、WWWなどを通じて配布されている雑多なFAQの類 など様々である。そうしたものの存在により、 多少の時間さえかければ、たとえコンピュータの専門家でなくとも その技術を情報共有のために生かすことができるのである19

WWWの情報共有にあたっては、今後は、リンク切れを解消するための の技術や枠組み等が重要になってくる 20。また、情報検索にあたっては、 自動要約作成の技術、それから、文脈検索とシソーラス検索を組み合わせたような技術が 使いやすい形で提供されるようになれば、さらに使いやすいものに なるだろう。こうした技術が開発され、公開されていくにあたっても、 可能な限りフリーで、かつ、わかりやすいドキュメントと共に 公開されていってくれたなら、それは、情報共有の裾野を一層広げていく ことにつながっていくのである。

現状を顧みるなら、人文科学分野においては、人的・予算的・著作権上の問題 など、様々な障害のために、本来WWWで共有されても おかしくないよ うな多くのリソースが、まだほとんど WWW上にでてきていない。 既に印刷物で出ているパンフレット等をWWWにものせているだ け、となってしまっていることもまだまだ多い。

しかし、WWW的な21知識の共有による様々な可能性を提示し続けていくことは、 これまですで にそうであったように、そして、今後はより一層、WWW上での情報の蓄積/発信を 促進していくに違いない。WWWという新しい営みは、そのようにして、いつの日か我々の前に、これまで想像もつかなかったようなさらなる多様な意味世界を開示 していくことになるだろう。

(この研究の一部は日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業「電子社会シス テム研究推進委員会」情報倫理の構築プロジェクトの一部として遂行された ものである。)



Kiyonori Nagasaki 平成13年1月10日