■共同研究プロジェクト詳細
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平成13年度(2001年度)共同研究プロジェクト一覧
 
『言語文化接触に関する研究 』
(中嶋幹起)(所員5名、共同研究員28名)

 東アジアに共生する幾多の民族の言語は,多様性に富み,その長い歴史と相まって,多くの言語資料が集積されている。さらに,近年は,中国やロシアなどの開放政策により,文献資料や学術成果もつぎつぎに公にされつつある。  本プロジェクトは,朝鮮語,満州語,モンゴル語,エベンキ語,漢語,ウイグル語,チベット語,苗語,西夏語,白語などの言語研究者が現地調査での成果を報告し,それぞれの研究について,言語学のみならず,文化人類学,歴史学などの分野を含めた多角的かつ広域的視点から討論をおこないつつ,言語のダイナミックスを探ろうとするものである。  本年度は,目下構築中の西夏語に加えて契丹文字に関するデータベースを中心に研究を進める予定である。

伊藤英人
大塚秀明
慶谷壽信
高田時雄
西 義郎
細谷良夫
鵜殿倫次
菅野裕臣
坂本恭章
津曲敏郎
花登正宏
前川捷三
大江孝男
岸田文隆
佐々木猛
丁  鋒
樋口康一
村上嘉英
太田 斎
喜多田久仁彦
佐藤 進
富平美波
藤本幸夫
大瀧幸子
北浦 甫
佐藤晴彦
中川千枝子
星実千代



『旅と表象の比較研究』
(高知尾 仁)(所員5名、共同研究員11名)
プロジェクトのホームページ

 本プロジェクトは,他者との出会いを提示し,他者の言表と他者世界が表象するものを解釈し,他者文化の持つ多様な意味を構成する旅のディスクールを主要な対象とする。その際,他者言説を生むコンテクストや,他者の自己(自己文化)との距離・差異の構築や,他者表象が持つ価値評価などが問題となると思われる。他者が直接的に語られるという前提への疑問と,他者表象のバイアスと他者についてのディスクールそれ自体が充分に見つめられなかったことへの反省として,近年欧米で飛躍的に研究が進められている旅行記研究に対応して,ここでは,近代ヨーロッパ(ルネサンス以降)の旅のテクストとそのほかの文化の旅のテクストを取り上げるとともに,他者についての多種多様な表象形態や,それに関連した諸理念(例えば,秩序,正義,正統,コスモス)の表象化についても研究の対象とする。従って,本プロジェクトでは,旅論・表象論・他者論とそれらの交差する領域が取り扱われることとなる。このような比較研究によって,エクリチュールを有する文化による,他者と他者のいる場所と時間の配置・配列が明らかにされ,またその文化と他者との関係性(例えば,理想,調和,幻想,混乱,絶望,排除)を提示するディスクールが明らかにされるものと期待される。またさらには,他者に対比された自己(自己文化)のアイデンティティの提示の実体や,文化の普遍性や近代というディスクールについても考察されることが期待される。

浅井雅志
重松伸司
荒木正純
田中純男
彌永信美
難波美和子
金森 修
西尾哲夫
齋藤 晃
原 毅彦
渡辺公三



言語文化データベースの研究とcai開発
(峰岸 真琴)(所員5名、共同研究員11名)
プロジェクトのホームページ

本プロジェクトの目的は,アジア・アフリカの言語文化を中心とした情報をデータベース化するための研究と,それを利用して言語文化教育のためのcai教材を開発することにある。
 アジア・アフリカの言語の大部分は,「特殊な」言語と見なされ,極めて限られた学習の機会しかないのが現状である。また,その話されている地理的,文化的な環境を理解するには,言葉による説明よりも,写真や映像にしたものを見たほうが理解が早いものもたくさんある。そのためには画像,映像資料を収集,蓄積し,それを構造化して,いつでも利用可能なデータベースにしておかなければならない。また,それらを有機的に結合して,教育用のcaiソフトを開発するには,一定のノウハウ の蓄積が必要である。
 本プロジェクトでは,アジア・アフリカ地域の言語と,その文化的環境を対象にして,
  1. cai開発の資料となる言語・文化情報資料のデータベース化の理論的研究
  2. 実際のcaiのプラットフォームとなるハードウェア構成の検討
  3. 現実に稼働しているcai設備の見学,研究
  4. caiシステムの製作とその発表,評価
  5. 効果的なプレゼンテーション,ユーザーインターフェースの研究
をおこない,実用的な言語文化に関する自動化研修システムの製作と運用をめざす。

