Archive20133 :: ILCAA Ishikawa Project 2010

2013年度第3回研究会(通算第11回目)

日時:平成26年3月29日(土曜日)13:30-19:00
会場:AA研小会議室(302)

本研究会においては、藤岡悠一郎氏が「ナミビア北部における気象災害時の食料確保とセーフティネットの変容」と題して報告し、その後成果出版に関する討議を行った。

報告要旨
本発表では、ナミビア北中部に暮らす農牧民オヴァンボが、旱魃や大雨洪水などの気象災害時にどのように食料を確保しているのかについて、彼らをとりまく食料確保のセーフティネットに注目し、20世紀前半からの変容過程と近年の大雨洪水災害後の対応行動について報告した。ナミビア北部は年平均降水量が400-500mm程度の半乾燥地域に位置し、雨量の経年変動が激しい地域である。発表では、最初にオヴァンボの人々が災害時に何を頼りに主食のトウジンビエを確保したのかという点に関する聞き取り調査の結果を紹介し、王国を母体とした伝統的組織や教会などによる食料支援のシステムが存在したこと、贈与や共食などが行われていたことを明らかにした。そして、伝統的組織によるシステムが1950年代~70年代頃になくなり、独立以降は国家による食料支援へと移行したことを紹介した。発表の後半では、2008/09年の雨季に発生した大雨洪水災害の際、ある村でどのような対処行動がみられたかを紹介した。この年の大雨洪水イベントにより、平均で畑地面積の21%程度が水没していたが、世帯によって水没地域が0%-73%と大きな幅があることが明らかになった。そして、畑地面積の世帯差なども影響し、同じ村のなかで食料が不足する世帯と十分な量が確保できる世帯が発生したことを指摘した。そうしたなかで、食料が不足した世帯においては、購入や他世帯からの贈与、物々交換、国家からの食料援助などの方法で食料を入手していたが、現地語でオシャシャとよばれる物々交換が彼らにとって最も重要な食料確保手段になっていることが明らかになった。国家による食料支援制度は量的には十分ではなく、食料が不足する世帯は何らかの自助努力が必要となるが、そうした際に、現金による購入だけに依存するのではなく、物々交換という手段が併存している点が本地域の特徴とみられた。