<フローレスの民話> 次のお話

ヤシの木火を教えた男

 

むかしむかし、ココ・フマンという男性がいました。彼は東フロレスのある村で暮らしていました。その村の人たちはまだ生の食べ物と生水を口にしていましたが、ココ・フマンだけが火を通した食べ物を口にしていました。火を通してある食べ物は非常に美味しかったのですが、他の人には黙っていました。

あるとき、村の人たちは新しく畑を開くことになりました。そのために雑草を抜いたり、木を倒したりしました。その雑草と木は畑の端において、畑がきれいに見えるようにしておきました。そういう作業を毎日繰返していって、新しい畑をつくっていきました。

しかしココ・フマンだけは違っていました。抜いたばかりの雑草や木々を、畑に散らかしておいたのです。それを見た村の人たちはココ・フマンに尋ねました。

「おい、ココ・フマン。どうして雑草や木を散らかしたままにしておくんだ? どうして畑の端っこに置かないんだ?」

しかし彼は黙ったままでした。来る日も来る日も彼は雑草を抜き、木を倒しました。畑はどんどん広くなり、太陽の光で雑草と木は徐々に乾燥していきました。乾いた雑草と木は畑に散らかったままにしておいたので、村の人たちは彼に対して怒るようになりました。

「おい、ココ・フマン。お前の畑はすごく汚いぞ。どこにものを植えるところがあるっていうんだ?」「彼を手伝うな、ココ・フマンを放っておけ」ココ・フマンは黙っているだけのようでした。心の中で彼は、「そのうち分かるよ」とつぶやいていました。

新しい畑を開く季節がもう終わりを迎えていました。彼の畑には雑草と木が散らかったままでしたが、村の人たちは雑草や木の葉を片付け、木の枝を畑の端によけていました。ココ・フマンは倒した木が乾いたのを見ると、こっそりと他の乾いた木を探しに森へ行きました。火をおこす道具とこすり合わせるためです。

やがて、乾いた木にも火がつき、切った木を燃やすために畑を囲んで燃え広がりました。そのとき、火はあっという間にココ・フマンの畑で上へ上へと立ち上って行きました。それを見ていた村の人はとても驚きました。彼らは叫びました。「ココ・フマンの畑がすごい目にあっている! ココ・フマンの畑はもう救いようがないぞ!」

彼らは村でココ・フマンを探しましたが、奥さんしかいませんでした。彼らは奥さんに尋ねました。「ココ・フマンはどこにいるんだ? 畑で起きている事を知っているのか? お前の畑はもうおしまいなんだ」

すると、ココ・フマンが畑から戻ってきました。村の人たちは尋ねました。「お前の畑で一体何が起っているんだ?」

「あれは火と言うんだ」とココ・フマンは答えました。

「火? それは何だ?」  ココ・フマンは答えました。「俺たちは火があると調理ができる。火で俺たちは調理済の食べ物と飲み物を手にできるんだ。調理済の食べ物は生の食べ物よりもずっと美味しいんだ」

村の人たちはまた尋ねました。「火はどうしたら手に入れられるんだ?」

「俺の畑に一緒に行こう」とココ・フマンは誘いました。

老いた者、小さい子ども、男も女もみんなココ・フマンの畑へ行きました。畑に着くとすぐに彼は火のついた木の切れ端を手に取り、みんなに火を分けてあげました。

小さい子どもたちも火を手に入れようと一生懸命でした。しかし不注意のあまり、先に火のついた木の切れ端を取らないで、燃えさしを取ってしまいました。燃えさしを触ったので子どもたちは足や手、口に傷を受けました。それが、人びとが初めて知った火傷なのである。

ココ・フマンが火のついた木を分けてから、人びとは火の使い方を知るようになったと今日まで伝えられている。

 


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