上田美紀
武井直紀
山元啓史
上村隆一
陳 文シ
小川英文
寺 朱美
加納千恵子
深尾百合子
小森早江子
益子幸江



『シャン文化圏に関する総合的研究』
新谷忠彦(所員4名、共同研究員9名)

本プロジェクトは,以下の目的をもって共同研究をおこない,必要に応じて研究会を開き,その成果を資料集・論文集として出版する。

  1. ひとつの複合文化交流圏(シャン文化圏)の解明のための方法論の検討
  2. シャン文化圏に関する情報収集と現地調査のための準備
  3. 現地調査の報告と成果の検討
  4. シャン系言語の学習と習得
  5. 文献資料および非文献資料の解読・整理
  6. 基本的文献資料の解読出版

 今年度は特に,海外調査の成果に基づく研究発表,及び,シャン語の歴史的文献の解読研究の二点に重点を置いて研究を進める。


飯島明子
加藤高志
石井米雄
鈴木玲子
宇佐美洋
横山廣子
加藤昌彦
園江 満
加藤久美子



『西南中国非漢族の歴史に関する総合的研究』
クリスチャン・ダニエルス(所員4名、共同研究員16名)

 現在の西南中国は,もともと非漢族の居住地域であり,中国歴代王朝の支配下に少しずつ組み込まれていく歴史をもつ地域である。元明清を通じて,漢民族移民の増大と歴代王朝の統治政策によって,多くの非漢族が中央政府に直接支配されるようになり,そのことによって民族移動が激しくなり,非漢族の土着社会に大きな変容がおこり,東南アジア大陸部へ移住する非漢族も出現した。だが,従来この歴史過程を総合的に分析する研究は僅少であった。
 本プロジェクトの目的は,(1)西南中国非漢族の歴史に関する研究発表,(2)史(資)料の発掘・収集・整理をおこなうことによって,従来注目されることのなかったこの地域の歴史に対する研究を促進することにある。なお,方法論として非漢族を主体とした分析視点を重視すると同時に,歴史学者以外に文化人類学,民族学,民俗学,言語学などの専門家の参加によって学際的なアプローチの構築をめざす。
 なお,本研究所の「歴史・民族叢書」では,『雲南少数民族伝統生産工具図録』及び『四川の考古と民俗』を刊行している。

井上 徹
末成道男
塚田誠之
渡部 武
上田 信
武内房司
寺田浩明
上西泰之
多田狷介
林 謙一郎
菊池秀明
谷口房男
吉野 晃
岸本美緒
張 士 陽
渡辺佳成



『東アジアの社会変容と国際環境』
中見立夫(所員5名、共同研究員29名)

 近年における国際情勢の変化と学術交流の発展によって、われわれ歴史学研究者は東アジア各地域の文書館・図書館などに所蔵される一次資料に対し,以前とは比べられないほど容易に接近できるようになった。さらに,現地学界でも,あらたな歴史評価・研究動向がおこり,われわれの研究への刺激となっている。ただ対象とすべき史料の量があまりに膨大で,その実態を体系的に把握してはいない。
 また,個別の研究が深化するとともに,より大きな視野のもとに,問題をとらえなおし,分析枠組みを再検討することも必要である。さらに海外学界との共同研究,史料調査も,双方にとって,より具体的で実りの多い形で推進しなければならない。
 本プロジェクトでは,このような研究状況を念頭におきながら,18世紀から20世紀初頭の東アジア世界各地域における社会の変容が,外部世界とどのように有機的に連関していたかという問題を中心にすえ,文書史料によりそれがどこまであきらかにできるか検討する。東アジアに関する史料と研究情報の開かれたフォーラムをめざしている。
 毎回テーマをかえながら,海外からのゲスト・スピーカーもまじえ,シンポジウム形式で研究会を開催し,また『東アジア史資料叢刊』などの出版物も刊行している。

赤嶺 守
井村哲郎
小野和子
佐々木揚
浜下武志
毛里和子
石井 明
江夏由樹
笠原十九司
坪井善明
原 暉之
森川哲雄
石濱裕美子
岡 洋樹
加藤直人
中村 義
藤井昇三
森山茂徳
伊藤秀一
尾形洋一
岸本美緒
西村成雄
細谷良夫
柳澤 明
井上 治
岡本隆司
楠木賢道
萩原 守
松重充浩



『A F L A N G 』
松下周二(所員3 ,共同研究員21)
プロジェクトのホームページ


多様で複雑なアフリカの言語を,アフリカの視点から観察し,研究するプロジェクトで ある。混沌の底には,おそらく何かの法則が見いだされるに違いないとの,証明され得な い仮説を追い求めてゆく。
音韻・文法研究を中心にするが,言語の社会的役割,言語遊戯,音楽の機能など,マー ジナルな分野も,研究の対象に入っている。


市之瀬敦
江口一久
大野仁美
小森淳子
桜井 隆
ジョン・フィリップス
砂野幸稔
竹村景子
柘植洋一
中川 裕
中島 久
中野暁雄
稗田 乃
日野舜也
堀内里香
福井慶則
宮本正興
宮本律子
湯川恭敏
米田信子
ラトクリフ・ロバート
 



『多言語共存環境における文字コードと照合(collation)系についての研究』
豊島正之(所員7名、共同研究員3名)


 アジアの複数の言語・表記系の混在する環境で,多言語共存電子メール・wwwページ等を正しく表示し,多言語対照テキストデータベース,対訳辞書などを編纂・検索するためには,文字コードを曖昧さなく運用し,それに基づく文字列操作(string manipulation)・文字列照合(collation)をおこなうことは,必須の要素である。にも拘わらず,現状の国際文字コード(符号化文字集合)とそれに基づく計算機システムでは,これらアジアの諸言語の文字列操作・照合に対する配慮が十分でなく,提案されている諸システムも,安定的な運用をおこなうには不十分で,現に,現行のunicode・iso/iec10646-1に基づく安
定運用がおこなわれているシステムは見出し難い。
本プロジェクトでは,こうした現状を打開し,新たに,将来にわたっての安定運用が可能な国際的な提案をおこなうために,下記の4点について,現状の問題の明確化と,それに対する対案を提案するための基礎的研究をおこなう。

  1. 情報交換での識別(identification)の概念の洗練と,それに基づく符号化文字集合における文字・字体・字形の洗練
  2. アジアの複数の言語・表記系(例:タイ,カンボジア,ウルドゥー,ドラビダ,ペ ルシャ,デーバナーガリー,漢字)が共存する環境で,曖昧さなく運用可能な文字 コード(符号化文字集合)の策定,およびその運用方法の策定
  3. 文字列データに対する基本的な操作(manipulation)の定義。即ち,文字列に対する 基本的な操作である文字検索,「一文字」の削除・追加などについての,実装方法 を考慮した定義
  4. 複数の言語・表記系が共存する環境での,文化的に正統な文字列の整列(sorting)・照合(collation)の方法
  5. 文字列出力(presentation forms)

 平成11年度は,本プロジェクトが扱う問題の現状を,参加者それぞれの専門分野について,ネットワーク環境に力点をおいて調査し,それを非専門家にも理解できる形で文書化してネットワーク等で公開する。


池田証寿 太田昌孝 安岡孝一  



『「中華」に関する意識と実践の人類学的研究』
三尾裕子(所員3名、共同研究員16名)

 近代以前の中国周辺地域は,中華文明を長く理想型と見なし,それを積極的に取り込むことにより,自らの文化の正統性を確保してきた。しかし,近代以降は,この地域の諸国家では国境が確定され,国家建設のために西欧近代をモデルとしたイデオロギー(共産主義を含めて)を求心力として国民を各国の中心へ引きつけるという動きが見られた。ところが,近年では,これらの国々は,急速な経済発展を遂げて政治経済的に自信をつけはじめており,いわば「一枚岩の国民」を作り上げるイデオロギーにこだわる必要もなくなり,民主化,対外交流,多様性の容認等といった現象が見られるようになった。他方,中国も対外閉鎖路線から開放政策へと転換を図ることで,経済発展の道を歩みはじめており,地方の主体性を容認して,対外交流を積極的に押し進めるようになってきた。
 このような中国側および周辺諸国側双方の変化は,両地域の経済および文化の側面での 相互交流を促進し,両地域の伝統文化の変容,民俗文化の再創造といったプロセスが進行 しつつある。さらに,このことは,中国国内の周辺部とそれに歴史文化的につながりのあ る周辺諸地域との間の新たなネットワーク形成,経済・文化圏形成にも繋がってきており, かつての周辺地域を新たな中心とする,中心周縁関係が生み出されつつある。
以上のことから,本プロジェクトでは,昨今の経済発展の中での各地域における民俗文化の再編成・再創造のプロセスを明らかにし,従来の国家の枠組みを解体・再構成するような社会・文化の創造の可能性に関して新しい視点を提起していくことを目的としている。

伊藤亜人
佐々木衛
西澤治彦
ニエ莉莉
植野弘子
清水純
沼崎一郎
小熊 誠
秦兆雄
秀村研二
笠原政治
末成道男
堀江俊一
韓 敏
瀬川昌久
渡辺欣雄



『インド洋海域世界に関する基礎的研究』
深澤秀夫(所員6名、共同研究員11名)


 16世紀以降の近代世界システム成立以前に既に存在した,多様な人々が共有する活動空間のなかで最も広範囲なもののひとつが「インド洋海域世界」である。紀元前数世紀に姿をあらわし,8世紀から16世紀にかけインド亜大陸をはさんで,アラビアから東アフリカ地域と東南アジア地域とを交易と人の移動によってしっかりと結びつけていたのがインド洋海域世界であり,この海域世界の存在とダイナミズムが,その当時とその後のインド洋に位置する陸世界の歴史や国家,また社会や文化のあり方に多大な影響を及ぼしたことが近年次第に認識されている。
 さらに,欧米による近代世界システムによってインド洋海域世界が包摂され,主権国家や領域国家によって陸上はおろか海上まで分断された後も,インド洋海域における人と物の行き来や流通が停止したわけではなく,むしろ欧米のおこなった奴隷交易・契約労働移民・植民地化の諸施策は,新たな人の移動を生み出し,インド洋海域のネットワークを拡大させ,人と物との混交をより一層深めたと見なすことができる。
 このように「インド洋海域世界」は,さまざまな言語と文化をもった人々が行き交うなかでつくりだした社会と歴史であり,言わば多元性と多層性がその特徴である。それにもかかわらず,フランスやオーストラリアではインド洋を総合的また多角的に考究する研究者や機関があらわれはじめているものの,日本では学会はおろかそのための研究者間の意見や情報の交換また討議の機会や場さえ設けられていないのが現状である。
 本プロジェクトでは,最初の3年間を基礎的研究と位置付け,オセアニア・東南アジア・中国・インド・アラビア・東アフリカ・インド洋島嶼の各社会の専門家が集い,まずは「インド洋海域世界」という視点のもとにこの多元性と多層性にアプローチする可能性について論じあってゆきたいと考えている。  具体的な討議項目としては,次のようなものが挙げられよう。

  1. インド洋海域世界研究の現状と各地域における文書資料の存在の様態とその可能性
  2. インド洋海域世界の歴史設定と歴史区分
  3. インド洋海域における年代毎の人と物の移動の具体的把握
  4. 商業民と海洋民それぞれの活動・移動の特性と両者の相互関係
  5. インド洋海域にかかわる航海技術の歴史的変遷
  6. 非文字資料に基づくインド洋海域世界の歴史解明の可能性
  7. 現代インド洋海域の個別社会の研究を通じ,多元性と多層性がどのようなかたちで共存しているかの考察

 3年間の基礎的研究を終了した後は,文部省科学研究費等を申請し,インド洋海域のなかでもとりわけ研究の遅れているモルディヴ,ニコバル,アンダマン,モーリシャスなどの諸社会を中心に,フィールドワークに基づく資料収集をおこなうことを計画している。


秋道智彌
高桑史子
飯田 卓
田中耕司

川床睦夫
富永智津子

崎山理
花渕馨也
杉本星子
松浦章
森山 工



『独立インドの政治とカースト−州レベルでの研究を中心に−』
内藤雅雄(所員2名、共同研究員13名)


 インドは間もなく独立後半世紀を迎える。その間インド政治の重要な問題のひとつが連邦(中央政府)・州関係であったが,憲法の連邦制規定にもかかわらず,実際は中央集権的体制の下に州政治は多大な制約を受けてきた。しかし,近年,かつて一党独裁と形容された国民会議派の組織力は脆弱化し,連立政権体制が不可避の現実となっている。今や連邦制のあり方,州政治の意味・役割に関する新たな検討が重要な研究課題である。
本プロジェクトは,こうしたインドの州政治状況の変化と実態をカースト諸関係をひとつの手がかりとして考察する。州政治を動かす要因はさまざまであるが,重要な鍵がカーストである点は今日なお否定できない。「政治のカースト化」「カーストの政治化」という現象はますます顕著である。一方,従来のインド州政治研究が扱った各州のカースト状況にも大きな変化がおこっている。特に1980年代以降の「下層階級(カースト)=obc」をめぐる「留保問題」,指定カーストに基盤をおくバフジャン・サマージ党の台頭等々,多くの新しい現象が見られる。
 主要な作業は,各州のカースト間の諸関係を明らかにし,特定のカーストの政治的結集や複数カースト間の政治的提携,あるいは離反・対立をもたらす諸要因を検討することである。さまざまなレベルの選挙でのカースト票の流れだけでなく,インド特有の社会区分といわれるカーストと政治のつなぎ目を州別に具体的に探る。選挙や政治活動によって出来上がったカースト関係(「政治化したカースト」)が,社会生活上のカースト関係にどうフィード・バックしていくかという観点も必要であろう。本プロジェクトの中心テーマは政治であるが,より深い考察を目指し,政治・歴史・経済及び文化人類学の分野の研究者を含む研究体制で進める。


粟屋利江
佐藤 宏
長谷安朗
井坂理穂
篠田 隆
山田桂子
井上恭子
杉山圭以子
脇村孝平
押川文子
関根康正
近藤則夫
田辺明生



『東南アジアにとって20世紀とは何か』
根本 敬(所員6名、共同研究員16名)


20世紀の東南アジア史を概観するという時系列的な問題意識ではなく,東南アジアの歴史に「20世紀という時代」がもたらした思想状況上の変容を問題にし,それに基づいて東南アジア史の側から見た「20世紀」の総括を試みるものとする。
その際,以下に掲げる三つの小テーマを設定し,議論を深めることにする。

  1. 経済思想
  2. 国民国家形成をめぐる諸問題
  3. 「前近代」の再解釈
東南アジアの歴史を扱うため,プロジェクト参加者は前近代史研究を含む歴史研究者を中心とするが,そのほかにも東南アジアをフィールドとし,かつ現地の言語と文化に通じている政治学者,経済学者,人類学者および文学研究者にも参加を要請する。

石井和子
小泉順子
鈴木恒之
村嶋英治
内山史子
齋藤照子
土佐桂子
奥平龍二
嶋尾稔
中野 聡
川島緑
杉山晶子
弘末雅士
菊池陽子
末廣昭
古田元夫



『transitivity and actancy systems in syntactic typology』
(主査:菊澤律子/所員4,共同研究員18)
プロジェクトのホームページ


本プロジェクトは,世界のさまざまな言語について言語類型論的・記述言語学的研究をすすめている研究者が集まり,自説を発表し,他の言語を専門とする研究者とディスカッションを進め,自らの研究に還元していく,といった機会を提供することを目的とする。 1999年度は昨年度に引き続き,言語の統語類型論的研究におけるさまざまなトピックのなかから,特に「他動性」と「能格性」の問題に焦点をあて,関連するさまざまな研究発表を通して,多様な理論的アプローチや諸言語における直接・間接の諸問題について検討してゆく。参加者全員が同じ方向に収束していくことを目標とするよりは,検討の過程でそれぞれ自分のものとは異なる視点・分析のしかたに接し,それぞれのアプローチの利点と限界について考察する機会を持つことに重点を置く。
研究会およびメーリングリストへは一般の参加者も歓迎し,また,随時,分野・トピックにこだわらない特別研究会の企画をおこなうなど,言語学関係者間でのネットワークとしての役目も果たしてゆきたいと考えている。


赤嶺淳
北野浩章
月田尚美
大堀壽夫
桐生和幸
角田太作
風間伸次郎
崎山 理
中村渉
加藤昌彦
佐々木冠
藤井義久
高橋慶治
吉本 啓
渡辺 己
カンパナ・マーク・ロバート
柴谷方良
堀江 薫



『アジア・アフリカ諸語の電子辞書の構築』
(主査:町田和彦/所員15,共同研究員12)


 本研究所では,1978年にメインフレーム・コンピュータを導入して以来,アジア・アフリカの言語文化に関する多言語多文字のテキストデータを入力・処理して研究成果をあげてきた。また,その課程で蓄積されまたされつつあるアジア・アフリカ諸語の言語データ(テキスト,辞書など)の情報資源は,各専門分野での今後の研究にとっても価値の高いものが多く含まれる。特に本研究所の設置目的のひとつである「アジア・アフリカ諸語の辞典編纂」事業に沿って刊行された各種辞典の資源は,成果として印刷出版されたもの以上に,国内外の不特定多数の研究者・学習者による利用の可能性を秘めている。
しかし,これらの蓄積されてきた情報資源の内容形式・利用形態は,メインフレーム・コンピュータに依存していることが多く,今日のようなネットワークを前提とする研究環境に必ずしも対応していない。そのため利用者の立場から見ると,以下のような使用上の限界や制限が指摘できる。

  1. マシーンの操作に関する専門的知識が必要である
  2. テキストデータに使用されている文字コードが特殊である
  3. 研究成果は主にプリンタへの出力を前提にしている

本プロジェクトは,メインフレーム・コンピュータに従来蓄積されてきたテキストを中心とする情報資源のこうした限界や制限を克服して,公開化を前提とするより汎用的な利用に備えることを目的としている。
本プロジェクトが計画している主な研究および作業は以下のとおりである。

  1. 移植性の高い多言語多文字コードの研究
  2. データフォーマットの研究
  3. 入力・点検が未完なデータをチェックし対応する
  4. 利用形態の研究
  5. 検索を含む各種ツール類の研究

公開化に関しては,本研究所の情報資源利用研究センターと協力して,利用の条件や形態などを考慮して実施する。その際,著作権の問題には特に留意する。


石川厳
竹内紹人
林 徹

梅田博之
中野暁雄
星実千代
大江孝男
永田雄三

大原良
奈良毅
坂本恭章
林佳世子



『歴史的イラン世界に関する研究』
(主査:家島彦一/所員4,共同研究員13)


この共同研究の目的は,歴史的脈絡でのイラン,すなわち<大イラン(the greater iran)>という枠組みのなかで,<イラン的要素>とは何かについて,言語・歴史・文化・思想などの総合的な視野のなかで問いかけを試みることにある。具体的な研究方法としては,イスラム世界におけるイラン世界の位置付け,イラン世界と他世界(例えばトルコ・クルド・アラブ・インドなど)との相互関連や差異を考察することによって,イラン的要素の全体像を浮き彫りにしていく。その結果として,われわれが漠然と抱いていたイラン・イメージについて,その言語・文化・社会の特質や問題を改めて問い直し,イスラム研究に新たな方向を見出したいと考えている。
 第一年度目と第二年度は,基本的な問題の設定,各々の共同研究員による事例研究を通して,イラン的要素に関する特質や問題を発見していきたい。特に,第二年度における研究課題として,イスラム以前におけるイラン的要素とイスラム以後のイラン的要素の比較シーアとイラン的要素との関わりなどについて考察する。


今澤浩二
坂本勉
山内和也

小名康之
清水和裕
山口昭彦
川瀬豊子
寺島憲治
吉田 豊
北川誠一
縄田鉄男
近藤信彰
間野英二



『独立後アフリカ諸国における国家と宗教』
(主査:小川 了/所員4,共同研究員12)


本プロジェクトにおいては,独立後のアフリカ諸国,特に現代において国家と宗教がどのように協調,相克しているのかを記述,分析し,アフリカ各国の将来を展望することを主眼とする。
 アフリカ諸国において,伝統宗教,イスラム教,キリスト教は人々の糾合にどのような役割を果たしてきたのか,あるいは果たしていないのか。それらの宗教は新生国家において国民統合に役割を果たしたのか,あるいは国家機構の横暴を牽制する役割に終始しているのか。ひとつの国家のなかでイスラム教徒,キリスト教徒など異なった宗教信奉者が対立することで,国民統合に宗教が阻害要因になっていることはないか。国家の内実が問われ,民主化の実現が急務になっている現在,諸宗教にはどのような機能を果たすことが要請されているのだろうか。原理的に言えば,本来,国家のめざすところと,宗教のめざすところとは相矛盾するものである。でありながら,ヨーロッパ諸国,そして日本においても国家と宗教は相互に依存しあうことが歴史的に多かった。アフリカ諸国の国家と宗教の現状を検討し,将来的な動きをも予測する研究をおこないたい。


遠藤貢
小馬徹
吉田憲司

小田亮
嶋田義仁
和崎春日
落合雄彦
竹沢尚一郎
勝俣誠
津田みわ
栗本英世
松田素二



『イスラーム圏における国際関係の歴史的展開−オスマン帝国を中心に−』
(主査:黒木英充/所員5,共同研究員20)


本プロジェクトは,イスラーム圏において国際関係がいかに形成され,認識され,発展してきたかを,総合的に研究することを目的としている。その出発点として,600年以上にわたって中東地域の中核部で発展し,また文書資料による情報を豊富に蓄積してきたオスマン帝国を対象に選び,(1)その対西方すなわち地中海・西欧地域に向けて,(2)対北方すなわちロシアに向けて,そして,(3)対東方の中央アジアとイラン,インド洋地域に向けて,そしてさらに可能であれば,(4)対南方のアフリカ内陸地域に向けての,それぞれの国際関係の実態を,時代的な発展過程に留意しながら多角的に論ずる場をつくりだしたい。ここでいう国際関係とは,国家間の外交関係のみならず,その基層をなした人間たちの交流の具体相もふくむ広義のものである。従って,国際条約とイスラーム法の関係,戦争と安全保障,外交団の構成と活動,通訳,貿易と関税,巡礼といったさまざまな問題が 設定される。これらの課題を,古代西アジア世界もふくめた長期的展望のなかで位置づけ,
同時に現代世界の国際関係,とりわけ中東地域をめぐる国際政治に対しても新しい有効な視座を提供できるように検討してゆく。


稲野強
佐藤幸男
永田雄三
堀川徹

江川ひかり
佐原徹哉
野坂潤子
松井真子
小山田紀子
新谷英治
羽田正
三沢伸生
川口琢司
鈴木董
深澤克巳
宮崎和夫
小松香織
高松洋一
堀井 優
山口昭彦



『アル=アフガーニーとイスラームの「近代」』
(主査:飯塚正人/所員2,共同研究員20)


 イラン生まれのジャマール・アッ=ディーン・アル=アフガーニー(1897年没)は,その生涯にアフガニスタン,インド,エジプト,トルコといったイスラーム圏の各地とヨーロッパ諸国を訪れ,19世紀後半以降のイスラーム世界の歴史に大きな思想的影響を与えた革命家である。彼は伝統的イスラーム思想の改革や専制政治の打破など,ムスリム社会内部における変革の必要を唱える一方,各地でヨーロッパの侵出に対するムスリムの団結(パン=イスラミズム)を説いて回った。エジプトのオラービー運動,イランのタバコ・ボイコット運動など,19世紀末に各地で起きた「民族」運動も,彼の存在を抜きにして語ることはできないし,現在イスラーム世界が直面している思想的課題のほとんどはアル=アフガーニーのもとですでに予感されていたといっても過言ではない。
本プロジェクトは,没後100年を迎えたこの偉大な革命家の思想や足跡,各地における評価などを総合的に分析することによって,最終的にはイスラーム世界における「近代」の意味まで問い直すことをめざす。また,上記目的をより効果的に達成するため,文部省科学研究費創成的基礎研究『現代イスラーム世界の動態的研究』の1-a班「現代イスラームの思想と運動」と緊密に連携しつつ研究を進めていく予定である。


新井政美
加賀谷寛
酒井啓子
中田考
池内恵
粕谷元
佐藤規子
中西久枝
大石高志
栗田禎子
鈴木均
八尾師誠
大塚和夫
小杉泰
高岡豊
松本弘
帯谷知可
小松久男
富田健次
三木亘



『東南アジア島嶼部における人の移動』
(主査:宮崎恒二/所員3,共同研究員6)


人類史的な観点からみると、人は常に移動と接触を繰り返すことによって,集団の離合集散を繰り返してきた。現に存在する「民族」なども,そのような離合集散の産物といえよう。人の移動は,領域と境界を生命線とする近代の国家体制下では,必然的に制限が加えられる。しかし,今日,部分的には資本主義の無境界的浸透とも対応する形で,人の移動は活性化し,国家の枠組みすら脅かしている。
 このプロジェクトでは,現代における人の移動を文化,とりわけ集団意識の生成・変成過程に注目して,研究を進める。
 このプロジェクトでは,広い分野,地域を対象として問題領域の設定を試みた重点共同研究プロジェクト『東南アジアにおける人の移動と文化の創造』(1996-1998)の成果を踏まえ,より詳細に個別具体的な研究を実施する。
主たる対象とされる地域であるマレーシアのサバ州は,インドネシア及びフィリピンとの間で人の移動が激しく,集団の構成,意識,生活世界の構築,といった諸側面で,様々な方向性や動きがみられる。このプロジェクトでは,現地調査と並行して研究会を開催し人の移動を文化的側面から解明する。


石川 登
山下晋司
伊藤 眞 上杉富之 清水 展 富沢寿勇



『活字字体史研究』
(主査:芝野耕司/所員2,共同研究員11)
  1. いわゆる康煕字典体
  2. 慣用字体
  3. 明朝体の基本設計
また,この研究を通じて,新jisコードの代表的字体の決定に学問的根拠を与えるとともに,国語審議会での問題となっている漢字字体問題の学問的根拠にも寄与することをめざす。
研究方法: 康煕字典及び18世紀以降の活字総数見本帖を収集し,一字毎に字体対照データベースを作成し,このデータベースの検討を通じて,上記の研究目的を達成する。
成果物: 研究成果物は,新jis漢字コードの代表字体に活かすとともに,jis x 0208の将来の改正で用いることのできる代表字体の決定の基礎資料とする。個別字体検討資料は,各社での字体設計の基礎資料として用いることができる資料の作成をめざす。また,国語審議会で検討されている表外字の字体検討に対しても,学問的基礎を与えることをめざす。
 最終的な報告は,単行本として刊行することも予定する。

石塚晴通
小宮山博史
府川充男
池田証壽
境田稔信
金子和弘
鈴木広光
小池和夫
直井靖
小駒勝美
比留間直和


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